#0 a Like Love within a Virtual Realm
レンズの向こうは知らない世界だ
電子の海に浮かぶ数々の世界
寄せては返す波の音とズレながら流れる海と砂浜
土の匂いも風の気配も漏れ注ぐ木漏れ日もない木々の山
無機質な空気が流れ地平線が近い高層ビルの隙間
隣の部屋の音がしない孤立感が強調されたアパートの一室
まるで騙し絵のようなあり得ない形の建造物
仮初の現実というには現実離れした世界
視覚と聴覚だけで捉えるにはそれで十分なんだろう
触っても押し返してこない壁
湯気の出ないできたての料理
頭をぶつけるほどの低い天井
抱きしめられない人形
こぼれない水
撫でられない君の顔
そんな世界で私達は夢見ている
現実のような非現実を夢見ている
君の顔が見える
君の姿が見える
君の姿が映った鏡が見える
鏡に映った自分が見える
壁が見える
天井が見える
整頓された家具が見える
ガラスのような窓が見える
夜空が見える
流れ星が見える
でもこれは嘘だ
視覚でつく大きな嘘
私達はあえて騙される
その嘘を享受し私達はそこに生きている
そう
生きている
その嘘の世界で
みんなひとりで
生きている
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