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核融合ロケットの研究(26)/始動用原子炉、スピン偏極

表紙:「長岡秀星の世界」、日本放送出版協会
始動用原子炉 Start-up Reactor:
 レーザー核融合ロケットでは、最初のレーザーを射出するために電力が必要です。核融合が連続して起きれば、そのプラズマから電磁誘導の法則で、pick-up coilを用いて、取り出すことができます。(下図参照)その最初のレーザー用の電力を発生するのは、普通は、原子炉を用います。すなわち、始動用原子炉。例えば、100 kWe SP-100 type, 5 ton程度です。しかし、これは、随分前に運転されていたもので、燃料の濃縮度が、90%を超えます。最近は、民生用は、米国でもHALEU(High-Assay Low-Enriched Uranium)と呼ばれる燃料が用いられ、濃縮度は、かなり低く20%上限の様です。この上限は、昔から日本ではそうでした。要するに核拡散防止のためです。この様に、濃縮度が抑えられると、5 tonでは無理で、1桁質量が大きく、50 ton位になる可能性があります。
 ところで、(19)の記事で紹介しました、Howeさんのアイデアでも基本的には、HALEUを用います。これは、NASAからfundを貰い大変興味深いアイデアですが、私たちは、ターゲットには、核分裂性物質は用いない立場なので、研究の推移を見ておくだけです。


mass & energy flow

スピン偏極:
スピン偏極については、(24)ですでに触れましたが、DTの核スピンを揃えると、核融合中性子が非等方(sinθ**2)に放出されます。この性質を利用すれば、 船体構造は、コーヒーカップ型(VISTA:(6)の表紙)から、ペンシル型(Hydeの昔のversion:(5)の表紙)に変えることができると思われます。
  θ=0方向には、核融合中性子が飛んで来ないので、その方向にものが置けます。これは単なる1例です。工夫が次第では、もっと設計の自由度が増すはずです。

                        船体              チャンバー 核融合中性子

スピン偏極を考慮した設計例

推進剤付きターゲットの爆縮・燃焼:
 核融合ロケットでは、燃料ペレットの周囲に推進剤を置きます。これは、核融合燃焼により燃料から高速のプラズマが噴出しますが、これだけだと推力が大きくなりません。そのため推進剤を置いて核融合プラズマと衝突させ、推進剤もプラズマとし、噴出させます。速度が落ちますが、この方が推力を大きくすることが出来ます。問題は、この推進剤が付いた状態でも燃料ペレットの爆縮・燃焼がうまくいくかです。間接照射型ですと、米国のNIFに状況が似ていますので、何とかなりそうですが、一度レーザーをX線に変換しますので、効率が落ちます。

推進剤付きターゲット

一方直接照射型で高速点火を目指そうとすると、推進剤の孔をどの程度にすべきか、大きすぎてそこから高速で核融合プラズマが噴出してしまわないかなど検討する必要があります。これは具体的にターゲットを考えて解決する必要があります。シミュレーションを考えても、素直に3次元など簡単に出来そうもありません。ここは、今後斬新なアイデアに期待しましょう。

推進剤付きターゲット

xcimer energy/スタートアップ企業について
10+ MJ Krypton Fluoride(gas) Laser, hydrogen (DT) fuel , lower repetition rates (< 1 Hz)  とありました。ーーーガスなら軽いので、宇宙利用に向いています。しかし、我らの方式、高速点火では、ゲインは、大きくならないのでは。1MJでゲイン200の仮定で設計しましたが、10MJ(10倍)になってもゲインは300~400では。これが、1000とかなら興味が湧きますが。むしろ、10MJならDTだけでなくD3Heも燃やせるのに魅力を感じますが。D3Heなら中性子発生量が、100 分の1に落ちるので、また色々と船体の設計の自由度が出てきて面白くなります。

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