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DO YOU KNOW GODZILLA?

11/2(木)
歯医者へ。
3年間の歯列矯正がやっと終わった。
後戻りをふせぐための、寝るときにつけるマウスピースの歯形をとってもらう。歯科助手さんがうすい金属片に、ピンク色がかったスライム状のものをのせて、私の口へ押し込む。
それは私の口の中でどんどん広がっていく。
口からはみでそうになるそれを、はみでないように歯科助手さんが急いで私の口へ押し込める。
思ったよりもそれは喉の方までやってきて、少し怖くなる。
「固まるまでこのまま少し時間をおきます。」
と言って、歯科助手さんはどこかへ行ってしまった。
私はじっとしたまま壁に貼ってあるポスターを見つめた。
『あなたも白い歯で素敵な毎日を!』
金髪の女の人が白い歯を見せて笑ってる。
口の中で、柔らかかったものがだんだん固くなっていく。
少し寄り目になって口元を見てみる。
口の先から少しだけ金属片の先が飛び出してるのが見える。
アメリカのB級映画に出てくるゾンビになったような気分。

そう思ってから、自分がほとんど呼吸をしていなかったことに気づいた。

鼻で大きく息をする。

吸って 

吐いて 


11/3(金)
歯のかみ合わせが変わったせいか、食べている時に口の中をよく噛む。
そのうち適応能力で噛まなくなるんだろうか。

11/4(土)
仕事へ。
何となく早い電車に乗って、朝一番に事務所へ着いた。
積み重なった各社の朝刊を、事務所のテーブルへよいしょ、と運ぶ。
土曜日の朝刊は分厚くて、重い。
雨除けの半透明のビニール袋をはいで新聞を取り出し、
はさまってるチラシ類をすべて抜いていく。
新聞がバラバラにならないように、カション、カションとホチキスでとめていく。
ほとんどの新聞の見出しに大きくガザ、イスラエルの文字だ。
戦場の兵士が銃を持つ代わりにホチキスを持ったらどうか、と考える。
誰かを殺そうとするたびに、カションと音がしてホチキスの芯がポロリとこぼれ落ちる。
地球に散らばる大量のホチキスの芯。
それを、惑星ほどもある巨大な磁石でひとつ残らず吸い集める。

そうしてできあがったのが、ゴジラ。


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