振替輸送
10/14(土)
17時に仕事が終わり、駅前のタリーズに寄った。
18時すぎ、タリーズを出て改札口へ向かった。
駅員の早口でまくし立てるようなアナウンスが遠くからぼんやりと聞こえてくる。
改札の前まで来ると、立ち止まって電光掲示板を見上げている人がちらほらいるのがわかる。
人身事故で帰宅方面の電車が止まっていた。
逆方面は電車が動いていたからそっちへ乗って、聖蹟桜ヶ丘で降りて
そこからバスに乗って帰ることにした。
バスターミナルにつくと振替輸送の乗客で、すでに長い列ができていた。
おじいさんが私の後ろに並んだ若いカップルに、この列は何の列ですか?
と聞いて、聞いた後に去っていった。
バスに乗る頃には陽はとっくに暮れていた。
降車ボタンの赤い光が窓ガラスに反射して、街に点々と提灯が灯っているようだった。
たまにはいつもと違うルートで帰るのも悪くないな。
なんてことを思ってから、今日線路に飛び込んだ人のことが頭をよぎった。
降りるひとつ手前の停車駅でボタンを押してしまった。
扉は開いて、誰も降りない。
「すみません、間違えました」と私は運転手に伝えた。
運転手は何の感情も見えない声色で
「他に降りる方はいませんか」とだけ言って、扉を閉めた。
10/15(日)
朝から雨。気分がもやもやしている。
お昼過ぎに雨があがったので外に出た。
専門店で気になるバッグを見つけて、何となくほしいなと思う。
けれど、バッグは他に持っているんだからべつに買わなくてもいいのだ。
このバッグを買ったら、もやもやした気分が少し晴れるはずだから手に入れたい、それだけのことなのだ。
カフェに入って文章を書こうとするが、なかなか進まない。
胃がむかむかしていて、いつもは飲まないエスプレッソを飲んだ。
エスプレッソのカップはおままごとのコップみたいに小さくて、小人になった気分になる。
夜、皿を洗いながら聞き逃し配信で武田砂鉄の「プレ金ナイト」を聴いた。
武田砂鉄とバービーがフェムテック特集で、1時間半ずっと生理の話をしている。
日本中の男がみんな砂鉄のようだったらどうだろう。
日本中の男がみんな砂鉄のようだったら、
砂鉄は砂鉄ではなくなってしまうだろうと思う。
それは磁場をなくした砂鉄のようなものだろう。
10/16(月)
仕事の休憩室にて。
休憩中なのにずっと仕事の話をしている人たちがいる。
この仕事が好きなんだな、と思う。
それはべつにおかしいことでもないし、否定するつもりもない。
ただ、私がこの仕事をこの人たちのようには愛せていないことがわかってしまうというだけだ。
この人たちみたいに愛せたら。
愛されるよりも愛せたら。
10/19(木)
この前ほしいと思ったバッグのある店の前を通ったので、
ついまた入って、そのバッグをじっと見つめる。
店員がこちらへやってきて、おすすめしてきそうな雰囲気を感じ取って、さっと店を出る。
先日も同じ店員から声をかけられたから、2回聞く必要はないのだ。
けれどあの店員は私のことなど覚えてなくて、きっとまた話しかけてくるはずだ。
だから、店員がこちらへやってきて、おすすめしてきそうな雰囲気を感じ取って、さっと店を出る。
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