降谷椎

VRChatに生息するたまに考えたまに思いたまに物書く言葉を操る魔法使い。かもしれない。

降谷椎

VRChatに生息するたまに考えたまに思いたまに物書く言葉を操る魔法使い。かもしれない。

マガジン

  • LLVR

    仮想世界の中での愛のようななにかを描き出す物語

  • バーチャルにおける恋愛とその人間たちについて

    VRCHATを題材にした恋愛とかの有象無象

  • n + 1

    n+1関連のものを集めたもの(別名義も含む)

  • 小説とか

    書いた小説とかまとめ

  • VR関連小説

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言葉の魔法にかけられたいんだ

詩や小説を趣味や生業としている、降谷椎(ふるやしい)と申します。 普段はVRChatやTwitter(今はXだけど)に生息しながら、詩や小説を書いています。 書いたものはnoteやVRCのワールド「言の葉堂」に置かせてもらっています。 たまにVRCで活動されている方のキャッチコピーやイベント名、文章推敲のお手伝いなどをしているのですが、そこで言われたのが「言葉の魔法にかけられたい」でした。 以前から発表した詩や小説に対して「自分の言いたかったことを言語化してくれた」と言

    • #06 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

       恋愛って、なんだろう。  ぼんやりと、私の頭を撫でてくれている大きな手を見ながら思った。  アインさんの男性アバターは安心する。自分より大きな人に抱擁されているようで。でもそれはきっと恋人に感じるべき感情なんだろう。だからこれは、あまり良くない行為なんじゃないか。他人の好きな人が私を好いているような罪悪感。実際きっとアインさんはモテるんじゃないだろうか。多分、スリーさんとか、アインさんのこと、好きなんだろう。  そこで何もせず、というよりどうしていいかわからず、そのままの状

      • 虚構現実

        じわり とインクが紙に滲む ぼやけた輪郭の文字を書く 人の声を模した電子音 私を連れ去ろうとする ぽつり ぽつりと雨が降る インクがどんどん滲んでく 混じり合って重なり合って 境が曖昧になっていく 私の器に溜まっていく 私の器に響く音 あなたの器に溜まっていく あなたの器で響く音 変換された振動は わたしたちふたり 溶かしてく どろりと尾を引く 泥の沼 仮想の世界に沈むほど 世界は希薄になっていく ただの錯覚 ふたりの間が近づくほど 世界は偽物になっていく ただの幻想

        • #05 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

           バリスのアバターが、現実に比べると表情が乏しくて良かったと思う。彼女の辛そうな顔を、見ないですんでいたから。 「最後まで私のこと見てくれなかったね」  彼女の悲痛な叫びを押し殺して淡々と言葉を紡いだような声が、今でも耳に残っている。 「アイン、今までありがとう」  VRでの最初の彼女の最後の言葉は感謝の言葉だった。 「アインのおかげでここでの生活がとても楽しかった」  彼女の手が開き、それに連動して彼女の顔が笑顔になる。見慣れた笑顔だ。でもそれはなんだか歪んでいる気がした

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        記事

          #04 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

          「おつかれさまです」  外界に降っている雨の音が遮断された空間で聞こえてきた、その自分よりも少し高めの落ち着いた声が、嫌いだ。  おつかれ、とディーとカトルが返事を返す。ノルはそれに手を振って応えてこちらの輪の中へ入ってきた。 「お疲れさま、ノル」  アインの言葉を聞いてぎり、と歯を食いしばる。ちゃん付けから呼び捨てへ昇格した彼女が、心底恨めしい。アインはあたしのことも呼び捨てで呼んでくれる。だからこそ、そのポジションに上がってきてほしくなかった。 「……おつかれさまです」

          #04 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

          #03 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

          「えーすごい! そうなんですか~」  女って大変だな、と思う。こんな男の相手なんて。 「私そういうの詳しくなくて~」  だって中身が男だとわかっていて、かわいいアバターでボイスチェンジャーで高い声にしていると知っていてこれだ。 「ふふふ。ありがとうございます~」  だから、面白いんだけど。 「いやー女の子って大変だねー」  ありがたいことに私のボイチェン技術は高いらしい。素で女の子と思われていることもあったりして、そういうのを聞くとしてやったりと思うのだ。外見はバリスでは

          #03 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

          #02 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

          「最近アインのやつあの子とばっか喋ってる」 「やきもちか?」 「いや別に、そんなんじゃないし」  そう言うスリーの顔はデフォルトの表情のままだが、声色がどう聞いても口を尖らせていた。普段からジト目のせいでずっと拗ねているように見える。頭から生やした羽根はスリーが俯くたび下を向く。傍から見てスリーがアインのことを好ましく思っているのは火を見るよりあきらかだったし、アインが初心者連れてきたと言ってノルちゃんを紹介したときなど普段よりも口数少なにさっさと早めに落ちてしまった。スリー

          #02 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

          #01 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

           今年はやったことのないことをやってみよう、と思い、年末のボーナスで購入したのは最近話題のVRキット。寒さの厳しくなってきた一月、私は四季などないVRの世界へと踏み入れた。 VRヘッドセットを被り勇気を出してこのVRのゲーム、〝Virtual Realm Space〟(通称VRSまたはバリス)をはじめてみたものの、早々にそれまでのゲーム機とは全く違う操作感と視界に戸惑うことになった。とりあえずチュートリアルが書かれている場所に来たのだが、専門的な用語が多く固まってしまった。

          #01 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

          #0 a Like Love within a Virtual Realm

          レンズの向こうは知らない世界だ 電子の海に浮かぶ数々の世界 寄せては返す波の音とズレながら流れる海と砂浜 土の匂いも風の気配も漏れ注ぐ木漏れ日もない木々の山 無機質な空気が流れ地平線が近い高層ビルの隙間 隣の部屋の音がしない孤立感が強調されたアパートの一室 まるで騙し絵のようなあり得ない形の建造物 仮初の現実というには現実離れした世界 視覚と聴覚だけで捉えるにはそれで十分なんだろう 触っても押し返してこない壁 湯気の出ないできたての料理 頭をぶつけるほど

          #0 a Like Love within a Virtual Realm

          一緒にいたいから

          「え?!有希別れちゃったの?!」  キン、と親友の高音が鼓膜に刺さった。幸運にも私はこの喫茶店の隅で壁を向いていたから、何人が今の声に反応して振り返ったか見えていない。 「どうしたの。良い雰囲気だったじゃない」 「……なんか」 「うん」  私は膝の上の手を握りしめる。 「私、が、特別だって、思えなくて」 「……あー」  彼は来るもの拒まず去るもの追わずのスタンスだった。だからきっと付き合ってくれた。でも、それ以上にはなれなかった。 「他の女の子と変わらず遊ぶし、通話するし、そ

          一緒にいたいから

          こんな、ゴミと絶望だらけの部屋なのに

          「ねえ、ふたりで抗ってみない?」  最近流行りのアニメのセリフだ。今の状況に、今の生活に、今の世界に、抗う。ここでは僕らふたりはまだ子供のようだった。実年齢など関係なく、この子供っぽさを捨てきれずにいる限り、僕らはフィクションの主人公になり得る存在だ。そんな気がしていた。  ヒロインは言う。ふたりで抗ってみない?  主人公は何も言わず、彼女の手を握る。  感触のないこの世界で、僕は彼女の手を握る代わりに頭を撫でた。視界に手が入るのでこちらのほうがわかりやすいと思って。 「ひと

          こんな、ゴミと絶望だらけの部屋なのに

          「好きです」

          「好きです」  そう伝えてくれた彼女の手は、コントローラー越しにわかるくらいに震えていた。  声ももちろん震えていて、マイクが不調なのではないかと思ったほどだ。  多分それは自分が今この状況をなんだか現実感なく受け止めきれてないからで、機器の不調だとかそういった理由付けをしてこの場をやり過ごしたかったのだろう。 「あー、えっと、ありがとう……」  酒を飲んだせいもあって頭が浮ついていた。俺も告白されるくらいの好意を向けられることがあったのか、という驚きと喜び。けれど純粋に嬉し

          「好きです」

          あなたに言えない

           好きだと気付いたのは、もう随分前だ。  彼か彼女がわからない彼に出会ったのは今からおよそ半年前、夏の暑さで皆クーラーの効いた部屋に引きこもり、重くて熱いゴーグルを被って涼みながら遠方の友人達と集まっている、いつも通り変わっているこのバーチャルの世界で、フレンドのフレンドとして挨拶をしたのが始まりだった。  いやーいつも暑いですね、なんて何気ない会話から、フレンドを含め普段やるゲームの話で盛り上がってフレンドを交換した。  彼とはバーチャルの世界でしか会ったことがない。  ケ

          あなたに言えない

          きみのことば

          "ことば"という単語の成り立ちを知っているかい?言うことの端と書いて言端(ことば)、言うことの葉っぱと書いて言葉(ことば)、端ではなく葉っぱで広まったのは、木々から生える葉のように広がっていくもの、だからだそうだ。けれど”言う”という漢字を使わないものもある。心を外に吐くと書いて心外吐(ことば)。君に今必要なことばはこの心外吐だ。君は今何を考え何を思っている?ことばというのは不思議なものだ。真実を伝えるものでもあり嘘を内包するものでもあり、自分の情動を揺さぶるものでもあれば他

          きみのことば

          線香花火

           この線香花火が落ちるまで、その間の時間は僕ら二人の、二人だけのものだ。だから僕はこの線香花火がなるべく長く火花が瞬いていて欲しいと願っていたし、彼女は多分、その火花が瞬いている熱さと外気の生温さとを比べて夏の終わりを感じていた。 『花火を見に行こう』というラインを送ったのはたまたま二人同じタイミングだった。天文学的確率というやつじゃないかと思ったが、考えることが似ている僕らのことだからあまり不思議なことではないような気がして、二人して笑うだけだった。  僕ら二人は人混みが

          線香花火

          誕生日の連句っぽいもの

          誕生日 灯る蝋燭の あたたかさ おめでとうという 言葉と共に 吹き消す火 立ち昇る煙 焦げた匂い 甘いケーキが 上書きし プレゼント 包み紙の中 当ててみて 君に笑顔を 届けるための 思い出と 想い繋いで 込めたもの 君に出会って 受け取れたもの たくさんの 優しさ君から もらったね こんなのでしか 返せないけど これからも 仲良くしたい 今よりも できればずっと 一緒が良いな

          誕生日の連句っぽいもの