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アウトサイダー・アート/アール・ブリュット

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アウトサイダー・アートとアール・ブリュットについて書いたレビューをまとめました。
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#レビュー

アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国

アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国

ジャン・デュビュッフェがアロイーズと並ぶアール・ブリュットの双璧として高く評価したアドルフ・ヴェルフリの回顧展。日本でこれほどまとまったかたちで作品が紹介されるのは本展が初めてだという。ヴェルフリは生涯の大半を精神病院で過ごしながら絵を描き続けたが、本展ではそのうちの74点が一挙に展示されている。

よく知られているように、ヴェルフリの絵画は空想的な物語と一体である。理想的な王国ないしは冒険譚から

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ポコラート全国公募展vol.3 アール・ブリュット? アウトサイダー・アート? ポコラート!福祉×表現×美術×魂

ポコラート全国公募展vol.3 アール・ブリュット? アウトサイダー・アート? ポコラート!福祉×表現×美術×魂

「ポコラート」とは、Place of “Core+Relation” Art を意味する造語で、障がいのある人と障がいのない人、そしてアーティストが出会う場として考えられている。3回目となる本展では、1,300点あまりの応募作のなかから厳選された214点の作品を展示した。

会場を一巡してみて感じるのは、空間に満ち溢れたエネルギーの凄まじさ。すべての作品と向き合うと体力を消耗するほど、一つひとつの

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アール・ブリュット・ジャポネ展

昨年、パリのアル・サン・ピエール美術館で開催されたアール・ブリュット展の日本凱旋展。障害の有無にかかわらず、美術教育を受けていないことを基準にして選出された国内のアーティスト63人が参加した。

ほとんどの作品に共通しているのは、アール・ブリュットやアウトサイダー・アートと呼ばれる美術表現の多くがそうであるように、ひじょうに明快な独自のルールにしたがって物質を造形している点だ。

たとえば平岡伸太

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前衛★R70展

前衛★R70展

70歳未満は出品不可という企画展。赤瀬川原平、秋山祐徳太子、池田龍雄、田中信太郎、中村宏、吉野辰海がそれぞれ新作を発表した。

小品とはいえ、それぞれの芸風を存分に発揮した作品を展示していたので、たしかに見応えはある。けれども、同時に顔も名前も十分に広く知られた「前衛」作家たちであるという条件を抜きにして作品を客観的に見ることが難しいのも事実だ。彼らが「前衛」の花形、平たくいえばスターである以上、

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一人快芸術

一人快芸術

一人快芸術とは、「たった一人で充足し、そのうえ人に伝播する」芸術のこと。従来まで「アウトサイダーアート」として括られてきた知的障がい者による芸術的な表現や、美術の専門教育を受けていないアマチュアによる表現行為を総括する上位概念として打ち出された造語である。

じっさい本展に出品しているのは、障がい者施設で働く人たちをはじめ、地域の共同体や都市の路上を舞台に何かを生産している人たちが大半で、吉村芳生

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LIFE

いのちにたいするリアリティを見失いがちな今日にあって、多様な生命力を喚起することをテーマとした展覧会。出品作家には西尾康之や棚田康司、川島秀明といった現代美術のアーティストだけでなく、マンガ家やアクティヴィスト、障害をもつ表現者なども含まれ、バラエティに富み多岐に渡っている。多様な生命力を励起させるために、多様な作家が選出されたようだ。

だが、現代美術の作家はともかく、それ以外の表現者たちの作品

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