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核融合ロケット研究(12)/設計ノート3

図1磁気ノズルでの視力発生

 SFでも、核融合ロケットが出てくるとワクワクするのですが、恐れ多くも、今絶大に人気のあるSF三体を見てみましょう。三体II 黒暗森林上 p.238に丁寧に説明があります。非媒質型とか。すなわち、物質・推進材を噴出し、その反作用で推力を得るのではない。我々のは、プラズマを磁気ノズルで噴出し、その反作用で推力を得るので、残念ながら、媒質型です。図1参照。確かに、この媒質型の場合は、何光年もの航行のためには、多量の媒質・推進材が必要です。VISTAでさへ、火星に行くにも全質量6000 tonのうち、4100 tonは推進剤ではなかったか。もっとも人を送らずに、観測機器のみを5.9光年離れた、バーナード星に50年で送る計画(片道飛行)ダイダロス計画もありましたが。driver(電子ビーム)のエネルギーが、2.5GJととてつもないものでした。(VISTAでは、レーザー5MJ)この発展版、イカロス計画が、2009年には、公表されています。詳しくは、フォローしていませんが。
 それはそうと、このページには、非媒質型、すなわち放射エネルギーで宇宙船を推進させると書いてあります。そのためには、DT核融合燃料では、放射エネルギーの割合は、10%くらいですので、放射エネルギーの発生が大きな、p11B反応などを利用するのでしょうか。あるいは、プラズマエネルギーを放射エネルギーに変える? 
電磁気学のテキストにあるように、放射が及ぼす力Fは、
F~IA/c
で、I intensity(W/m**2), c velocity of light(m/s)、A面積(m**2) 。cが大きいので、Fは、そんなに大きくならないのでは。
レーザー核融合では、わざわざ、cを下げるために物質のアブレーションを用い、vとし
F~ IA/v
でターゲット爆縮を行っているのではなかったか。
しかし、三体では、450年をかけて、多分数光年を航行するので、時間をかければ、速度は上がるのでしょう。核融合ロケット採用で、元気が出てきますが、もっと詳細な情報が欲しいところです。
 それから、随分前に、A.C.クラークが、ミューオン触媒型核融合について書いていた記憶があります。

推進材を持っていくのではなく、軌道があらかじめ決められていれば、それに沿って、前もって地球から推進材・核融合燃料ペレットを打ち出すというアイデアも前からあります。(pellet stream, F. Winterberg) もっと現実的なのは、目的地(火星など)で、帰りの推進材を準備しておくことです。

 核融合ロケットから離れますが、下の文献1)の最後の方に、船木先生の紹介がありますが、太陽からのプラズマの流れ(太陽風)を、コイル磁場で受けて、推力を得る「磁気プラズマセイル」では、燃料は不要です。詳しくは、以下のKajimuraさんの論文を参照。ここでは、我々が使用しているhybrid code(イオン=粒子、電子=流体)の概要も説明があります。

 紹介が遅れましたが、hybrid codeでの磁気ノズルのシミュレーションは、3)のNagamineくんの論文が最初です。これから、我々のシミュレーション・設計が本格的に始動しましたので、懐かしい論文です。

  1. 中島秀紀, 野田篤司, 船木一幸, "となりの惑星をめざせ - 太陽系を飛び出し, 50年で恒星間を航行できる探査機を実現できるか? ," ニュートン 1月号, 94-99 (2013)

  2. Y. Kajimura, H. Nakashima, Verification of Hybrid Particle-in-Cell Simulation Model for Advaced Plasma Propulsion* Magnetic PLasma Sail and Magnetic Nozzle for Laser Fuison Rocket, JSTS, Vol.25, No.2, p.34

  3. Yoshihiko Nagamine and Hideki Nakashima, "Analysis of Plasma Behavior in a Magnetic Thrust Chamber of a Laser Fusion Rocket ," Fusion Science and Technology 35, 62-70 (1999)

http://art.aees.kyushu-u.ac.jp/research/LFR/lfr-publications.htm

 図1に関して、この際もう一度説明します。
我々の場合(VISTA type, single solenoid coil)は、確かにプラズマはr方向に最初は膨張しますが、磁場(主にz方向)がかかっているので、それを排除するために、周方向に運動し、その方向の電流(反磁性電流:diamagnetic current)が流れます。この電流により、主にz方向の磁場が生じますが、コイル付近では、r方向の磁場(Br)が生じます。コイルに流れる周方向電流(Jθ)とこのBrのローレンツ力Jθx Brによりz方向の力がコイルに生じ、これが推力となります。



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