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核融合ロケット研究(16)/今後の研究方針

久しぶりに原稿を書いています。
最近、熊谷達也著、「孤立宇宙」、講談社を読んでいたのですが、p.49に、火星までは、イオンエンジンロケットで行くとありましたが、推力は大丈夫なのでしょうか、また、系外惑星(プロキシマ・ケンタウリ、4.2光年など)には、核融合パルスエンジンを初期加速と減速用に備えとあリます。これは多分、DAEDALOS/ICRUS Projectが念頭にあるのでは。これらの記述を読むと、ワクワクします。

・J-EPoCH
どこかで、(13)あたりか、阪大激光30kJ装置がなかなか使えないので、高エネルギーレーザーでの模擬実験が困難であることを書いています。この解決策は、新しい装置を建設してもらうことです。その第一候補が、J-EPoCHと呼ばれる装置です。阪大レーザー研の
https://www.ile.osaka-u.ac.jp/ja/research/project/high-powerlaser/index.html
を参照してください。


J-EPoCH 概観図

10kJで、Max. 100 Hzなので、レーザーエネルギーは、激光クラス(と言うことは、核融合プラズマの発生は無し)ですが、繰り返しが、10Hzもあれば、実験誤差が少ない、良いデータが取れることを期待しています。問題は、いつできるかです。2030年頃には、完成して、運用しているようですが、今から8年も先の話か。と言うことは、ここ当分、4J(広大)での実験です。
この後、実験炉(LIFT)が2050年代に完成し、こちらは、高速点火方式:500kJ(爆縮) + 150kJ(加熱)に対して、GAINは、100以上を計画していますので、この頃になれば、核融合プラズマも磁気ノズルの実験に使用できるのでは。

日本では、当面は、high gainを狙わずに、高繰り返しを狙う路線に行くことが決定路線です。なので、J-EPoCHを用いれば、10Hzでターゲットを打ち出し、追跡し、見事10kJレーザを当てる技術は、進むと思いますが、核融合プラズマを発生し、核融合炉、核融合ロケットの実用化に貢献するには、たとえば、米国との共同研究が必要となってきます。(阪大でも米国との共同研究は進められています。)

もちろん、日本でも独自にLIFT計画を着実に進めれば、良いのですが。最近の日本の国力の低下を考えれば、日本独自(での建設)と言うのは、今後は無理では。中国は出来ると思いますが。

と言うことは、今から当分研究状況は変わらす、将来を見越すと、すぐにでも米国との共同研究を進めておくべき。幸いにも、我々は、NASA Dr.Adamsさんとほぼ定期的にミーティングを行なっています。また、彼らのグループから、Nahtanさんがこちらに来て、axial nozzleの実験研究を行なっています。また、彼は、最近、以下の論文で、我々の今までの研究成果について紹介してくれました。米国での認知度が上がらないと、どうしようもありません。
これらを考えると、繰り返しになりますが、NASAとの共同研究を進め、その具体的成果として、できれば共著の論文を書くことです。

Exploring the Feasibility of a Power-Generating Pulsed Nuclear Magnetic Nozzle
Dr. Nathan M. Schillinga, Dr. Jason Cassibryb, Dr. Robert Adamsc
73rd International Astronautical Congress (IAC), Paris, France, 18-22 September 2022.
IAC-22-C4,10-C3.5,4,x73738
それから、防衛省の安全保障技術研究推進制度に応募して、予算を確保し、(簡単でないと思うが、)研究室の学生と共に、これでPD(博士研究者)を雇って研究したら、進展が早いのではと思われます。

・Hybrid Blanket

Nuclear engineering出身なので、どうしてもfissionを利用したくなる。
Pick-up coilでのエネルギー回収が困難である時には、中性子遮蔽体の前方に、厚さ10cm位のU層を置いて、ここでの核分裂エネルギーを回収して、熱エネルギーから変換して、電気エネルギーにしてはいかがか。
我々の設計では、
En(中性子エネルギー)=EL x Gain x αn(中性子割合) = 1x200x0.7=140 MJ
船体の立体角: 4%、なので入射中性子エネルギー=140x0.04=5.6MJ
Hybrid blanketで、energy multiplication~10なので、
利用可能エネルギー=5.6x10=56 MJ、電気エネルギーEe=56x0.40=22.4 MJ
(変換効率 40%仮定)
次のレーザーに必要な電気エネルギー=E=EL/η=1/0.1=10 MJ
(レーザー効率 η=0.1仮定)
Ee > E なので、一応は成立する。
H. Nakashima & M. Ohta, Energy  Multiplication and Fissile Production of D-D Fusion-Fission Hybrid Reactors , Journal of Nuclear Science and Technology, 15:10, 791-794, DOI: 10.1080/18811248.1978.9735591


レーザー核融合ロケット断面図・中性子遮蔽体

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