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核融合ロケット研究(17)/高速宇宙艦

 最近知ったのですが、ネットによりますと、ロシアでは、原子力宇宙タグボート:ゼウスを開発中とか。ネットで調べる限り、原子力電気推進、すなわち宇宙用原子炉で電気を発生し、ホール・スラスターなどの電気推進機を動かすようです。兵器としては、レーザー砲、電磁パルス発生装置を装備しているようです。2030年、打ち上げ予定とのこと。

ゼウス概念図

 このような、宇宙空間を戦場に変えるロシアの計画は、今まで平和応用にしか頭になかった私には、驚きと不愉快さをもたらします。
 しかし、これには、レーザー核融合ロケット(Laser Fusion Rocke:LFR)が対抗できるものと考えられます。良く知られていますように、電気推進は、燃費は良いが、力がない、つまり遅い。LFRは、燃費も良くて、力が出せる、なので早い。多分、数倍は、LFRの方が早い。
そこで、レーザー兵器を搭載しておけば良い。ゼウスような推進システムになら、LFRは簡単に追いついて、必要な防衛的軍事行動が取れるのでは。肝心なことは、広大な宇宙に出たら、探し出すのが大変では。早く探し出して、早く攻撃した方が勝ちらしい。
 因みに、ゼウスでは、木星まで、金星の重力アシストを利用して(力がないので)、robotic missionで、(片道)50ヶ月(4.2y)かかるとのこと。pulsed fusion propulsion system(LFRが含まれる)では、重力アシストなしに、robotic missionで、(片道)14.4ヶ月(1.2y)でいけるとのこと。

Exploring of the Feasibility of  a Power-Generating Pulsed Nuclear Magnetic Nozzle
Nathan M. Schilling, et al, 73rd Int. Astronautical Congress(IAC), 2022
IAC-22-C4, 10-C3.5, 4, x73739
Conceptual Mission Design to Gas Giant Planets Using Nuclear Fusion Propulsion
S. Kumar & J.T. Cassibry, AIAA 2017-4846

 結局、宇宙の軍事利用に対抗するためには、遠回りにはなりますが、今の研究を頑張って、加速し、LFRを早く実用化することのようです。そのためには、博士研究員などを採用し、フルに研究を行う体制を構築すべきでしょう。
 実用化に近いと思われるゼウス計画と、概念設計段階にしかないLFRを同列に論じるなとのご意見もあろうかと思います。しかし、ゼウス計画が、順調に進むとも思えません。ロシアのウクライナ侵攻で、ロシアが敗北すれば、多額の賠償金の支払い、また、制裁が簡単に解除されるわけではないので、高精度機能の工業部品を輸入できなくて、要は、経済はボロボロになり、こんな計画のためにお金を使う余裕は当分無いのでは。そのうち高性能のLFRが追いつく事を期待します。

WOW!
最近の報道(朝日新聞2022年、12月14日、夕刊)によりますと、米国リバモア国立研究所の装置において、入力レーザーエネルギーの1.5倍の核融合エネルギーの発生、すなわち、ゲイン1.5を達成したとのこと。これは、今までゲインなど問題にすることがなかったのに、1を超えたのですから、画期的な成果であり、レーザー核融合が、いよいよ実用化に着実に進んでいることを示します。もちろん、そう簡単ではないでしょうが。この核融合エネルギーは、発電にも使えますが、今まで何度も書いていますが、宇宙推進にも有効に使用できます。



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