降谷椎

VRChatに生息するたまに考えたまに思いたまに物書く言葉を操る魔法使い。かもしれない。

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    書いた小説とかまとめ

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    創作裏話を書いています (pixivFANBOXと内容は同じですhttps://furuya-shi.fanbox.cc/)

  • バーチャルにおける恋愛とその人間たちについて

    VRCHATを題材にした恋愛とかの有象無象

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言葉の魔法にかけられたいんだ

詩や小説を趣味や生業としている、降谷椎(ふるやしい)と申します。 普段はVRChatやTwitter(今はXだけど)に生息しながら、詩や小説を書いています。 書いたものはnoteやVRCのワールド「言の葉堂」に置かせてもらっています。 たまにVRCで活動されている方のキャッチコピーやイベント名、文章推敲のお手伝いなどをしているのですが、そこで言われたのが「言葉の魔法にかけられたい」でした。 以前から発表した詩や小説に対して「自分の言いたかったことを言語化してくれた」と言

    • こんな、ゴミと絶望だらけの部屋なのに

      「ねえ、ふたりで抗ってみない?」  最近流行りのアニメのセリフだ。今の状況に、今の生活に、今の世界に、抗う。ここでは僕らふたりはまだ子供のようだった。実年齢など関係なく、この子供っぽさを捨てきれずにいる限り、僕らはフィクションの主人公になり得る存在だ。そんな気がしていた。  ヒロインは言う。ふたりで抗ってみない?  主人公は何も言わず、彼女の手を握る。  感触のないこの世界で、僕は彼女の手を握る代わりに頭を撫でた。視界に手が入るのでこちらのほうがわかりやすいと思って。 「ひと

      • 「好きです」

        「好きです」  そう伝えてくれた彼女の手は、コントローラー越しにわかるくらいに震えていた。  声ももちろん震えていて、マイクが不調なのではないかと思ったほどだ。  多分それは自分が今この状況をなんだか現実感なく受け止めきれてないからで、機器の不調だとかそういった理由付けをしてこの場をやり過ごしたかったのだろう。 「あー、えっと、ありがとう……」  酒を飲んだせいもあって頭が浮ついていた。俺も告白されるくらいの好意を向けられることがあったのか、という驚きと喜び。けれど純粋に嬉し

        • あなたに言えない

           好きだと気付いたのは、もう随分前だ。  彼か彼女がわからない彼に出会ったのは今からおよそ半年前、夏の暑さで皆クーラーの効いた部屋に引きこもり、重くて熱いゴーグルを被って涼みながら遠方の友人達と集まっている、いつも通り変わっているこのバーチャルの世界で、フレンドのフレンドとして挨拶をしたのが始まりだった。  いやーいつも暑いですね、なんて何気ない会話から、フレンドを含め普段やるゲームの話で盛り上がってフレンドを交換した。  彼とはバーチャルの世界でしか会ったことがない。  ケ

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        記事

          きみのことば

          "ことば"という単語の成り立ちを知っているかい?言うことの端と書いて言端(ことば)、言うことの葉っぱと書いて言葉(ことば)、端ではなく葉っぱで広まったのは、木々から生える葉のように広がっていくもの、だからだそうだ。けれど”言う”という漢字を使わないものもある。心を外に吐くと書いて心外吐(ことば)。君に今必要なことばはこの心外吐だ。君は今何を考え何を思っている?ことばというのは不思議なものだ。真実を伝えるものでもあり嘘を内包するものでもあり、自分の情動を揺さぶるものでもあれば他

          きみのことば

          線香花火

           この線香花火が落ちるまで、その間の時間は僕ら二人の、二人だけのものだ。だから僕はこの線香花火がなるべく長く火花が瞬いていて欲しいと願っていたし、彼女は多分、その火花が瞬いている熱さと外気の生温さとを比べて夏の終わりを感じていた。 『花火を見に行こう』というラインを送ったのはたまたま二人同じタイミングだった。天文学的確率というやつじゃないかと思ったが、考えることが似ている僕らのことだからあまり不思議なことではないような気がして、二人して笑うだけだった。  僕ら二人は人混みが

          線香花火

          誕生日の連句っぽいもの

          誕生日 灯る蝋燭の あたたかさ おめでとうという 言葉と共に 吹き消す火 立ち昇る煙 焦げた匂い 甘いケーキが 上書きし プレゼント 包み紙の中 当ててみて 君に笑顔を 届けるための 思い出と 想い繋いで 込めたもの 君に出会って 受け取れたもの たくさんの 優しさ君から もらったね こんなのでしか 返せないけど これからも 仲良くしたい 今よりも できればずっと 一緒が良いな

          誕生日の連句っぽいもの

          12月の誕生日

          サンタさんへ はじめまして。 はじめてお手紙を書きます。 毎年子供たちにプレゼントを配るお仕事、お疲れ様です。 子供たちの誰かは、サンタさんの姿を見たことがあるのでしょうか。 私は見たことがありません。 私は12月が誕生月で、正直あまりクリスマスと誕生日に良い思い出がありません。 何故か私のお父さんとお母さんは、誕生日とクリスマスが近いから一緒でいいよね、とまとめてプレゼントを渡してきて、皆が一年のうちに貰えるプレゼントの数より、私はいつもひとつ少なかったのでした。 サンタさ

          12月の誕生日

          ジャックオーランタンのいたずらな夢

          彼女のまつ毛が目に落とす影が人よりも一段と濃かったことを、今でも覚えている。 その日はハロウィンのお祭りで、町内の子供たちが町中の家を回ることになっていた。 お菓子を用意している家は玄関にカボチャの置き物を置いていて、その家々に、小学校5年生と6年生が中心となって、低学年の子供たちを引き連れて巡る。 もちろん子供たちは仮装をしていて、トリックオアトリート、と叫ぶのだ。 ピンポンとうちのチャイムが鳴ったので、渋々と僕はお菓子の袋を持って玄関へ向かった。 人と関わるのがあまり得

          ジャックオーランタンのいたずらな夢

          クセモノぞろいの友人たちへ

          拝啓、僕の最高に最強に個性的な友人様。 ご機嫌麗しゅう。そちらの天気など如何ほどだろうか。こちらは梅雨というのに雨はあまり降らず、クーラーが必要になるほど暑くなったかと思えば今度は涼しいくらいで温度差で体がバカになりそうだ。 さてこの度こうして筆を執ったのは他でもない。特別に伝えたいことがあるからだ――というわけでもない。 ただの気分だ気分。たまには畏まったことをしても良かろう。とはいえせっかくなので、日頃の感謝でも綴ろうではないか。 まずは先日の誕生会、ありがとう。

          クセモノぞろいの友人たちへ

          n+1番目の選択肢

          希死念慮を説明するとき私はいつも選択肢の話をする。 希死念慮を抱く人全員がそういうわけではないと思うが、死を意識している人間は意識していない人間に比べて選択肢が多い。その選択肢は常にそこに在って、選択できない状態だけれど、そこにあることに意味がある。通常の選択肢がn個。でもn+1個持っている人が、少なからずいる。 そのn+1番目の選択肢があるという事実だけで救われる人がいる。アマゾンの手芸用ロープのレビュー欄に「おまもりで持っています」という一文の多いこと。普段選択はしな

          n+1番目の選択肢

          僕と彼女

          「君は相変わらず物事を考えすぎるきらいがあるようだ」 久しぶりにうちへ帰ってきた彼女は、一人で二人掛けのソファーを占領しながらそう言った。くぁぁ、と欠伸をしてごろりと仰向けに寝転がる。 「君が考えなさ過ぎるんだ」 「私は私だよ下僕くん。とりあえず食事を用意してくれたまえ」 ふふん、と彼女は鼻で笑った。毛づくろいをしながらにゃおんと鳴き、ごろりとうつ伏せになる。僕はそんな彼女を横目で見ながら、お皿にじゃらじゃらとキャットフードを注いだ。 「君はいいな。気まぐれに生きられて」 「

          僕と彼女

          すぐそばにある死とその価値について

          先日知人が自殺未遂をしたらしい。 「今までありがとう」というテンプレ文が送られてきてその後電話に出ず、行ってみれば大量の錠剤の空とまるで眠るように寝転がっていた知人がいたそうだ。 結局飲んだ薬の量と成分が大したことなかったので命に別状はなく、死ぬこともなく、とりあえず入院という運びになった。 私は多少驚いたものの酷く冷静で、「この人が私より先に自殺しようとするとは思わなかったな」とやけに冷めた頭で思っていた。 私より先に周りの人が死ぬビジョンがまったくもって見えない。

          すぐそばにある死とその価値について

          しにたみくん

           しにたみくんは、いつも私の傍にいてくれる。  朝目が覚める。セットしたアラームが鳴る前に起きてしまって、のろのろと手を枕元のスマホに伸ばし、手に取ってアラームを解除する。はぁ、と欠伸ではなく溜め息をついて、私は起き上がる。  また〝今日〟が来てしまった。  いつもと同じ繰り返しの今日。さして変わることもない今日。布団の上でぼーっとしながら、空虚な頭の片隅で、絶望を感じている。そんなときしにたみくんは語り掛けてくる。彼はいつも私と同じ時間に目を覚ます。 「おはよう。今日も始

          しにたみくん

          生きさせられている

          最近生きさせられている、と感じる。生かされている、というよりは生きさせられている。 4月頃に闇闇な記事を投稿したが、その後なんだかんだでなんとかなってしまっている。 残念とまでは思わないが不思議でしょうがない。 特にここ最近、本当に最近、無茶苦茶な速度で展開が起きている。私の中で。神様的な存在がてめぇもうちょっとそこにいやがれとなんとかしようとしているかのように。 楽しいんだけど、楽しいから嬉しいんだけど、逆に疲れる。 死にたいと思う暇もなくなってけれどそこまで忙しい

          生きさせられている

          言の葉堂にようこそ

           この広い電子の世界の片隅に、その書店はあった。  見た目は小ぢんまりとしているが、入ってみると意外と広いことに驚く。左手の壁一面と三列綺麗に並べられた本棚が天井まで伸びていて、右手は小さなホールとなっている。ホールの奥にはカーテンがかかっているので、その裏にはステージがあるのだろう。入口から直線上にレジがあり、その奥には扉がある。おそらくバックヤードに通じる扉だと思われる。その突き当りを右に行くと階段があり、二階には小さな部屋がある。その部屋には店主のものと思しき小さなワ

          言の葉堂にようこそ