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核融合ロケットの研究(24)/100人乗り・実験機

表紙出典:ザ・スペースエイジ 第1巻 p.72~73, NHK出版

 スペースX社のイーロン・マスク氏は、2050年には、火星に100万人の都市を建設する計画です。その時には、宇宙船は、一度に100人は、運べる必要があるでしょう。

 今は、高速で5~6人を火星まで届けることで、核融合ロケットを設計していますが、もっと大人数、例えば、100人とかなると、今までのエンジンでは力不足と思います。なので、大きなエンジン・磁気ノズルを1個でもいいですが、その時は、大半径のコイルとなり、設計が厳しくなります。それよりも、小型(標準型)で、多数製作し、それを組み合わせと方がいいのではと思います。いわゆるクラスター・エンジン化です。
 図は、3個の例ですが、スピン偏極反応を利用すれば、ゲインが、1.45倍になる利点の他に、エンジンの核融合反応で発生した中性子の影響、つまり遮蔽への負荷が小さくなると考えられます。図の赤い形状が中性子の放出方向です。コイルへは、向かないように核融合反応を調整します。ただし、他のエンジンへの影響は増えるのか、要注意です。


3個のエンジン 前方:船体、後方:エンジン、赤:中性子放出方向

   
   また、噴出プラズマもエンジン・スラストチャンバー間で相互作用する可能性がありますので、その効果が推進効率などにどう影響するのかも検討が必要です。
 さらに、1個のエンジンだけ動かし、他を停めたら、推力発生が非対称となり、進行方向が傾き、推力方向制御もできることになります。また、1個くらいエンジンが故障しても、なんとか目的地まで飛んで行けそうです。

 もちろん、これは私の考えです。皆様も考えてみてください。
例えば、下の図のように、コイルは3個(複数)で、1個の核融合反応を制御するのもありか? 確かに、これでも推進効率はまあまあですが、しかしコイルの中性子遮蔽はうまくいのかなど疑問あります。下記の文献に関連のシミュレーションがあります。Fig.2,Fig.3参照、コイル2個、プラズマは中央に配置。
Y. Kajimura, N. Matsuda, K. Hayashida, A. Maeno, H. Nakashima, "Numerical Simulation of Plasma Behavior in a Magnetic Nozzle of a Laser-plasma Driven Nuclear Electric Propulsion System ," AIP Conference Proceedings 1084, 934 (2008)
http://art.aees.kyushu-u.ac.jp/research/LFR/papers/twincoil.pdf


3個のコイル、核融合1箇所

 2030年には、実験機を製作したいと書いていますが、それは実用機をscale-downしたものになるはずです。どのように、scale-downするかは、磁気ノズルに関しては、最近検討し論文にしています。
Investigation of Energy-Scaling of  Thrust Performance for Laser Fusion Rocket
To be published in Plasma and Fusion Research

推進効率、比推力は、実用機と同じですが、Ib(imlulse bit)は、プラズマエネルギーのほぼ0.5乗に従って変化したものとなります。今思っていますのは、
実用機のコイル半径が 5 mですが、実験機は1mくらいでいいのでは。

ところでnoteを検索していますと、以下の記事を見つけました。また少し元気が出る記事です。
https://note.com/mogura2001/n/nc8bbdd785b02

米国立研究所が核融合点火に再び成功

【米国立研究所、「核融合点火」に再び成功-投入上回るエネルギー生成】Bloomberg

核融合反応で投入を上回るエネルギー生成に昨年成功した米ローレンスリバモア国立研究所は、7月30日の実験で再びこの「核融合点火」に成功した。同研究所は昨年12月5日に初めて「点火」に成功後、今年春と夏にも実験を繰り返したが達成できていなかった。

  再度の実験成功によって、温室効果ガスを排出することのないふんだんなエネルギー源として核融合を活用することに世界が一歩近づいた可能性がある。ただ、それが将来的に実現するとしても、何年も先の未来である公算が大きい。


  
  

   

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