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フレンドリー段取り

男性と女性。
 
「うそ…でしょ?」
「ほんとなんだ」
 
「このタイミングで?」
「そう」
 
「ほんとのほんとに?」
「ほんとのほんとに」
 
婚約…?
「…そう…そういうこと」
 
私…
 ………
 …の親友と?

「そうなんだ」
 
私たち…
 まだ、付き合ってるよね?

「うん」
 
「どういうこと?
 私たちここでデートの待ち合わせでしょ?

「うん」
 
「じゃあ、何で私は恋人のあなたに、
 私の親友と婚約したことを、
 聞かされてんの?
 おかしくない?」
「おかしいです」
 
「そうよね?!
 まず婚約しましたの前に、
 やるべき段取りってあるでしょ?」
「……
 式場の予約とか?
 
「なんで?!
 それはそっちの話でしょ!
 あなたまず、私に対して、
 やるべきことあるわよね?!

「……あっ!
 ごめん、そうだよね。
 忘れてた…招待状しょうたいじょう
 
「誰がいるか!
 そして、誰が行くか!
 何が悲しくて元彼と親友の幸せ、
 見ないといけないのよ!
 もう今日から親友でもないけどね!」
「じゃあ…何だろう?」
 
「あなた私とさっきまで、
 恋人だったのよ。
 新しい相手と歩みだすと言うなら、
 その前につけなきゃいけない、
 けじめ●●●ってあるでしょ?!」
「けじめ?……
 みじめじゃなくて?」
 
喧嘩けんか売ってんのか!」
「いや、けじめって、
 何だかわからなくて」
 
「はあ?!
 あなた、結婚するんでしょ?
「うん」
 
「もう決まったことなんでしょ?」
「うん」
 
じゃあ、私との関係は?
「……
 あ~体の関係?!
 
「しばくぞ!!
 あんた、私と別れてないよね?
「あ~そっち?」
 
「他に何があんの?」
「いや~こっちかな~って」
 
「こっちってなに!
 うちらの関係終わってないのに、
 何で婚約報告してんの?」
「いや~そういう別れ話って…
 君…耳にするの嫌いだったじゃない…
 
「……まあ…確かに。
 
 私、人の別れ話なんて、
 辛気臭しんきくさくて聞いてられないけど…。
 
 あなたって…私の気持ちだけは、
 よ~く理解してるのよね~…。
 
 …いつから付き合ってたの?」
「僕たち?」
 
「それ聞いてどうすんのよ!
 今日で私たちはちょうど3年目でしょ!
 私の親友とはいつから?

「あ~~
 明日で3年
 
「はあ?!!
 あんた私と付き合って、
 翌日にあの子と付き合ったの?!

「そう…そうなるね」
 
「なるねじゃないわよ!
 どういうこと?!
 説明して!」
「君と付き合ったでしょ。
 そしたら翌日、
 彼女に告白されて、付き合った」
 
何、その時系列。
 
 何でそんなサラッと言えるの?
 普通じゃないでしょ?!
 
 私と付き合った翌日に、
 別の女と付き合うって。
 
 しかもサラッと彼女●●って言ったな。
 おい!」
「はい。
 …いや、悩んだんだよ。
 
 君と付き合って…色々話をして…
 君はとても優しい人で…。
 
 友達をとても大事にしてて、
 この人は慈愛じあいに満ちた人だって。
 
 親友の告白なんか断ったら、
 君は間違いなく怒るだろうなあって

 
「私があなたと付き合ってなければね!

 まあ、間違いなく言ったでしょうね!
 私の親友に何してんだって!

 …あなたは私のことよく理解してるけど…
 導き出す答えが間違ってんのよ…。

 それで…挙式は?
「明日」
 
「はあ?!
 今日、デートで明日あす、挙式?!
 頭おかしいの?!」
「明日が二人の出会った記念日だから」
 
「なめてるな!
 完全に私のこと。
 何でもっと早く言わなかったの?!」
「だって君は、
 とても繊細せんさいな心の持ち主だし、
 傷つく君の姿が目に浮かんで…
 言い出せなかったんだ」
 
「……思いやりもあるのよね~…
 すごく大事にしてくれてる感じは、
 よ~く伝わってくるのよ~。
 
 いいわ。
 別れましょ。
 
 あなたが言えないなら、
 私が言ってあげる。
 
 これでいいんでしょ?」
「…うん」
 
あと私に、
 言ってないことない?

「え~と…
 何かあったかなあ…
 …あっ、ひとつ、お知らせが
 
「なに?」
子供●●三人で、
 君の家のに、
 引っ越すことになったから」
 
全部、事後報告じごほうこく!!
 

このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。 

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