二葉らむ

ストーリーテリング

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最近の記事

人にはなぜミルクが必要か

予約の入ったある哲学書の中を調べたら、隣の頁にくっついて破けて文章が欠けてしまっているところを発見した。 修繕課に行ってどうにかならないか聞いてみると、修繕課の人はすぐに専用の液体と刷毛をとりだしてくっついてしまった部分を液体でふやかし、器用にはがし始めた。 私はその様子を息を止めて見ていた。 私に気づいた修繕課の人が、終わったら持っていきますね、と言った。 amazon primeにはない映画で見たいものがあって久しぶりにTSUTAYAへ行った。店内の照明が以前より暗くな

    • クレール・ドゥニ『美しき仕事』を見て

      映画の話をする前に自分の話になるのだが、私は現在週3日だけ都内の図書館で働いている。わりと大きな図書館でスタッフの人数も多いのだが、長く勤めているベテラン層(40~50代女性)と勤続5年以内の若手層に偏っていて、中間層がほとんどいない。新人が入ってもすぐに辞めてしまう職場なのだ。思う以上に体力が必要であるということや、給料の安さがその理由としてあると思うけれど、もう一つの理由としては、ベテラン層の結束みたいなものが強くて、そこへうまく馴染めるかそうではないかというのがあるよう

      • さらば、バベルの塔

        身体を動かした方がいいなと思って最近ヨガを始めた。 ポーズはたくさんあるんだけど、お気に入りは半魚王のポーズっていうやつ。 先生はまず私に立ち方を教えてくれた。 正しい立ち方があるなんて知らなかったんだけど、 日常でも意識して立つようにしていたらだんだん重心が脚におりてきて、 足の裏がちゃんと地面に着いているような感覚になった。 足の裏が地面に着いたら『ゼロ・グラビティ』を見たくなった。 とにかくサンドラ・ブロック演じるライアン・ストーンがかっこいい。 でもそれを言うとジョ

        • 宇宙とカロリーメイト

          1/23(火) 朝、駅の売店でカロリーメイトを買う。 カロリーメイトはだいたいいつもかばんの中に入っている。 かばんの中にないと何となく不安なのだ。 カロリーメイトはほとんどのスーパーやコンビニに置いてあるけれど 自分以外に買ってる人、食べている人を見かけたことがないな、 なんてレジに並びながらふと思った。 ‟JAXA、超小型衛星を公開 H3ロケットに搭載” 仕事中、新聞を読みながらTさんが話しかけてきた。 「宇宙旅行に行きたいと思います?」 「行きたくないです。」

        人にはなぜミルクが必要か

          OFF & ON

          1/15(月) 本屋で『文學界-カフカ没後100年特集』を買って喫茶店で読んでいた。 1/16(火) 夜、寒くてなかなか寝付けない。 暖房は入れてるはずなのにどうしてこんなに寒いのか。 1時間ほどして、これはおかしいとなって 布団から腕だけだしてサイドテーブルの上をごそごそ探る。 リモコンをつかんで暗闇で目を凝らしてみる。 電源が入ってないじゃないか。 寒いわけだ。 1時間もがまんするんじゃなかった。 明日は5時起きなのに。 早く部屋を暖めるために風量を強めにして眠った

          ジェノベーゼ

          1/8(月) 今日は成人の日。 自分の成人式のときの写真をなんとく見返していた。 この時がいちばん肉がついていた。 当時は自分の容姿に対してコンプレックスだらけだったけど 今になって見ると、若いというだけで十分美しかったのだとわかる。 けれどこの頃はほとんど何も考えずに生きていた。 「罪深い生きもの」 と写真に向かってつぶやいた。 1/9(火) 母と調布でお茶をする。 母がメニューを見ながら店員に話しかける。 このあんみつの豆乳寒天はどこらへんに入っているのかしら? 歳

          ジェノベーゼ

          DO YOU KNOW GODZILLA?

          11/2(木) 歯医者へ。 3年間の歯列矯正がやっと終わった。 後戻りをふせぐための、寝るときにつけるマウスピースの歯形をとってもらう。歯科助手さんがうすい金属片に、ピンク色がかったスライム状のものをのせて、私の口へ押し込む。 それは私の口の中でどんどん広がっていく。 口からはみでそうになるそれを、はみでないように歯科助手さんが急いで私の口へ押し込める。 思ったよりもそれは喉の方までやってきて、少し怖くなる。 「固まるまでこのまま少し時間をおきます。」 と言って、歯科助手さん

          DO YOU KNOW GODZILLA?

          ランチタイム

          10月の日曜日。 私、母、姉、姪の4人で池袋の水族館へ行った。 2時間ほど水族館を歩いて回ってから、お昼を食べに併設のタリーズへ入った。 私と母はラザニア、姉と姪はスパゲッティを注文した。 テーマパークによくあるフードコートみたいな仕様になっていて、学生アルバイトと思われるスタッフが、受け渡しカウンターで次から次へ商品を客へ渡していた。 それぞれトレーを持って、私たちはテラス席に座った。 秋風が吹いて涼しかったけれど、気持ちがよかった。 紙の容器をあけると、思った以上に薄く

          ランチタイム

          振替輸送

          10/14(土) 17時に仕事が終わり、駅前のタリーズに寄った。 18時すぎ、タリーズを出て改札口へ向かった。 駅員の早口でまくし立てるようなアナウンスが遠くからぼんやりと聞こえてくる。 改札の前まで来ると、立ち止まって電光掲示板を見上げている人がちらほらいるのがわかる。 人身事故で帰宅方面の電車が止まっていた。 逆方面は電車が動いていたからそっちへ乗って、聖蹟桜ヶ丘で降りて そこからバスに乗って帰ることにした。 バスターミナルにつくと振替輸送の乗客で、すでに長い列ができて

          ゴダールに出会った頃の話

          生まれて初めてのアルバイトはドトールだった。 私は18才で大学1年生だった。 店長は背の高い口の悪いおばさんで、初めてのバイトで要領の悪かった私はよく怒られていた。 私はバイトに行くのが苦痛だった。 狭いカウンターの内側にいると息苦しかった。 練習で作ったミラノサンドは持ち帰ることができたけど、食べたくなくてゴミ箱へ捨てた。 人々は、作った者のことなんか知らず、コーヒーやミラノサンドを平気な顔で食べていた。 確か、初めてカプチーノをスチーマーで温めた日だった。

          ¥500

          ゴダールに出会った頃の話

          ¥500

          日記【9/17~9/23】

          9/17(日) 夢で、何かの集まりで遊園地へ行って、でかい船の乗り物がブンブン動くやつにチームごとに乗らなくちゃいけなくなって、それがすごく嫌なんだけど、そういう感情を抱えながらも私はどのチームに所属してるのか、というのを色んな人に聞いてまわっているうちに目が覚めて、船に乗らずに済んでほっとした。 9/18(月) 友人と吉祥寺のねこカフェに行った。 カピバラもいたんだけど、カピバラより生後5ヵ月のペルシャ猫に夢中になってしまった。 ねこじゃらしでじゃらすとすぐに飛びついてき

          日記【9/17~9/23】

          日記【9/10~9/16】

          9/10(日) 朝から生理が来そうなかんじ。 体のエネルギーが下へ下へ、と流れていくので頭がぼうっとするし 血を出そうとして子宮が収縮するのでおなかが痛む。 ほぼきっかり28日周期で生理がやってくることの体の不思議を思う。 生理がなければ色々と作業ははかどるだろうと思うけど、 ピルでコントロールしたりすることは私はしないだろうと思う。 眠らない街にわたしを明け渡さない。 家に帰ったら姉と姪が来ていた。 ふたりでひっついて、昔の写真を広げて見ている。 私の赤ん坊のときの貫禄が

          日記【9/10~9/16】

          ファミリー・レストラン

          ようやく9月に入って、私は髪を切りに行く。 夏のあいだに髪はすっかり伸びてしまった。通っている美容院の予約がなかなか取れず、伸びきった髪のまま8月を過ごした。 私の髪には癖がある。父の髪質が見事に遺伝したのだ。 小学校を卒業するまで、私の髪は直毛だった。 直毛だった私はよく父の癖毛をネタにして笑った。 そこには何の悪意もなかった。 私の髪は直毛のはずだった。 けれど中学校へ入ると、私の髪にも父と似た癖が出はじめた。 放っておいてもそれなりに形になる癖ならまだよかったのだが、

          ファミリー・レストラン

          満月の周辺

          8/27(日) 今日は老人ホームにいる祖母に会いに行った。 母とふたりでホームのエレベーターに乗って5階で降りる。エレベーター横のベンチに祖母がちょこんと腰かけて待っていた。 私たちに気づくと、お客さんって言うから誰かと思った!と言って、面白いギャグを見た時みたいに笑っていた。 前会ったときよりもだいぶ元気そうだ。お化粧もちゃんとしている。 冬ぐらいまで元気がなくてごはんもほとんど食べず寝てばかりだったのだが、春に行った家族旅行をきっかけに突然元気を取り戻したらしい。 部屋

          満月の周辺

          オラクル・デイ

          休日にプラネタリウムへ行った。 プラネタリウムのドームには様々な天体が映し出され、それぞれの天体の特徴を説明するナレーションが流れていた。 その天体ショーを見ていたとき、私は左眼に違和感を感じた。 それはゴロゴロとした痛みに変わり、涙がぽろぽろこぼれ、私は左眼をあけていることができなくなってしまった。 プラネタリウムから出ると私はそのまま近くの眼科へ向かった。 先生に診てもらうと、瞼の裏に何個か結石ができている、ということだった。その結石が、眼を閉じる度に角膜に当たって痛みを

          オラクル・デイ

          日記【7/26~7/30】

          7/26(水) 仕事へ行く前に皮膚科へ行った。 10年くらい前から首のうしろにやけどのような炎症がある。糖分をとりすぎるとひどくなるから、たぶん首からうんこが出ているのだと思う。 エネルギーはいつでも自ずと出口を探して出てしまうものなのだと思う。 薬は使ってこなかったけど、仕事で髪をおろしているのが暑すぎて夏のあいだだけ使うことにした。 薬は賢く使うことが大切だよ、と漢方の先生が言っていた。 でもやっぱり皮膚科は苦手。話もろくに聞かず薬だけ塗りたくられるかんじが。 7/27

          日記【7/26~7/30】