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読後感を保証するコラム

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ハッピーエンド至上主義者による、絶対上向きにおわる話。後味だいじ。いちばんだいじ。
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#思い出

アンドロイドは電気羊の夢を見る。人間にもスリープボタンがあればいいと、Siriはいう。

アンドロイドは電気羊の夢を見る。人間にもスリープボタンがあればいいと、Siriはいう。

わたしは妄想族である。彼我のさかいを、意味なくこえる。ひんぴん、時空のはざまに漂いでる。
いまは特に、かぜをひいているので、朦朧としている。
その茫漠に、おぼろに浮くものがある。
 
 目のまえに、おりたたんだハガキがみえる。シャーペンの文字がこすれて流れている。トメやハネがしっかりでている。これは知っている。高3のときのだ。
字を読もうと思うと、ひとりでに浮いてきた。ひらがなのかたちが見える。

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口紅ひとつ

口紅ひとつ

うちは自営業なので、おそうじのおばちゃんがいた。
高校生のころだったか、あたらしくきたおばちゃんは、ほぼ初対面で、「離婚したの。熟年離婚。いま流行りの」という。
それまで専業主婦で、子はなく、自分の葬式費用くらいはためたくて、きたらしい。
 
自分の葬式費用!
十六やそこらの高校生には、なかなかパンチのあるひとことだった。
 
はじめての給料日らしかった。
おばちゃんは、給料袋からさっと千円札を二

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