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Nakashima HIdeki 中島秀紀 九州大学名誉教授 工学博士 九州大学工学…

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Nakashima HIdeki 中島秀紀 九州大学名誉教授 工学博士 九州大学工学部応用原子核工学科卒業 専門:核融合ロケット工学、核融合炉工学、プラズマ推進工学

最近の記事

核融合ロケットの研究(25)/日本の計画

先日、noteをチェックしていたら、興味深い記事を見つけました。 https://note.com/polipoli_info/n/n9c2d4bbec544 これは、本当にありがたいです。 核融合の挑戦的な研究の支援の在り方に関する検討会(第3回) 配付資料    https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/2022/1422489_00037.html 吉田先生の資料を読んでいたら、核融合推進・ロケットの記述もありました。 取り出してみますと、

    • 核融合ロケットの研究(24)/100人乗り・実験機

      表紙出典:ザ・スペースエイジ 第1巻 p.72~73, NHK出版  スペースX社のイーロン・マスク氏は、2050年には、火星に100万人の都市を建設する計画です。その時には、宇宙船は、一度に100人は、運べる必要があるでしょう。  今は、高速で5~6人を火星まで届けることで、核融合ロケットを設計していますが、もっと大人数、例えば、100人とかなると、今までのエンジンでは力不足と思います。なので、大きなエンジン・磁気ノズルを1個でもいいですが、その時は、大半径のコイルとな

      • 核融合ロケットの研究(23)/Blue Laser Fusion・スタートアップ企業

        1) 前回の記事(22)におきましては、スタートアップ企業Ex-fusion社について書きましたが、その後以下の様な質問を送りましたら(7/20)、以下の様な回答を得ています。(8/3) 今は、会社が発展することを祈っています。 多分、コンスタントにゲイン(核融合出力/レーザーエネルギー)=10を達成すれば、皆が興味を持ってくれると思いますが。 質問:  私たちのグループは、レーザー核融合の宇宙応用、すなわちレーザー核融合ロケットについて、研究をおこなっています。 今回、

        • 核融合ロケット研究(22)/Ex-fusion・スタートアップ企業

          表紙は、Ex-fusion社のHPからのものです。 今日は。先日、noteの記事を読んでいましたら、以下のようにスタートアップ企業Ex-fusionさんの紹介がありました。noteで新しい情報が得られるので、感謝です。 https://note.com/mogura2001/n/nab2cbf2def90 【阪大発スタートアップ、レーザー核融合で世界初の実証炉 18億円調達、30年代商用化へ本格設備】日経新聞 「大阪大学発スタートアップのエクスフュージョン(大阪府吹田市)

        核融合ロケットの研究(25)/日本の計画

          核融合ロケット研究(21)木星探査にも使おう & ChatGPT

          (20)では、原子力ロケットが日本では追求されていないので寂しいとか書きましたが、もう日本は原子力ロケットに開発の努力・エネルギーを注ぎ込まないで、直接核融合ロケットに進もう。どうせこちらの方が性能が良いので。早く研究を始めた方が勝ち。(17)にも書きましたが、ゼウス(原子力電気推進)では、木星まで、金星の重力アシストを利用して(力がないので)、robotic missionで、(片道)50ヶ月(4.2y)かかるとのこと。pulsed fusion propulsion sy

          核融合ロケット研究(21)木星探査にも使おう & ChatGPT

          核融合ロケット研究(20)日本の原子力研究よ頑張れ

          日本では、原子力ロケットが追求されていないのは、何度も書いているが、どうも寂しい。原子力技術は、まだ、中国、米国に次いで、世界第3位で、原子力技術者は、まだ、1万人はいるのでは。早くしないと、経験がある人が定年で辞めてしまう。原子力技術にも、原子力ロケット(宇宙推進)と月面原子炉(宇宙原子炉)に区別される。このうち、月面原子炉は、JAXAでも研究されていることは、オープンである。原子力ロケットでも、原子力電気推進システムについては、奈良林先生が北大に在職中に研究をされていたが

          核融合ロケット研究(20)日本の原子力研究よ頑張れ

          核融合ロケット研究(19)/核エネルギー宇宙推進システム

          新しい概念・核パルスロケット 最近、Nathanさんに紹介された論文で、知りました。 低濃縮Uのprojectile(弾)を、やはり低濃縮のbarrel(砲身)に打ち込んで、制御棒の回転・調整で、超臨界状態にし、核分裂のエネルギーで弾をプラズマ状態にして、打ち出すというものです。下に概念図があります。control drum/制御棒(これは、barrelの外にあります)の運動だけでOKです。弾は、1Hzで打ち込むようですが。まだまだ、色んなアイデアが出てきそうです。特に

          核融合ロケット研究(19)/核エネルギー宇宙推進システム

          核融合ロケット研究(18)/ベンチャー・J-EPoCH

           今年の年賀状で多かったのが、米国リバモア国立研究所で、レーザー核融合でゲインが、1.5と1を超えた結果を出した事でした。このような、素晴らしい結果が続く事を願っています。また、地上発電応用だけでなく、ロケット応用の方が早いのではとも、書いてありました。確かに、ロケットでは、経済性は、地上用よりも厳しく求められなく、かつ工学的にも宇宙はもともと真空ですので、真空にする必要もなく、また、プラズマー壁相互作用(Plasma Wall Interaction:PWI)も問題にならい

          核融合ロケット研究(18)/ベンチャー・J-EPoCH

          核融合ロケット研究(17)/高速宇宙艦

           最近知ったのですが、ネットによりますと、ロシアでは、原子力宇宙タグボート:ゼウスを開発中とか。ネットで調べる限り、原子力電気推進、すなわち宇宙用原子炉で電気を発生し、ホール・スラスターなどの電気推進機を動かすようです。兵器としては、レーザー砲、電磁パルス発生装置を装備しているようです。2030年、打ち上げ予定とのこと。  このような、宇宙空間を戦場に変えるロシアの計画は、今まで平和応用にしか頭になかった私には、驚きと不愉快さをもたらします。  しかし、これには、レーザー核

          核融合ロケット研究(17)/高速宇宙艦

          核融合ロケット研究(16)/今後の研究方針

          久しぶりに原稿を書いています。 最近、熊谷達也著、「孤立宇宙」、講談社を読んでいたのですが、p.49に、火星までは、イオンエンジンロケットで行くとありましたが、推力は大丈夫なのでしょうか、また、系外惑星(プロキシマ・ケンタウリ、4.2光年など)には、核融合パルスエンジンを初期加速と減速用に備えとあリます。これは多分、DAEDALOS/ICRUS Projectが念頭にあるのでは。これらの記述を読むと、ワクワクします。 ・J-EPoCH どこかで、(13)あたりか、阪大激光3

          核融合ロケット研究(16)/今後の研究方針

          核融合ロケット研究(15)/hybrid target 解析手法

           磁気ノズルだけでなく、我々も、炉心、つまりターゲットについては、関心があり、以前から検討を行って来ました。それをここでは、少し紹介します。 ターゲットに核分裂性物質を装荷する(hybrid target)。これは、NASA AdamsさんのPuFF設計案にもありますが。普通は、pure DT燃料です。しかし、これにU, Puなどを装荷すると、核融合点火が容易になったり、n+U=fissionの反応により、核分裂エネルギーも追加され、エネルギー発生量は増加します。 この

          核融合ロケット研究(15)/hybrid target 解析手法

          核融合ロケット研究(14)/どこに向かうのか&補遺

          ここまで、核融合ロケットの現状などを紹介してきましたが、今後どうするかですね。要は、核融合ロケットをなるべく早く実用化すれば良い。それに少しでも貢献できないか。今のところ以下のものでしょうか。私の個人的な見解です。  米国とは、何しろマンパワー、資金も全然違う。アラバマ大学は、Propulsion Research Centerを持っているが、我々は、研究室の一部を使用し、核融合ロケット関連の院生は数名程度、これを教員が面倒を見ている。何かあれば、相談に乗っていただける先生方

          核融合ロケット研究(14)/どこに向かうのか&補遺

          核融合ロケット研究(13)/模擬実験

          ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。元々は、毎年研究室に入ってくる新入生への研究紹介になるかと思い書き始めした。もし、それ以外の方にも興味を持っていただければ、幸いです。  模擬実験について紹介します。本当は森田さんが適任だと思いますが。 Hybrid codeを回して、いろんなアイデアを提案するのは、それはそれで楽しいですが、どれだけ妥当性があるのかが問題になってきます。そこで、コードの妥当性を検証するためにも、模擬実験が必要となっています。残念ながら、核融

          核融合ロケット研究(13)/模擬実験

          核融合ロケット研究(12)/設計ノート3

           SFでも、核融合ロケットが出てくるとワクワクするのですが、恐れ多くも、今絶大に人気のあるSF三体を見てみましょう。三体II 黒暗森林上 p.238に丁寧に説明があります。非媒質型とか。すなわち、物質・推進材を噴出し、その反作用で推力を得るのではない。我々のは、プラズマを磁気ノズルで噴出し、その反作用で推力を得るので、残念ながら、媒質型です。図1参照。確かに、この媒質型の場合は、何光年もの航行のためには、多量の媒質・推進材が必要です。VISTAでさへ、火星に行くにも全質量60

          核融合ロケット研究(12)/設計ノート3

          核融合ロケット研究(11)/設計ノート2

          他にアイデアは? 磁気ノズル: 今まで、single(典型的にはVISTA)、2 coils, multi coilsなど円形(solenoid)コイルの組み合わせを紹介してきましたが、もちろんこれ以外にもまだまだいろいろ考えられると思います。最近、Univ. AlabamaのJasonさんと議論しているのですが、彼の推奨の磁気ノズルを、図1に示します。axial nozzleというもので、たくさんのコイルの組み合わせで、右下の図の赤い点にプラズマを置くようにするものです。

          核融合ロケット研究(11)/設計ノート2

          核融合ロケット研究(10)/ 設計ノート

          設計はどうやるの?: これは、ひたすら質量の計算です。超電導コイル(SCM)、遮蔽、始動用原子炉を含めて。ここで性能の指標となるのは、α:specific power 比出力(kw/kg)です。目標値は、α=1kw/kg。 我々の例では、α=0.4とかなり厳しいです。VISTA α=10程度です。以下の論文の3章の伊勢さんの記事(p.623)を参照ください。これをもとに、ミッション解析(火星まで何日で行けるとか、ロケットの推力をどう変化させるなど)を行うことになります。簡便

          核融合ロケット研究(10)/ 設計ノート