VISTA/LFR

Nakashima HIdeki 中島秀紀 九州大学名誉教授 工学博士 九州大学工学部応用原子核工学科卒業 専門:核融合ロケット工学、核融合炉工学、プラズマ推進工学

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Nakashima HIdeki 中島秀紀 九州大学名誉教授 工学博士 九州大学工学部応用原子核工学科卒業 専門:核融合ロケット工学、核融合炉工学、プラズマ推進工学

    最近の記事

    核融合ロケット研究(21)木星探査にも使おう & ChatGPT

    (20)では、原子力ロケットが日本では追求されていないので寂しいとか書きましたが、もう日本は原子力ロケットに開発の努力・エネルギーを注ぎ込まないで、直接核融合ロケットに進もう。どうせこちらの方が性能が良いので。早く研究を始めた方が勝ち。(17)にも書きましたが、ゼウス(原子力電気推進)では、木星まで、金星の重力アシストを利用して(力がないので)、robotic missionで、(片道)50ヶ月(4.2y)かかるとのこと。pulsed fusion propulsion sy

      • 核融合ロケット研究(20)日本の原子力研究よ頑張れ

        日本では、原子力ロケットが追求されていないのは、何度も書いているが、どうも寂しい。原子力技術は、まだ、中国、米国に次いで、世界第3位で、原子力技術者は、まだ、1万人はいるのでは。早くしないと、経験がある人が定年で辞めてしまう。原子力技術にも、原子力ロケット(宇宙推進)と月面原子炉(宇宙原子炉)に区別される。このうち、月面原子炉は、JAXAでも研究されていることは、オープンである。原子力ロケットでも、原子力電気推進システムについては、奈良林先生が北大に在職中に研究をされていたが

        • 核融合ロケット研究(19)/核エネルギー宇宙推進システム

          新しい概念・核パルスロケット 最近、Nathanさんに紹介された論文で、知りました。   低濃縮Uのprojectile(弾)を、やはり低濃縮のbarrel(砲身)に打ち込んで、制御棒の回転・調整で、超臨界状態にし、核分裂のエネルギーで弾をプラズマ状態にして、打ち出すというものです。下に概念図があります。control drum/制御棒(これは、barrelの外にあります)の運動だけでOKです。弾は、1Hzで打ち込むようですが。まだまだ、色んなアイデアが出てきそうです。特に

          • 核融合ロケット研究(18)/ベンチャー・J-EPoCH

             今年の年賀状で多かったのが、米国リバモア国立研究所で、レーザー核融合でゲインが、1.5と1を超えた結果を出した事でした。このような、素晴らしい結果が続く事を願っています。また、地上発電応用だけでなく、ロケット応用の方が早いのではとも、書いてありました。確かに、ロケットでは、経済性は、地上用よりも厳しく求められなく、かつ工学的にも宇宙はもともと真空ですので、真空にする必要もなく、また、プラズマー壁相互作用(Plasma Wall Interaction:PWI)も問題にならい

            核融合ロケット研究(17)/高速宇宙艦

             最近知ったのですが、ネットによりますと、ロシアでは、原子力宇宙タグボート:ゼウスを開発中とか。ネットで調べる限り、原子力電気推進、すなわち宇宙用原子炉で電気を発生し、ホール・スラスターなどの電気推進機を動かすようです。兵器としては、レーザー砲、電磁パルス発生装置を装備しているようです。2030年、打ち上げ予定とのこと。  このような、宇宙空間を戦場に変えるロシアの計画は、今まで平和応用にしか頭になかった私には、驚きと不愉快さをもたらします。  しかし、これには、レーザー核

            核融合ロケット研究(16)/今後の研究方針

            久しぶりに原稿を書いています。 最近、熊谷達也著、「孤立宇宙」、講談社を読んでいたのですが、p.49に、火星までは、イオンエンジンロケットで行くとありましたが、推力は大丈夫なのでしょうか、また、系外惑星(プロキシマ・ケンタウリ、4.2光年など)には、核融合パルスエンジンを初期加速と減速用に備えとあリます。これは多分、DAEDALOS/ICRUS Projectが念頭にあるのでは。これらの記述を読むと、ワクワクします。 ・J-EPoCH どこかで、(13)あたりか、阪大激光3

            核融合ロケット研究(15)/hybrid target 解析手法

             磁気ノズルだけでなく、我々も、炉心、つまりターゲットについては、関心があり、以前から検討を行って来ました。それをここでは、少し紹介します。   ターゲットに核分裂性物質を装荷する(hybrid target)。これは、NASA AdamsさんのPuFF設計案にもありますが。普通は、pure DT燃料です。しかし、これにU, Puなどを装荷すると、核融合点火が容易になったり、n+U=fissionの反応により、核分裂エネルギーも追加され、エネルギー発生量は増加します。  この

            核融合ロケット研究(14)/どこに向かうのか&補遺

            ここまで、核融合ロケットの現状などを紹介してきましたが、今後どうするかですね。要は、核融合ロケットをなるべく早く実用化すれば良い。それに少しでも貢献できないか。今のところ以下のものでしょうか。私の個人的な見解です。  米国とは、何しろマンパワー、資金も全然違う。アラバマ大学は、Propulsion Research Centerを持っているが、我々は、研究室の一部を使用し、核融合ロケット関連の院生は数名程度、これを教員が面倒を見ている。何かあれば、相談に乗っていただける先生方

            核融合ロケット研究(13)/模擬実験

            ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。元々は、毎年研究室に入ってくる新入生への研究紹介になるかと思い書き始めした。もし、それ以外の方にも興味を持っていただければ、幸いです。  模擬実験について紹介します。本当は森田さんが適任だと思いますが。 Hybrid codeを回して、いろんなアイデアを提案するのは、それはそれで楽しいですが、どれだけ妥当性があるのかが問題になってきます。そこで、コードの妥当性を検証するためにも、模擬実験が必要となっています。残念ながら、核融

            核融合ロケット研究(12)/設計ノート3

             SFでも、核融合ロケットが出てくるとワクワクするのですが、恐れ多くも、今絶大に人気のあるSF三体を見てみましょう。三体II 黒暗森林上 p.238に丁寧に説明があります。非媒質型とか。すなわち、物質・推進材を噴出し、その反作用で推力を得るのではない。我々のは、プラズマを磁気ノズルで噴出し、その反作用で推力を得るので、残念ながら、媒質型です。図1参照。確かに、この媒質型の場合は、何光年もの航行のためには、多量の媒質・推進材が必要です。VISTAでさへ、火星に行くにも全質量60

            核融合ロケット研究(11)/設計ノート2

            他にアイデアは? 磁気ノズル: 今まで、single(典型的にはVISTA)、2 coils, multi coilsなど円形(solenoid)コイルの組み合わせを紹介してきましたが、もちろんこれ以外にもまだまだいろいろ考えられると思います。最近、Univ. AlabamaのJasonさんと議論しているのですが、彼の推奨の磁気ノズルを、図1に示します。axial nozzleというもので、たくさんのコイルの組み合わせで、右下の図の赤い点にプラズマを置くようにするものです。

            核融合ロケット研究(10)/ 設計ノート

            設計はどうやるの?: これは、ひたすら質量の計算です。超電導コイル(SCM)、遮蔽、始動用原子炉を含めて。ここで性能の指標となるのは、α:specific power 比出力(kw/kg)です。目標値は、α=1kw/kg。 我々の例では、α=0.4とかなり厳しいです。VISTA α=10程度です。以下の論文の3章の伊勢さんの記事(p.623)を参照ください。これをもとに、ミッション解析(火星まで何日で行けるとか、ロケットの推力をどう変化させるなど)を行うことになります。簡便

            核融合ロケットの研究(9)/ 推力ベクトルの制御

            まず、何故推力ベクトルの制御が必要かですが、VIST’Aでもそうですが、宇宙航行の途中で、船体を加速から減速するときに、普通は、船体を1回転させます。通常は、船体に付属した補助の化学ロケットで行うのですが、これを磁気ノズルを工夫することにより、余計な化学ロケットなしで、行おうとしたら、という話です。そのために、磁気ノズルからのプラズマ噴出方向を少しずつ変えることになります。  もちろん、これもいろんな方法が考えられます。それを検討した論文は、 Yoshihiro Kajimu

            核融合ロケットの研究(8)/ single vs. multi-coils

            それにしてもキャッチ画像・表紙の図のネタ切れです。どうしても図がボケる。    VISTAもそうですが、我々の提案の概念図を図1に示しますが、形状は同じものです。図2の断面図に示しました通りに、一つのコイル(SCM)を採用しています、こちらの方が、軽く、ある程度の推進効(~65%)が得られるからです。 SCM(超伝導)コイルを用いると核融合中性子(それと構造材との反応によるガンマ線)の遮蔽材、中性子による発熱を廃棄するためのヒートパイプなどで、どうしても重くなります 。 (断

            核融合ロケットの研究(7)/ 推進材の整形

            図1 磁気スラストチャンバー 推力発生のメカニズム 図2 通常のダーゲットと整形ターゲット  今一度確認ですが、レーザー核融合ロケットの推進システムとしての磁気ノズル/スラストチャンバーを研究してきました。(最初に、米国原子力学会誌に論文を投稿したときに、タイトルを磁気ノズルとしていたのですが、査読者から、これだと定常流れを皆は考えるから、我々のパルス的な場合は、スラストチャンバーにした方がいいのでは、と言われてこちらに修正した経緯があります。しかし、今は、両方適当に使用

            核融合ロケット研究(6)/磁気ノズル・磁気スラストチャンバー

             ところで、今回は、表題の原理説明とシミュレーション結果を示します。 VISTA type/ single coil system: 原理の方ですが、簡単化して言いますと、以下の(a)のように、コイルから離れた所で核融合プラズマを生成すると、(b)プラズマは、磁場を排除しながら膨張します。排除された磁場は、圧縮され圧力が増大します。やがて、圧縮磁場は、プラズマ自身の圧力より大きくなり、(c)プラズマを押し戻し、後方に噴出します。その反作用で、コイル・船体が推力を得ます。