建設業界のDX化へ、無線技術者が挑む"社内ベンチャープロジェクト"に迫る!
「建設DX」
皆さんこの言葉をお聞きしたことはありますでしょうか?
今やあらゆる産業でこの"DX=デジタルトランスフォーメーション"が叫ばれる中、建設業界は特にDXへの注目度が高い分野です。
この業界では現場の人手不足、職人の高齢化・慢性的な長時間労働と解決すべき課題が散見しており、DXによる省人化、業務効率化が期待されています。
フルノではこれらの課題解決に向けて「建設DX」を実現するプロジェクトがスタート。そのプロジェクトの発起人であり、現在建設テック分野の責任者である石野祥太郎さんにプロジェクトについて、そしてフルノの新規事業のリアルについてお伺いしました。
フルノでは2018年に新経営ビジョン「FURUNO GLOBAL VISION "NAVI NEXT 2030"」を策定しました。このビジョンには2030年度に連結売上高における新規事業構成比率を30%にすることも含まれています。フルノの中で"新規事業"という四文字の風が吹き始めた直後に石野さんは新規事業のアイデア募集に名乗りを挙げました。
石野さん「入社して最初の頃はETC車載器などの開発を行っていました。その中で無線通信という技術に興味を持ち、無線通信を活用した事業を行いたいと考えて研究部に異動しました。私自身、入社時から陸上の分野に関わっていたこともあり、"陸上の新規事業を作る"という想いが強いのかもしれません。研究部に異動するときも"100億円の事業を作る"という想いを胸に異動しました。
新卒のころから”フルノの事業規模を3倍にする!事業の柱を何本も作る!”と公言していましたし、フルノの持つ技術やリソースを活用して、新市場でのビジネス拡大をしていきたいと考えていました。」
エンジニアでもある上でビジネスパーソンでありたいと語る石野さん、技術は研究するだけではなく製品やサービスに繋いでいくという考え方を大切にされています。
製品は建設DXの入り口、その先のサービスへと繋げるミッション
研究部に異動し、無線通信の研究を行いつつ、その技術を活用できる業界を探している中で建設業界に出会いました。石野さんのチームでは現在、建設現場に特化したアクセスポイントを商材として取り扱っています。
石野さん「建築現場は屋外であったり、様々なものが剥き出しだったり、実際の建物の環境とは大きく異なります。そのため従来のアクセスポイントでは配線を含め設置するだけでも難しいという課題があります。
さらに雨風が当たったり、粉塵が多かったりと過酷な環境で故障しやすい。
そこで『海上という過酷な環境で動く製品を作ってきたフルノのリソース』と『自身が培ってきた無線通信の技術』を掛け合わせることで、これらの課題解決に貢献できると考えました。」
この掛け合わせから高層ビルや地下、トンネルなどの利用に特化したアクセスポイントのラインナップを揃えていく建設テックチーム。
さらにこれらのアクセスポイントは誰でも簡単に使えるというのがウリとのこと。しかし石野さんはあくまでそれは建設DXの入り口でしかないと話します。
アクセスポイントで業務効率や短工期化に貢献することでまずは建築関係者にフルノの名前を知っていただき、その先にあるサービスもご利用いただくことで建設DXを広げていきたいと意気込みます。
だからこそ啓蒙活動も大事で、それも自分たちのミッションだと石野さんは言います。
石野さん「業界のキーパーソンとタッグを組むなどして啓蒙活動を行なっています。最近ではウェビナーなどを開いたり、建設DX Journalというwebメディアを連載したりと製品開発以外のことも積極的にやっていますね。
"今これが必要だ"と思ったらすぐアクションする、このフットワークの軽さも新規事業に必要な動きなんじゃないでしょうか。」
苦労の先に良い成果がある=ポジティブな苦労
現在、石野さんのチームには4名のフルコミットメンバーが在籍しており、日々現場に赴いて、お客様への技術提案および現場課題のヒアリングを行っています。12月初旬には展示会も控え、勢いがあるように見えますが決して順風満帆ではなかったそうです。
うまくいかないことも多い中、メンバーのモチベーションを支えつつ、経営層の期待にも応えていかなければならない立場の石野さん。
その心中はいかがなものかお伺いしました。
石野さん「いろんな意見をいただく中で時には落ち込むこともあります。経営層は売上や成長率を見ていると思うので、私からすると経営層=投資家のイメージですね。そのため短期の成功だけではなく、ビッグピクチャーを描くということも私には求められていると思いますね。
その中で自分の精神衛生を保つことも結構大事です。私の保ち方は社外の方々、特に自分と同じようにチャレンジしている方と話すことなんですが、そういった方々も同じように苦労して努力している、していない人はいない。そう思うとまた頑張ろうと気合いが入りますよね。
この苦労の先に良い成果が生まれるはず、それはポジティブな苦労なんだと思っています。」
新規事業を成功させるために大切な2つの考え方
新規事業を成功させるために石野さんには大切にしている2つの考え方があります。1つはメンバーの成長、もう1つはファン作りとのことです。
具体的に内容を伺ってみました。
石野さん「まずメンバーの成長についてですが、新規事業をする上で"人が大事"ということは必須の考え方だと考えています。事業の成長と人の成長が連動しているようなイメージです。
私は責任者としてメンバーに仕事を作っていくことが求められます。しかしそれがただの作業だとメンバーのモチベーションに繋がらず、事業成長の加速度は上がりません。そのため私の中では"仕事を作る=活躍の機会を作る"だと考えています。
だからこそメンバーにはどんどん現場に出てもらいたいと思っています。いろんなお客様に会う中で課題も感じるでしょうが、良い反応を貰えることも多いです。そういったお客さんとの一つ一つのコミュニケーションがモチベーションに繋がると思っています。
苦労もありますが、クリアしたときに自己効力感が高まります。どんどん"できない"と思っていることにもチャレンジしてもらうことで私含めみんなで成長していきたいですね。」
石野さん「もう一つはファン作りです。新規事業を進めていく中で、"技術がいい、機能がいいというだけでは製品は売れない"ということを日々実感しています。その製品を売ってくれる代理店様やサポートしてくれるベンダー様、また使ってくれているお客様の声が次の商機を生み出してくれていることに気付きました。
ついつい他社よりも性能が良い=売れると考えがちですが、新規事業においてはそれだけでは足らないなということです。」
新規事業が柱の事業になりうるためにはファンや応援してくれる仲間、”フルノが好き”と言ってくれる人を増やすことが重要だと石野さんは考えています。
石野さん「我々の製品を気に入ってくれたエンドユーザー様が『フルノのこのサービスがいいよ』と周りに紹介してくれる、そんな流れも生まれてきています。とってもありがたいですよね。ファン作りも大切にしながら事業を推進していきたいです。」
そんなファン作り、認知度向上の一貫として、超高層ビルやタワーなどの非常階段を駆け上がり到達タイムを競い合う「バーティカルランニング(階段垂直マラソン)」にビル建設現場向け無線LANシステムを提供し、中継のための安定的な無線LAN環境を構築するなど、活躍の場を広げています。
最後に石野さんの目標を伺いました。
石野さん「フルノでチャレンジする人を増やしたいですし、そんな人たちを応援したいですね。そのためにはまず私が成功事例を作らないと!と思っています。またメンバーにも『新規事業はやりがいがあるよ!』と感じてもらえるように進めたいですね。それがフルノ全体にいい影響を与えられると思います。
私個人としては将来的には事業の柱を複数作るというところは変わっていません。新規事業を成功させたノウハウを活用して、また新しいチャレンジをしていきたいですね。」
取材 曽田 竜輔
執筆 高津 みなと
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