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ちいさな絵物語

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水彩画制作の裏の裏。旅のことや描くときに考えていること。そして画家の体験記
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30年のシンクロニシティ

30年のシンクロニシティ

答えはそう簡単には見つからない。すぐにもらえた答えなんて、答えの顔をした「思い込み」に過ぎない、と、思うようになった。

先日、3人の別々の方から、リアルとSNSを通じて「夜と霧」の話題が僕の元へ届いた。これをシンクロニシティと言わずになんと言おうか、というタイミングだった。

第二次世界大戦当時、ポーランドクラクフ近郊にあったユダヤ人強制収容所「アウシュビッツ(ポーランド語:オシフェンチム)強制

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モン・サン・ミシェルの引力

モン・サン・ミシェルの引力

いろんなところを旅してきたけど、大地が持つ磁場に引き寄せられるって、あると思う。

いくつもあちこちにあるわけではない。思いつくところでは、インドのドンガルカル近くの山だったり、イギリスの湖水地方ケズゥィック近郊の丘。ブルターニュのなぜかたどり着いてしまった小さな村といったところが思い浮かぶけれど、強力なところがモン・サン・ミシェルだった。

思い返せば、ぼくがはじめて聖ミカエルの山=モン・サン・

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絵のあるおはなし~三方良しのスモールワールド~

絵のあるおはなし~三方良しのスモールワールド~

ぼくの描く絵の値段は大方サイズで決まっている。
勝手に決めているわけでもなく、デパートや画廊での個展の過去実績が元になり、1号という絵の世界独特のサイズ(面積)あたりの単価が基準になっている。
美術ウン鑑、美術○データブックなんて厚い業界本にその作家ごとの号単価は載っている。(掲載しない主義の作家さんもいますので、それが全てではありません。念のため)

22㎝×16㎝。これが1号の面積だ。
「あの

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絵本に何を描くのか

絵本に何を描くのか

ぼくの仕事は本当に多岐にわたる。広告のためのカットから、ポスタービジュアルイラスト。裁判所に出向いて新聞掲載の法廷画をえがくこともあれば、書籍の表紙から絵本まで、本当にいろいろだ。

ベースが仙台。
出版社や広告代理店がひしめく東京とは、しごとを受ける過程、勝手がちょっと違ってくる。

表現タッチを問わず、なんでも受けてこなさねば暮らしが成り立たないという、地方独特の隠れ流儀みたいなものがある。

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「スコットランドの旅・Cain夫妻のこと」

「スコットランドの旅・Cain夫妻のこと」

エジンバラに、大好きになった老夫婦がいた。
老夫婦は民宿を営んでいた。
ぼくと妻が若かりし頃、エジンバラで宿を探していると、「うちに泊まる?」と誘ってくれたのが縁だった。

「どこなんですか?」ときくと、舞台女優のように腕をさーっとひらいて、「こちらよ」
窓のすみには小さな四角い白いプレートに「Bed&Breakfast」だけが白抜き。
いかにも安めなB&B。
でも、老婦人の笑顔が特級チャーミング

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