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古賀史健

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古賀史健の note、2018年以降のぜんぶです。それ以前のものは、まとめ損ねました。
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2020年9月の記事一覧

人生が変わるとは、どういうことか。

人生が変わるとは、どういうことか。

人生が変わるとは、どういうことか。

たとえば、本好きの人たちは「人生を変えた一冊」を語る。映画好きな人たちは「人生を変えた一本」を語る。音楽好きには「人生を変えた一枚」があり、ゲーム好きには「人生を変えた一本」があったりする。

あるいは、人生を変えるものとして、人との出会いを挙げる人も多いかもしれない。恩師、親友、先輩、パートナー。あの人との出会いが人生を変えてくれたと語るのかもしれない。

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あの子らは、元気に暮らしているだろうか。

あの子らは、元気に暮らしているだろうか。

「こら」ということばが好きだ。

コラージュのコラではなく、叱責の「コラッ!」でもなく、炭酸飲料のコーラではもちろんなく、子どもの複数形としての「子ら」。しみじみとした情感が、このことばには漂う。

たとえば、「あの子は元気に暮らしているだろうか」という一文。ここにも一定の哀愁はあるのだけれど、複数形で「あの子らは元気に暮らしているだろうか」とすると、なんだかそれだけで涙がにじむ。夕暮れのなか、ち

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飲みに行こうよ、が含むもの。

飲みに行こうよ、が含むもの。

ジャケ買いするだけして、まだ読んでいないのだけれど。

タイトルの強さ、帯に入った(赤ら顔の)写真のすばらしさ、そしてもはやビジネス書とは思えない帯コピーにやられ、発売直後についつい衝動買いした本である。

いや、まじめな話。

ぼくら「飲みに行こうよ」って言うじゃないですか。

それは「アルコールを摂取しに行こうよ」じゃないですよね。「話そうよ」だったり、「聴いてよ」だったり、「聴くよ」だったり

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おれもブブカのようにきっと。

おれもブブカのようにきっと。

セルゲイ・ブブカが好きだった。

80年代後半から90年代前半にかけて活躍した、ウクライナの棒高跳び選手である。カール・ルイスも、ベン・ジョンソンも、フローレンス・ジョイナーも、マリオン・ジョーンズも好きだったけれど、いちばん好きなのは断トツでセルゲイ・ブブカだった。

その「好き」はちょっと、室伏広治さんへの「好き」に似ている。

多くの日本人がそうだと思うけれど、ぼくは室伏広治さんを通じてハン

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本日の大事な大事な収穫。

本日の大事な大事な収穫。

もう、いまのうちに書いておこう。

今月末からひさしぶりに、犬と旅行する。近県の「犬が泊まれる宿」に、ただ出かける。向こうには iPad しか持っていかない。メールチェック程度はするものの、基本的に仕事はしない。ボール投げをしたり、散歩をしたり、現地のおいしいものを食べたり、ぐうぐう一緒に昼寝するだけの非生産的な時間を、存分にたのしむ。

ということは、だ。

今月中に原稿を、書き上げなければなら

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もうシャワーじゃない。

もうシャワーじゃない。

そろそろ湯船に入る時期だ。

やたらと暑かったこの夏、ぎりぎりまで湯船でのお風呂を貫き通しながらもぼくは、7月くらいからシャワーで済ますようになった。せっかちな人間にとってシャワーはありがたいもので、実質10分もあれば洗髪・洗体が終わってしまう。短髪であることも手伝って、朝シャワーもらくらくチンだ。

けれども昨晩シャワーを浴びながら、ふたつの大事なアイデアが浮かんだ。いま、最後の仕上げに取りかか

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知らない本を読む楽しさ。

知らない本を読む楽しさ。

気分転換の方法、なのだろうか。

いま、起きている時間のほとんどは、目の前にある本の原稿のことを考えている。あんなふうにしよう、こんなふうにできるんじゃないか、こっちの可能性を探ることはできないかと、本の全体像が変わるくらいの大胆さで、考えている。ごはんのときも、通勤途中も、お風呂のなかでも、トイレで用を足すときでさえも、考えている。集中しているとも言えるし、視野の狭まった、危険な兆候と見ることも

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鮮度よりも大切なもの。

鮮度よりも大切なもの。

まあ、バズったことなんてないんですけどね。

2015年の1月以来、平日は休まず note を書いている。さきほど確認したところ、きょうの更新で1405本目なのだそうだ。あんな日もあった。こんな日もあった。書いてる場合じゃない、なんてな日もたくさんあった。それでもどうにか、続けられている。いつまで続くものだか、なかば他人事のように見守る自分がいる。やめるとしたらこの人、なんて言ってやめるんだろうな

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会えば会うほど好きになる人。

会えば会うほど好きになる人。

やっぱり、後悔が混ざるんだよなあ。

きのう訃報が届いた、岸辺四郎さん。岸部さんとは以前、本をつくったことがある。テレビ発の、なかなかおもしろい企画だった。なにかのテレビ番組で、「出版業界版・マネーの虎」的な企画が組まれた。「虎」となるのは、それまでタレントさんの告白本をいくつも大ヒットに導いてきた、幻冬舎の見城徹社長。それに対して、複数のタレントさんが「わたしの告白本」企画をプレゼンし、もっとも

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ぶったまげたいのだ、わたしは。

ぶったまげたいのだ、わたしは。

むかし、1本30万円とかするワインをいただいたことがある。

自他共に認める大富豪の方を取材し、その方の著書を出版し、いやー、よかったね、ありがとね、みたいな席でご馳走になった。ぼくが、たぶん30歳くらいのころの話である。当時それほどワインを飲み慣れていなかったこともあり、正直ぼくは疑っていた。そりゃコンビニのワインよりはおいしいのだろうけれど、さすがに20万とか30万の価値はないだろう。所有欲や

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言いたいことと、言えないこと。

言いたいことと、言えないこと。

思えばぼくらは、たくさんの秘密を抱えて生きている。

秘密というと、なにやら「墓場まで持っていく」的な、ぜったいに誰ひとりにも言えない深刻な事柄のようだけれど、もっと軽い秘密はたくさんある。たとえばここの note を書こうとしたとき。「これは書いちゃいけないか」と無意識のうちに通り過ぎている話は山ほどある。むしろ、「書いてもいいこと」のほうが少なくて、結果なにを書くかに困るのがわれわれというもの

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わたしはわたしを、こう励ます。

わたしはわたしを、こう励ます。

さあ、あとは書くだけだ。

もうとっくに書き終えたはずの原稿、その分厚いプリントアウトの束を前にして現在、そう考えている。これからもう一度全体に手を加えれば、というより、もう一度書いていけば、たぶんほんとうの脱稿になる。まだまだ考えるべき課題は多いものの、最終形はほぼ見えた。

きのうから2日間、カッキーと打ち合わせだったのだけれど、途中で彼がおもしろいことを言った。

「いやー、古賀さんもやっぱ

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運転するおれ、びしょびしょのマスク。

運転するおれ、びしょびしょのマスク。

たとえば夜、犬の散歩をしているとき。

通りの向こうから、かすかな歌声が聞こえてくる。自転車に乗った誰かが、気持ちよさげに歌を歌いながらやってくる。すれちがいざま、少しだけその音量が下がる。そしてすれちがうとまた、自分に気持ちのいい音量で歌いながら去っていく。こういう場面でむかしは、知っている流行歌を聞く機会が多かった。けれども最近は知らない歌ばかりを耳にしている。ああ、そういえばオレ、最近の歌っ

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考えてみれば、天国と地獄って。

考えてみれば、天国と地獄って。

天国と地獄について考える。

あたりまえの話としてぼくたちは、天国に行ったこともないし、地獄に落ちたこともない。そんなものが存在しているのかどうかも、わからない。というか、たとえば赤鬼めいた閻魔様が待ち受けているような地獄は、生前に嘘をついたからと舌を抜かれるような地獄は、間違いなく存在しない。

そういう話とは別に、ぼくらは天国と地獄を知っている。

たとえば「ラーメン天国」ということばは現実の

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