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航海の安全を見守る船の"目"、世界トップシェアを誇るFURUNOのレーダーに迫る!

私たちFURUNO社員は一つのクセがあります。
それは"船を見るとついつい最初にレーダーを見てしまう"ということ。
そして、そのレーダーがFURUNO製だったらちょっと幸せな気持ちになります。
「商船向けレーダー全世界シェア44% (2021年度 当社調べ)を謳う世界トップメーカーとしてのプライドがそうさせているのかもしれませんね。
だからこそ、船の上でFURUNOロゴが入ったレーダーがクルクルと回っているのを見ると誇らしい気持ちになるのも事実です。
今日はそんなレーダーのお話しをさせてください。

レーダーってそもそも何?

レーダーは英語でRadio Detection and Rangingといいます。
太字のところをとってRADARです。
電波をターゲットに向けて発射し、その反射波を捉えることで、ターゲットまでの距離や方向などを測る技術です。
原理はやまびこと同じですね。
やまびこは音を使いますが、レーダーでは電波を利用します。
送信した電波が返ってくるまでの時間を測定して、距離を算出しています。

レーダーの原理

なおレーダーには船舶用の他、気象レーダーや航空機管制用のレーダーがあります。自動車のスピード取り締まり機や野球のスピードガンなどもレーダーの一種だったりします。

船のブリッジに備えられたレーダー、存在感もあってカッコいい

レーダーって必要なの?

その答えは"YES"
安全な航海にはレーダーは欠かせないと考えています。なぜなら船は大海原という大自然を相手にしているからです。

例えば霧が発生したときの海の写真をご覧ください。

数百m先くらいまでしか見えていないのがわかると思います。
船はとても大きくて重たく、タイヤがあるわけではありません。そのため、急に曲がれませんし、急に止まれません。
時速40kmの車だと停止するのに20mくらい必要だそうですが、タンカーのような大型貨物船だと停止するまでに数キロ、時間にしても数十分かかってしまいます。

続いて夜の海をご覧ください。

都会の夜空…ではありません。
わずかに光っているのは遠くの漁船の光なのかなんなのか、もはやそれすらもわかりません。
しかしレーダー画面上だと次の図のように、他の船の場所や動きをリアルタイムに見ることができます。
止まっている船なのか、近づいているのか遠ざかっているのか、いろんな情報をレーダー画面から読み取り、安全な航路をとることができます。

円の中心が自分の船、青い尾引きで船の動向がわかります

安心・安全な航海に必要不可欠な機器、それがレーダーなのです。

FURUNOはレーダーの歴史の何を変えたの?

レーダーの技術はかなり古く、1904年にドイツの発明家により生み出され、その時は5kmくらい離れた船舶を探知していたのだそう。
そこから第二次世界大戦時中にイギリスなどで大きく技術が向上し、実用化されました。

FURUNOは?というとレーダーではかなり後発だったようです。
そこからおよそ50年後の1957年、FURUNOはイギリス・デッカ社製レーダーの日本国内サービスを受け持つことになりました。
最初はオリジナルではなく、外国製のレーダーを日本国内でメンテナンスしていたようです。

ただ、なんでも自分達でやりたいエンジニア魂が黙っていませんでした。
いつまでもレーダーのサービス業務だけでは満足できず、国産の小型レーダーの開発に着手するようになったそうです。
そしてわずか2年後の1959年には第一号機を販売することとなりました。

しかしここに大きな課題がありました。
それはアンテナの重さ
当時のレーダーは大きな反射器のついたパラボラアンテナで、アンテナだけで60~70kg。
さらにそれをクルクルと回すためのギアやモーターが必要で、なんと全体では200kgもの重さになっていました。
このアンテナを軽くしないと、小型の船には載せられません。

そこで海外の文献などを徹底的に研究し、ピルボックスアンテナという当時あまり世界でも使われていなかったアンテナを採用することになりました。
その結果、1号機販売から3年後の1962年、
18kgという軽いアンテナを使った超軽量レーダーを販売。
世界で初めてレーダーの軽量化・小型化を実現するに至りました。

小型化国産レーダー1号機を搭載したパールクイーン号(三菱造船 下関)
開発された18kgのピルボックスアンテナ採用の軽量レーダー

その後、レーダーのアンテナはスロットアンテナに変わり、本体もさらに小型化。
当時は画期的なことで国内の小型漁船だけでなく、全世界に輸出されるようになりました。
そして1977年には米国海洋電子機器協会(NMEA)にて、イギリス・デッカ社を抜き、船舶用レーダー部門で最優秀メーカー賞を受賞
1978年にアメリカ、翌年にはイギリスに子会社を設立し、本格的な海外進出を始め、現在の地位を確立するに至りました。

より小型化したスロットアンテナ式レーダー、現在の形とかなり近い

そこからさらに50年、今のレーダーは?

船舶用レーダーの役割は海難事故の未然防止です。
そのためレーダー画面を見た船の操縦者がいち早く危険に気づけること、適切な回避行動ができることが重要です。

そのため現在の船舶用レーダーでは"ただターゲットが見える"だけではなく、"より状況がわかる"機能が搭載されています。

ターゲットアナライザーᵀᴹの画面イメージ(DRSシリーズ)

例えば"ターゲットアナライザーᵀᴹ"という機能を搭載したレーダーでは
移動しているターゲットが自船に対して相対的に近づいている場合は赤く、その他の船は緑で表示します。カラーで危険度がわかるようになっているので、赤い船に特に着目して操船することでより安全に運航することができますね。

さらにそれを発展させたような機能も登場しました。

"リスクビジュアライザーᵀᴹ"という名前をつけたこの機能は「他船と衝突する可能性がある場所」を操船者に伝えることができます。
つまり「このエリアは危ないぞ!近づくな!」と知らせることができますね。

リスクビジュアライザーᵀᴹのイメージ
赤塗りの場所は衝突する可能性あり! 絶対に避けなければいけない

他の船を見るだけじゃない、いろんなレーダー

FURUNOのレーダーの中には他の船を見る以外にもさまざまな場面で活躍する機器もあります。
その代表的なものが海鳥レーダーᵀᴹです。

なんで鳥を見るの?というと、海の中の食物連鎖が関わっています。
大型の魚は小魚の群れを徐々に海面付近に追い込み、逃げきれなくなったところを捕食します。
すると同時に鳥たちも空から小魚を狙って集まってくるのです。
上からも下からも追い込まれる小魚の立場にしてみたらたまったもんじゃありませんね。
つまり鳥の群れを見つけることができたら、その下には大型の魚が集まっている可能性が高いということになります。
目視では見えない遠くの鳥を映し出す海鳥探知の技術は現代漁業には欠かせないツールとなっています。

他にも氷の割れ目を見つけるアイスレーダーは、北極など海面が氷に覆われている地域で既に氷が破られたルートを探すことに活用されています。

砕氷船(イメージ)
アイスレーダーの映像例

また、海難事故により海面に漏れ出たオイルを検出するオイルレーダーも、航海用レーダーの技術を応用しています。
自動的にオイル流出の範囲を特定し、モニターに表示することで、迅速なオイル回収を支援しています。

オイル回収船(イメージ)
オイルレーダーの映像例

今回はFURUNOの主力製品、レーダーをご紹介しました。
「世界中すべての船と、その船に乗る人々に、最大限の安全と安心を」
これがFURUNOのメーカーとしての願いであり、信念でもあります。これからもFURUNOのレーダー技術は進化を続けていきます。

皆さんも港を訪れたときは少し顔を上にあげていただいて、船の上で頑張って働いているレーダーを見てもらえると嬉しいです。

執筆 高津こうづ みなと
監修 久保田 有吾

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