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#断片小説
検索してみてと言われて電車に乗る
――タピオカが和歌山で息絶えたようなので確認をお願いします。
僕が朝の日課の壺磨きをしていると、スマホにそんなメッセージがいきなり飛んできた。
なんだろう。詐欺メッセージなのか、それにしてはURLも貼られてないし、そもそも意味がよくわからない。
メッセージの最後には、まだ知らない人たちにも和訳して教えてあげてほしいと付け加えられている。
和訳って……。一応、これ日本語のメッセージに読めるん
スワンボート指導員の消えた午後
ひょんなことから、スワンボート指導員になった。
人生ってわからないものだ。
スワンボートというのは、公園の池なんかにいる、お腹がくりぬかれて座席になった足漕式ボートのことだ。
*
その日は、川べりの公園で本を読むつもりでふらふらと歩いていたら、夜に降った雨のせいで、木製のベンチが湿っていた。陽に当たってはいるけれど、座っているとじっとりしてきそうな感じがする。
なにかベンチに敷くものでもあ
こんな日は牛に乗って
ファッション誌はすっかり春色。サブスクで読めるファッション誌をスマホでぱらぱら眺めてたら『春の牛通勤コーデはこれで決まり! 着回し20アイテム』という記事を見つけた。
牛も喜ぶスカーフとブラウスコーデとか、そういうの。
ふーん。牛かぁ。そういえば、ステイなんとかになって彼と別れてから、あんまり出かけなくなったし、牛もいいかなと思う。
可愛いペイントとかしてあげて牛に乗ったら、なんか楽しそうな
「求む」やる気のない方
章介は逡巡していた。思ってもなかった求人を発見したからだ。
章介の特徴は「やる気のないこと」である。世間一般ではやる気のなさはあまり評判がよろしくない。
けれども章介は意に介してないのである。こんなに世の中にやる気が溢れているのだ。一人ぐらいやる気のない人間がいてもいいんじゃないか。
むしろ、そういう人間がいたほうがバランスが保てるってものだ。それぐらいに考えている。
以前の職場でも彼は、
わたしのものではないすべて
エリカが男と別れたいから話を聞けと言ってきた。
呼び出された店で理由を聞いて可笑しくなる。
「だってさぁ、漬物ばっかつくってんだよそいつ」
「いいじゃん。わたし好きだよ漬物」
そういうんじゃなくて、とエリカは言う。
「この前なんか、その時間に連絡するって言ってたのに全然LINE返してこないの。1時間くらいしてやっと既読ついてさ。何してたのって聞いたら、漬物つけてて見れなかったっていうんだよ