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養豚術の呪い 2

ケース2
プラスマイナスゼロですか?

裕美は結子に会うのは久しぶりだ。
昔は、旦那の愚痴で盛り上がってきたが、お互いそれさえも虚しい気持ちになり、お互い違うものに逃げていた。

結子は娘がいるせいもあり、娘と二次元の世界に逃げた。裕美は、二次元とか、アニメとかも興味なく、仕事に逃げたつもりが、男にはまっていった。
一通り結子の近況をきき、裕美は感心したように
「そうか、旦那の言葉の呪いが体系に影響するってヤバいけど、おにぎりの具しか言わないのも強烈だね」

「そっちは、ちゃんと魔法の言葉をかけてくれる人がいるからいいじゃん」

結子のツッコミに、少し照れながら
「まあね…」

「私はもう生身の人間は無理だな。五条悟で十分」

裕美は、熱心に推しの話しをするのを、半ば聞き流しながら、別のことを考えていた。今日は、アイツになに作ってあげようかな。こないだ和風で責めたから、今日は洋風かな。

結子と別れて、裕美は、いつも降りる駅の一つ前の駅で降り、スーパーで卵や野菜などを買い、小さなアパートの部屋の鍵をあけ、楽しそうに料理を初めていた。そのうちに、男がその部屋に入ってきた。
旦那ではない男、野沢隆、裕美の上司であり、いわゆる大人の関係だ。
お互いダブル不倫、子持ち。
ラブホテルではなく、安いアパートを借りようと言ってくれたのは隆だった。

束の間の秘密の時間は、お互いに家族がいるから、本気にならずにいられる。
隆は、料理をしている裕美を、後ろから抱きしめていた。

隆の言葉、裕美にとってそれが嘘でも、毎日傷ついた言葉を浴びせられているからこそ、薬のようや麻薬のようなものかもしれない。

愛してるよ
綺麗だよ
美しいよ

それが嘘でも、私には薬だと思っていた。

結子の旦那同様に、裕美の旦那の聡は、モラハラ旦那で、人を見下していた。
だから、お前はダメなんだよ。
それが口ぐせだった。
だから、隆の存在がありがたかった。

隆は、聡とは違う。

そう思う事で、現状を保っていたのだ。

でも、それが儚い幻だと気づくのだ。
隆の家族の仲睦まじい姿をみていたら、逆に安心して、秘密の関係を続けられたのかもしれない。

裕美は、聡が珍しく休日接待だと言っていたので、一人でデパートに行き、洋服を見ていた。
隆に会う時に、着ていく服でもある。
そんな時だった。後ろの方から、怒鳴り声が聞こえた。
「早く歩けよ、デブ」
聡みたいなモラハラ旦那かぁ。そうゆう男の顔は、きっと……隆?
紛れもなく隆とその奥さんと子供達だった。
奥さんは、そう言われても動じず、子供達の面倒をみていた。少しポッチャリはしていたが、元は美人だったんだろうという、面影は残っていた。

音を立てて崩れていくとは、今みたいな事をいうのか。せめて幸せで優しい夫をみて、やはり聡とは違うと思いたかった。

家に帰ると旦那の携帯がポツンとテーブルに置いてあった。接待で携帯わすれるなんてありえない。そこにメールが届いた。

早く携帯手にして、奥さんに見られないように💖
いっぱいまた甘い言葉囁いて😘

裕美は大笑いしながら、自分の家を出た。
笑いはいつのまにか涙に変わっていた。
どっちもモラハラ男とは。
しかも聡も、他の女の前では隆なのか。

なんか生身の男はもういいという、結子の気持ちが今ようやくわかってきた。

激薬は後で苦しむ。
これも呪いの因果応報なのかしら。

慌てて旦那の聡から連絡がかかってきた。
「お前、まだ家に帰ってないよな。
俺の携帯みてないよな?!」
「なんで?」
「見てないなら見てないんでいいんだけど」
笑いをこらえている裕美に
「何笑ってるんだよ」
「シャケ」
「は?おちょっくってるのか」
「おかか」
裕美は、電話をきり、
なるほど、おにぎりの具しか言わないってある意味斬新だと気づいた。

そこに隆からもメールがきた。
次回のおさそいだ。
裕美 もう、終わりにしましょう。
隆  どうしたの、急に。旦那に見つかった?
裕美 同じだったの
隆  何が?
裕美 幻想、魔法が解けたらしい笑
隆  お前が必要なんだよ、愛してるよ
裕美 シャケ
隆  何?!
裕美 ツナマヨ
隆  ??
裕美 さよなら

裕美は、そう送ると隆を削除した。
なんかすごくスッキリした。
ショウインドウに見える自分の姿は、またまだ
いけてる女性だ。
ただ男の承認は、もういらない
自分が承認すればよいんだ。

自然、リトリート、グラピングそんな謳い文句が並んでるチラシを見つけた。

たまには、のんびり一人行ってくるかな。

裕美はそのチラシを持ち、旅行カウンターに突き進んだ。

さあ、本来の自分を見つけないと。

やっと自分を見つめる事ができたのかと、
裕美のハガキを読んで、感心している夏美がいた。結子や裕美と違って独身である。

夏美は、優雅な一人暮らしだが、夏美の場合には、結婚しない理由は、親に原因があったからだ。





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