アール・ブリュット・ジャポネ展

昨年、パリのアル・サン・ピエール美術館で開催されたアール・ブリュット展の日本凱旋展。障害の有無にかかわらず、美術教育を受けていないことを基準にして選出された国内のアーティスト63人が参加した。

ほとんどの作品に共通しているのは、アール・ブリュットやアウトサイダー・アートと呼ばれる美術表現の多くがそうであるように、ひじょうに明快な独自のルールにしたがって物質を造形している点だ。

たとえば平岡伸太は小学生用の国語プリントに設けられた解答欄に似顔絵と芸能人の名前を書き込んでいるが、そこに駄洒落のような言語ゲームが働いていることは一目瞭然である。「深田恭子さん」からは「深津絵里さん」が、「唐沢寿明くん」からは「桜井和寿くん」が、それぞれ連想されているが、おもしろいのはこの言語ゲームがしだいに複雑に展開していくことだ。

「太平洋」から「勝野洋くん」が引き出されるのはまだしも、「畑野浩子さん」から「野菜」が、そして「日本一」から「藤本美貴」が連なっているのを見ると、高度に発展したルールに驚きを禁じえない。けれども、ルールを自分で作り上げ、その妥当性を世に問うことは、アール・ブリュットの特質というより、むしろあらゆる芸術的行為に通底する原型なのではないか。

初出:「artscape」2011年6月11日号

アール・ブリュット・ジャポネ展

会期:2011年4月9日~2011年5月11日

会場:埼玉県立近代美術館

#アウトサイダーアート #アールブリュット #美術 #アート #レビュー #福住廉


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?