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古賀史健

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古賀史健の note、2018年以降のぜんぶです。それ以前のものは、まとめ損ねました。
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2021年9月の記事一覧

等身大でいることの大切さ。

等身大でいることの大切さ。

インタビューについて考える。

若いころのぼくもそうだったのだけど、ライターのなかには「自分をかしこく見せたい」との欲求を抱えた人が少なくない。これまた若いころのぼくがそうだったように、自らの出自や年齢、置かれた立場などになんらかの劣等コンプレックスを抱えた人ほど、自分をかしこく見せたがる。

それで、取材の現場でいかにも「かしこそうな質問」をする。妙な専門用語を交えたり、憶えたてのカタカナを使っ

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わたしが駄洒落を言うときは。

わたしが駄洒落を言うときは。

思えば自分には、いくつかの駄洒落リストがある。

たとえば寒風吹きすさぶ冬の日につぶやく、「寒みぃ〜・デービス・ジュニア」のひと言。ロック音楽が好きな同世代の多くがそうであるように、中学・高校時代まではぼくも「寒みぃ〜・ヘイガー」を使っていたのだけど、「〜デービス・ジュニア」のほうがお洒落である気がして現在は、積極的にこちらを使っている。

あるいは、眠気を我慢して原稿に向かっているときは、

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タイトルは書かない。

タイトルは書かない。

不思議なものだよなあ、と思う。

いまでもけっこうその傾向があるのだけど、ぼくは年長者の友だちが多い。友だちなんてとんでもない、もちろん先輩だ。そしてもう何十年と会っていない先輩も、大勢いる。それは中学・高校時代の部活の先輩に限らず、たとえばバイト先の先輩だったり、なんとなく知り合ってなんとなく遊んでいた先輩だったり、勤務先の先輩、年長の編集者、などなどだ。

二十年や三十年と会っていないのだから

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休息は充電ではなく。

休息は充電ではなく。

ひさしぶりに休んだ。

7月に「バトンズの学校」がはじまって以来、フィードバックの鬼と化し、一日も休むことなく受講生のみなさんの課題原稿と向き合ってきたのだけれども、しかもそのペースでやりながらフィードバックが遅れまくっているのだけれども先週末、ついにみずから休日をとった。ソファで犬と昼寝して、はじめてのレシピでごはんをつくり、買ったまま放置されていたブルーレイを観て、湯船でゆっくり入浴をした。

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復活した風物詩。

復活した風物詩。

みんなが団子を食っていた。

今週の火曜日、中秋の名月におけるツイッターのタイムラインである。これは非常におもしろい現象で、たとえばぼくがひとり暮らしをしていた二十代のころ、中秋の名月を意識する機会などほとんどなかった。その日にみんなが団子を食っていたのかどうかも知らないし、少なくともぼくは食おうと思わなかった。知らないのだから。きょうが中秋の名月であることさえも。

けれどもソーシャルメディアが

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とりとめのない、きのうの話。

とりとめのない、きのうの話。

きのうのこと。

帰宅した深夜、駆け寄ってきて勢いよくジャンプした犬から、ほわっといい匂いがした。聞けば、シャンプーに行ってきたのだという。清潔感のある、フローラルというよりはミント系の、いつまでも嗅いでいたい香りだ。うちの犬はおよそ月に一度のペースで、シャンプーに行っている。そしてシャンプーの香りは3〜4日ほど彼の被毛に漂い、やがていつもの彼に戻る。人間よりもずっと鼻が利くはずの彼は、シャンプー

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これが終わったら、からっぽになるだろう。

これが終わったら、からっぽになるだろう。

ある意味、手探りではある。

先週の土曜日、「バトンズの学校」第4回講義が終了した。全8回の講義なので、折り返し地点を過ぎたところだ。当初の目論見では、夏のうちにビアガーデンかどこかで懇親会と称し、飲み会を開く予定だった。けれども飲み会を開くどころか対面での講義もむずかしい状況となり、第3回と第4回はリモート開催を余儀なくされている。受講生の方々のリアクションがわかりづらいのと、ぼく自身がリモート

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わたしの知らない世界。

わたしの知らない世界。

アレルギー性鼻炎。

子どものころにそう指摘されて以来、「まあ自分はそういう人間なんだな」くらいに受け止めて過ごしてきた。1980年代に放送されていたテレビドラマ『あばれはっちゃく』のオープニングテーマに

♪ あばれはっちゃく 鼻づまり
♪ おいらは 花のおちこぼれ

と聞こえる歌詞があり、勝手に親近感をおぼえていたのだけれど、正しくは「♪ あばれはっちゃく 鼻つまみ」だったことをのちに知り、ひ

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あこがれと尊敬の違いについて。

あこがれと尊敬の違いについて。

今年は、大谷翔平さんのことを考える機会が多い。

野茂英雄さんのことばかり考えていた時期もあるし、なにかにつけて中田英寿さんのことを考えていた時期も、イチローさんのことばかり考えていた時期もある。時代を代表するアスリートがいると、その人を起点にいろんなことを考えることができる。もちろん「時代を代表する経営者」や「時代を代表するアーティスト」でそれをやってもいいのだけれど、ぼくの場合はスポーツ選手が

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不幸せの黄色い信号。

不幸せの黄色い信号。

信号機を発明した人は偉いと思う。

歩行者、自転車、自動車、バイク。それぞれに関する交通ルールを整備した人たちも大した秀才だけど、やはり驚くのは信号機だ。なにがすごいって、黄色信号である。赤でもない、青でもない、「そろそろ赤になるぞ、気をつけろよ!」の黄色信号。これがあるおかげで防げた事故は、数えきれないほどあるだろう。というか、仮に信号が赤と青の二色で、点滅という妙技もなかったとしたら、あらゆる

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めんどくさいを乗り越えて。

めんどくさいを乗り越えて。

この先どんな条件が整ったとき、自分はマスクを外すのだろう。

簡単なようでいて、むずかしい問いだ。これは完全に想像でしかないのだけれど、おそらく日本において「もうマスクは不要です!」の宣言が出されることはないと思う。そもそも一部の国のように「義務付け」されていたわけでもないので、「解除」の宣言自体が出しにくい。さらにまた、安全よりも安心が重視される国民性を考えると、どの段階になっても「危険だ!」を

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やったもん勝ちの世界で。

やったもん勝ちの世界で。

やってみなくちゃ、わからない。

一般にこれは「まだやっていない段階」で発せられることばである。なにかをはじめようとは思いながらも、あんなリスクやこんなリスクが浮かんでくる。とってもこわい。うまくできるかわからない。……といったぐずぐずを抱えている人に対して、「案ずるより産むが易し」的な文脈で誰かが言う。「やってみなくちゃ、わからない」と。要するに、やれよと。

考えてみれば、ぼくのやってる仕事の

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カウントダウンで考える。

カウントダウンで考える。

一週間が早い。驚くほど早い。実際にいま、驚いている。

しかしながら、いざ今週の月曜日にやったことを思い返すと、ずいぶん昔のことのように感じられる。今週の月曜日、ぼくは「バトンズの学校」の第2回フィードバックを全員分(当初の期限をずいぶん過ぎた上で)戻し終えたのだった。ああ、なんだかもう数週間前の話のようだ。

つまり、ぼくの言う「一週間が早い」とは「あっという間の一週間だった」との振り返りではな

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わたしが風邪を引く理由。

わたしが風邪を引く理由。

真剣に衣替えを考えるべき時期なのだろう。

風邪を引いてしまった。熱もなく、喉の痛みもまったくなく、ただ鼻がずるずるになる典型的な初期症状。普段であれば花粉の飛散も疑ってみるところだけれども、本日の東京はしっとり雨模様であり、やはり風邪なのだろう。そろそろ本気で衣替えに着手せねばならぬようだ。

いちおうわが家には、クローゼットがある。春夏秋冬すべての服が、そこに収まっている。なので大々的な衣替え

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