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短編小説(ショートショート含む)

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短編小説(ショートショート含む)を まとめてみました。よければ是非。  ※更新頻度は不定期となります。
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#短編

短編その10 足切り

文字数:1,500字程度
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 ——本内容は、裏バイト参加者の実体験録である——

 足切りってあるだろ。
 試験でよく言われるやつ。いわゆる合格ライン。
 ある程度の点を取らないと…って、皆足切りを越えるように頑張るだろ。
 まあ実際は足を切るわけじゃないから、まあそこで落ちたとしても次の試験で頑張ればいいだけの話なんだけど

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短編その9 鯉に恋して、そばにいて

短編その9 鯉に恋して、そばにいて

文字数:1,600字程度
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 そのお寺の境内には、自然豊かな池があります。
 その中に一匹、大きな錦鯉が住んでいました。全身が白に赤の鮮やかな模様、丸々と太ってもったりと動くその様は、池を見る何者も魅了していました。

 そんな鯉は、先月からある女性に恋をしていました。
 彼女は人間で、同じ脊椎動物といえども魚類の鯉とは種が

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短編その6 ハイブリッド

短編その6 ハイブリッド

文字数:1,300字程度
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 コンビニでバイトをしていると、普段関わることのないような人種と関わり合うことができる。今回、俺が実際に働いていて、これまで出会った輩について、少しだけ紹介したい。
「いらっしゃいませー」
「煙草。メビウス。ライト」
 例えばこんな奴。単語だけを区切って述べる奴。こんな奴らを、俺は『コミュ症』系と

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短編その4 腕フェチ

短編その4 腕フェチ

文字数:3,200字程度
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「聞いてくれよ。この前、バイトの夜勤出てたら大変な目にあってさ」
「なんだよ急に」
 ある日の午後。大学の帰り道にて、友人のタカシが話し出した。
「というかお前、そもそもなんの夜勤やってんだっけ?」
「ファミレスだよ、ファミレス。一応俺、ホールな。まあとにかく、二日前のことなんだけどな。変な客が店

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短編その3 草まんじゅう

短編その3 草まんじゅう

文字数:3,800字程度
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 古めかしい門構えをくぐり、妻と境内に入る。
 中は雑多な参拝客で溢れかえっていた。近所にあるその寺は、知名度から普段より賑わっている。三が日を終えた平日であっても、それは変わらなかった。
「天気が晴れて良かったね」
「ああ」
 隣で歩く妻が、にこにこと笑顔を浮かべている。二日前までの天気予報では

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