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ものかきのおかしみと哀しみ

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#note同人誌

婚活とCIA

婚活とCIA

陰があるから陽が輝く。なんか怪しいこと言ってるみたいだけど、べつにそういう方面の話ではない。

ある編集者とオンラインでしゃべってたときのこと。彼は、音楽好きで、なんていうか陰のあるイケメンだ。彼が僕に言う。

「ふみぐらさん、婚活ってだいたいうまくいかないんですよ。なんでか知ってますか?」

「あ、いや。……婚活…?」

この話の先に何が待ってるんだ? 何のくだりからこうなったのかわからないけれ

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note同人誌《東京嫌い》帯コンテスト 11/18(水)19時に結果発表!

note同人誌《東京嫌い》帯コンテスト 11/18(水)19時に結果発表!

note界隈で「帯」と呼ばれる、Twitterでのnoteのシェア(引用RT)に付ける感想や紹介文。『東京嫌い』の各作品に対して帯を付けて紹介してくれたnoterさんの中から、責任編集三人がそれぞれささやかな賞を贈る企画。

ほんとにたくさんの投稿をいただきありがとうございました!

どの帯も、それぞれの「色」や「匂い」「音」、ことばにできない何かを文字通り帯びていて、責任編集の三人で何度も味わい

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他者への誠実な関心について

他者への誠実な関心について

難しいなと思う。他者に関心を持つことが。みんなどうやってるんだろう。今日も短い戯言。

そこそこ大人になってからも、社会人のカテゴリに属するようになってからも長くなるけどいまだに正解はよくわからない。

まあ、編集とかライティングの仕事をしてるのだから、他者に関心を持つ前提がなければおかしな話なんだけど。

前提をひっくり返すようなことを言うと、自分という人間の根源的なところを見つめたとき、そこま

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夜の入り口でサボテンは

夜の入り口でサボテンは

「暗くなるのが早くなりましたね」

打ち合わせからの帰り道。まだ明るい時間だったので、いつもは通らない公園の脇道に入ろうとしたところでサボテンに話しかけられた。

しまった、と思った。日没前の不透明度が半分ぐらい混じる時間帯はサボテンの活動が活発なのだ。

サボテンは知人にでも偶然会ったかのように話しかけてきて、不意をつかれた僕は、うっかり「あ、そうだね」と返事をしてしまった。

「もう立冬も過ぎ

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見覚えのある顔

見覚えのある顔

何かを突きつけられるときってある。いまがそうなんだけど。

誰かが正面から歩いてこっちに向かってくるのを見てる。男の顔に見覚えがある。だけど同時に、こうも感じる。

見覚えがあるだけで、本当に自分に向かってきているのだろうか。わからない。

とうとう男は僕の前で立ち止まる。

男は何もしゃべらない。ただじっと自分の前で立っている。瞬きもせずに。立ちはだかるという感じでもない。自分が避ければ男は、そ

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「書きたいものがない」で困ってるひとへ

「書きたいものがない」で困ってるひとへ

愛用してる目薬がバグった。勝手に流れ落ちるようになったのだ。自分の意思と関係なく。

いや、ほら目薬って一応、本人の意思で「点そう」と思って目の上に持ってきて、ちょっとだけ容器を押すでもなく押す感じで点眼するじゃないですか。一滴ずつ。

なのに、目薬の容器を自分に向けただけで、自分の意思と関係なく点眼液がどぼどぼ落ちてくる。目に入らずに顔が濡れるだけ。これだったら雨と同じじゃん。

まだ容器の中身

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続々と『東京嫌い』帯コレクション その2

続々と『東京嫌い』帯コレクション その2

「帯」というタスキが東京の見えない夜をつないでいく――。

21人のさまざまな書き手が毎夜1人ずつ夜を塗り重ねていく、note同人誌マガジン『東京嫌い』。たくさんの方に読んでいただいて、ありがとうございます。

作品公開に合せて、読んでくださったみなさんの気持ちを「帯」にして届けてもらう『東京嫌い』帯コンテストも同時開催中。

宣伝っぽく聞こえるかもしれないけど、ほんとにどの作品も「不着」がないん

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宮廷料理で舟を漕ぐ

宮廷料理で舟を漕ぐ

会食しながら居眠りをした過去がある。どうでもいい懺悔録だ。

社会人としてはいちばんやってはいけないことの上位に入る失敗だ。もうずいぶん前なので時効だと思うけど。

その日は、ある外資系企業のトップと秘書の方、とある編集長と僕の4人でテーブルを囲み、編集長と僕はゲストとしての会食だった。

一緒につくらせてもらった本が重版になって周りからの評判も良かったとか何かのお礼として席を設けていただいたのだ

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ヒヤシンスは眠れない

ヒヤシンスは眠れない

ヒヤシンスの球根を食べた。夢の中で。

たぶん本当は食べちゃいけないものなんだろうけど、夢の中のわたしは焼き菓子でも齧るみたいに食べていた。

その球根は会社の給湯室でオダシマさんにもらったのだ。わたしが、最近なんだか眠れなくて、という話を彼女にしたら「いいもの持ってきてあげる」と言って、次の日会社に球根の付いた花を持ってきてくれた。

「このヒヤシンスね、うちのおばあちゃんが育ててるの。ヒヤシン

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正解の街から少し離れて

正解の街から少し離れて

怪しい佇まいの街が再開発なんかで姿を消していく。まあ、いまに始まったことでもないのだけど。

なぜか黒い油の塊がべっとりとついた電線が絡み合い、がらくたなのか店の設備なのか判別できないものの上に野良猫が寝そべるような凸凹した店が並ぶ路地。

現在の基準で言えば法的にも景観的にも、いろんな意味でダーク寄りなごちゃつき感。

そういう光景を見て、嫌悪感を持つひともいれば、なんとも思わないひと、僕みたい

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毎年おなじこと考えてる

毎年おなじこと考えてる

ずっとガラス瓶に入れておきたくなる一日がある。年に何回か。ログを取ってるわけじゃないけど、なんとなくいまぐらいの季節が多い。

10月の終わりから11月の初めぐらいの、不透明度ゼロぐらいによく晴れた秋の日。

べつに何か特別なことがあったからというのでもない。むしろ、特別なことが何もないからこそ「瓶に入れておきたい」と思うのかもしれなくて。

特別な何かがあった日は勝手に記憶に残る。そうじゃない、

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僕の書くものは土と菌で出来てるから

僕の書くものは土と菌で出来てるから

どんな仕事も長くちゃんと続けるにはアップデートが必要。きょうはなんとか時間を削り出して「土と菌」を2020年版にアップデートしてきた。藤井風くんを聴きながら移動して。

いったい何を言ってるのか。君の仕事はライターとか編集で、なんで「土」やら「菌」が出てくるのか。ヤギだからパピルスでもつくって食べるんだろうかと散々な言われようだけど、そういうことじゃない。

たしかに僕の仕事は原稿を書いたり、本や

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見えた?『東京嫌い』帯コレクション その1

見えた?『東京嫌い』帯コレクション その1

2020.10.22夜7時に幕を開けたnote同人誌マガジン『東京嫌い』。21人のさまざまな書き手が毎夜1人ずつ夜を塗り重ねていく、これまであまりなかったタイプのマガジン。

ここまで、九つの夜を彩ってきました。そして作品公開に合せて、読んでくださったみなさんの気持ちを「帯」にして届けてもらう『東京嫌い』帯コンテストも同時開催中。

note界隈で「帯」と呼ばれる、Twitterでのnoteのシェ

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それは身体から出た言葉

それは身体から出た言葉

言葉は身体で読むものだ。

一瞬、ん? と思われそう。多くの人は視覚器官を使って脳にデータを送って「読む」のだけど、それだけでは説明できない読み方をしてしまうときがある。

なんだろう。その文字、文章と出会った瞬間に有無を言わせない感じで入ってきてしまうときとか。

決して不快ではなくて、むしろ自分が文字や文章とシンクロして泳ぎ出せるような感覚。細胞レベルで言葉や文章をつかんでるときの、なんとも言

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