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復活した風物詩。

みんなが団子を食っていた。

今週の火曜日、中秋の名月におけるツイッターのタイムラインである。これは非常におもしろい現象で、たとえばぼくがひとり暮らしをしていた二十代のころ、中秋の名月を意識する機会などほとんどなかった。その日にみんなが団子を食っていたのかどうかも知らないし、少なくともぼくは食おうと思わなかった。知らないのだから。きょうが中秋の名月であることさえも。

けれどもソーシャルメディアが生活に溶け込んだ現在、「本日は中秋の名月である」との情報は、ほとんどかならず飛び込んでくる。多くの人が団子の写真をアップし、食った、うまいぞ、風流だ、といった話をしている。見ればこちらも食いたくなるし、「おれも食ったぞ」を言いたくなることだってあるだろう。

こうして現在、平成の黎明期に廃れかけていたさまざまな「風物詩」が復活しつつあるように思える。ちょっと前で言えばキンモクセイの香り、いまで言えばサンマの水揚げなどがそうだ。

で、思ったのだけど、金曜ロードショーでのジブリ映画。みんなが実況するようにタイムライン上であれこれと語り合う、トトロや魔女の宅急便。仮に風物詩を「いまを共有し、いま生きていることを慈しむための装置」と定義するのだとした場合、あの金曜ロードショーのジブリ映画もまた、風物詩と言えるのではないか。あるいはサッカーW杯の日本代表戦なんかも。

ちなみにわたしは今年、団子を食いませんでした。団子どころか月を見上げる余裕さえないくらい、仕事に追われておりました。来年こそは、うまい団子の写真をアップできる男になりたいと思います。