福村出版編集部

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福村出版編集部のアカウントです。人文・社会科学系の本を出版しています。近刊・既刊本の試し読みをアップしています。 Instagram→https://www.instagram.com/fukumurashuppan.henshu/

マガジン

  • パリでもないのに

    コロナ禍のパリ留学について独自の視点で綴った片岡一竹さんの好評連載「パリだというのに」がリニューアルして再開!パリ留学について著者ならではの視点で振り返ったレポートです。

  • 新刊試し読み

  • 『子育て支援と心理臨床』より

    弊社刊行雑誌『子育て支援と心理臨床』から、人気の記事を紹介するコーナーをつくりました!最初に取り上げるのは、原田輝一さんの連載エッセイ「アピアランス〈外見〉問題」。病気や外傷により外見に不安や困難を抱える人々に、どのような心理社会的支援を行っていけるのでしょうか?

  • パリだというのに

    パリ留学中の片岡一竹さんによる、パリの現在の様子を著者ならではの視点で綴ったレポートです。

最近の記事

パリでもないのに~ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つ篇~|⑪台北風雲竜虎篇①

 謹賀新年。明けましておめでとう。謹んで新年の挨拶を申し上げる。  謹むあまり同じ内容の三文を連ねてしまったが、これを書いているのはまだ2023年の年末である。11月後半に設定されていた締切が、往年の筋トレ器具・ブルワーカー2もかくやと伸びまくり、ついに年の瀬の押し迫る頃になってしまった。これほど伸ばしたとあっては、女たちも私のことを貧弱な坊やとバカにすることはできないだろう。  福村出版が大晦日も残業を強いるような悪の結社でない限り、この原稿の掲載は年明けになるはずであ

    • パリでもないのに~ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つ篇~|⑩多国籍日本料理グルメガイド

       空腹は最上の調味料、という言葉がある。  「それを口癖にしていた祖父が餓死した」という懐かしのコピペの方が有名だと思うが、今ネットを調べても出てこない。本当に存在したのか俄かに怪しくなってきた。私の記憶が捏造した怪物かもしれない。この箴言自体は確かに存在し、仄聞するところでは、古代ギリシアのソクラテスに遡る、大変由緒あるものらしい。ちなみにキッコーマンのサイトに書いてあった。  いずれにせよこれが直観的に納得できるテーゼであることには疑いを容れないが、私がこの言葉の意味

      • パリでもないのに~ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つ篇~|⑨「パリ大学」はさすがにないだろう

         連載再開するや否やいきなり1ヶ月休んでしまって申し訳ないが、本業で忙しかった。  具体的に言うと、論文やら学会発表やらの締め切りが重なっていたうえに、6年前に某社から上梓した某書がこのたび別の某社から文庫化されることになり(他社なので具体名は伏す)、その修正作業は7月初旬にすでに終わっていたが、ゲラの修正作業に思った以上の時間をとられた。このゲラ修正がなかなか大変な作業なのだ。  私が研究業を行っているのは、ひとえに「書く」ことに対する愛着ゆえであって、告白すれば、本を「

        • パリでもないのに~ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つ篇~|⑧地下鉄のギャンブラー

           東京は恐ろしいところだ。  あ、長らく連載を休んで申し訳なかった。原稿の催促がいつまでも来ないので打ち切られたものと思っていたら、担当編集の方が体調不良でお休みだったようで、氏の職場復帰に伴い当連載も再開となる。今月からまたよろしくお願いしたい。  で、東京が恐ろしいところだという話だが、これでも私は2013年に上京してから10年に亘って東京生活を経験している。たとえ現在の住所が故郷栃木であったとしても、心は東京人を自負している。つまり一番タチの悪い田舎者だ。  実際に

        パリでもないのに~ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つ篇~|⑪台北風雲竜虎篇①

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        • パリでもないのに
          10本
        • 新刊試し読み
          12本
        • 『子育て支援と心理臨床』より
          4本
        • パリだというのに
          2本

        記事

          パリでもないのに~ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つ篇~|⑦言語能力≠コミュニケーション能力

           フランス語の発音は簡単だ、というようなことを前回書いたが、それはフランス語が簡単な言語である所以ではない。  もちろん文法は複雑であり、そのぶん実際に話すことは比較的困難である。  簡単なことを口に出す場合であってもいちいち「これは女性名詞だっけ」「あれ、時制はどうなるんだ」「活用が分からん」「この場合は接続法を使うべきか?」などと考慮すべきことは多く、些末な文法ミスも頻発する。  それから、これはフランス語に限らず西欧語全般、少なくとも英語やフランス語に言えることだが

          パリでもないのに~ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つ篇~|⑦言語能力≠コミュニケーション能力

          パリでもないのに~ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つ篇~|⑥フランス語ロック論争

           留学の半分は事務手続きだ、という旨の話を以前記したが、残りの半分は現地の慣習に適応するための努力であると言ってよい。ここで挙げた慣習という言葉は非常に多義的であって、食習慣から紳士的な中指の立て方に至るまで広範の事項を指すが、とりわけ大きな比重を占めるのが言語の習慣、つまりは語学である。  日本で暮らしていれば、日常的にフランス語と出会う機会はケーキを買いに行くときくらいであり、総じてこの言語には瀟洒で優美なイメージ、さもなくばおばさん臭いイメージが付きまとっている。  

          パリでもないのに~ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つ篇~|⑥フランス語ロック論争

          パリでもないのに~ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つ篇~|⑤Allumer les ongles

           20万失った。  20万失った。月収である。  実は学振の特別研究員だった頃、立て替えておいた研究費が20万円ほどあったのだ。立替分を大学に申請し、検収を受けることで返金される。だから昨年末まとめて必要書類を大学に送った。しかし実は申請期限を勘違いしており、とっくに締め切られていた。20万円分の書籍代が自腹ということになった。  大学からの報せを受け取ったのは東京滞在中であった。部屋で寝転んでいる時に通知が来た。メールを読みながら、静かに脂汗が流れ始めた。狭い部屋の中に

          パリでもないのに~ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つ篇~|⑤Allumer les ongles

          パリでもないのに~ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つ篇~|④麻布十番連続嫌対応事件

           歳末差し迫った今日この頃であるが、皆さんいかがお過ごしであろうか。  前回の更新から二週間しか経っていないが、今月は二回更新である。  実は前回の原稿が長すぎたのだ。だから二回に分けることと相成った。先月休んでいるのでちょうどよい。  したがってこれを書いている現在はまだ十二月の初めである。  今の悩みと言えば、年末の桑田佳祐年越しライブが当選するかどうかだ。もうすでに三回の先行販売抽選に落ち、すでに通常の指定席は埋まっているが、まだ注釈付き指定席(ステージが見ずらい)

          パリでもないのに~ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つ篇~|④麻布十番連続嫌対応事件

          【試し読み】C・ホデント(著)山根信二(監訳)『はじめて学ぶ ビデオゲームの心理学』(第1章冒頭)

          『はじめて学ぶ ビデオゲームの心理学――脳のはたらきとユーザー体験(UX)』が2022年12月13日に発売されました!  「ゲームをおもしろくする要素を理解するには、脳のはたらきについて考える必要があります」。こうキャッチフレーズを掲げる本書は、これまでになかった、ゲームのおもしろさをを心理学の観点から解説した一冊です。  ビデオゲームには実体がありません。すべてはプレイヤーの頭の中で起こります。したがって、おもしろいゲームを作るには、何よりもまず人間や脳や心の機能について

          【試し読み】C・ホデント(著)山根信二(監訳)『はじめて学ぶ ビデオゲームの心理学』(第1章冒頭)

          パリでもないのに~ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つ篇~|③ロード・事務

           おれはとうとう無職になってしまった。    つげ義春の名作『無能の人』は「おれはとうとう石屋になってしまった」という一文から始まるが、石屋も石屋で立派な職業である。作中でそういう描写はないが、おそらく多少は売れもしたのだろう。 それに比べると無職は文字通り働いていないのだからもっと悪い。それがおれである。    無職と自嘲しているが実際は大学院生ではないか、と思われるかもしれない。しかし実は大学も学費が払えず休学中なのである。よって私は休学中の大学院博士課程でバイトなしとい

          パリでもないのに~ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つ篇~|③ロード・事務

          【試し読み】R・J・フレデリック(著)花川ゆう子(監訳)『感情を癒やし、あなたらしく生きる4つのステップ』(日本語版刊行によせて+第1章冒頭)

           『感情を癒やし、あなたらしく生きる4つのステップ:気づく・鎮める・感じきる・心を開く』が2022年10月26日に発売されました!  それぞれのキャラクターの心の動きを丁寧に追って、避けていたつらい感情への気づきと向き合い方、激しい動揺の鎮め方を学び、そして本来の自分らしさを見出していくセラピーの過程に沿って、理論的な裏付けと具体的な実践方法を詳しく解説していきます。エピソードはまるで小説のように読みやすいので、現役のセラピストや臨床心理に興味のある方だけではなく、セラピーっ

          【試し読み】R・J・フレデリック(著)花川ゆう子(監訳)『感情を癒やし、あなたらしく生きる4つのステップ』(日本語版刊行によせて+第1章冒頭)

          アピアランス〈外見〉問題と原子爆弾(後編・最終回)|『子育て支援と心理臨床』より⑥

           現代社会において、人の健康や幸福と深く関連する外見(アピアランス)。病気や外傷により外見に不安や困難を抱える人々に、どのような心理社会的支援を行っていけるのでしょうか。  原田輝一さんは、医師として治療に携わりながら、新興の学術分野である「アピアランス〈外見〉問題」の最新の研究成果を紹介し、その学術的知見と技術の導入をめざしています。本連載では、アピアランス〈外見〉問題の概要や、それに対処するための研究とケア開発の歴史について、事例を交えながら紹介していただいています。

          アピアランス〈外見〉問題と原子爆弾(後編・最終回)|『子育て支援と心理臨床』より⑥

          『人に優しいロボットのデザイン』発売記念トークイベントのお知らせ

          『人に優しいロボットのデザイン:「なんもしない」の心の科学』の発売を記念して、2022年10月19日(水)にオンライントークイベントが下記の通り開催されます。みなさまのご参加をお待ちしています! 【イベント概要】 日時:2022年10月19日(水)19:30〜21:00 場所:Twitterスペース(オンライン) 出演:高橋英之(『人に優しいロボットのデザイン』著者、大阪大学大学院基礎工学研究科特任准教授)    飲茶(作家、『史上最強の哲学入門』『14歳からの哲学入門』著

          『人に優しいロボットのデザイン』発売記念トークイベントのお知らせ

          パリでもないのに~ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つ篇~|②翼よ、パリの火はまだ見えない

           一ヶ月のご無沙汰である。皆さん、お変わりありませんか。  私の近況だが、帰国から一ヶ月強に亘る東京への一時滞在を経て、今月の初めに栃木の実家に戻ってきた。というのも本2022年9月末を以って学振こと日本学術振興会特別研究員DC1の任を解かれ(本当は今年の3月で終わりの予定だったが、コロナの影響を鑑みて半年間延長された)、修士時代以来の無一文へとふたたび舞い戻るからだ。副業で生計を立てながら生きていくには東京は金がかかりすぎる。よって実家に都落ちして「子供部屋おじさん」とい

          パリでもないのに~ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つ篇~|②翼よ、パリの火はまだ見えない

          アピアランス〈外見〉問題と原子爆弾(前編)|『子育て支援と心理臨床』より⑤

           現代社会において、人の健康や幸福と深く関連する外見(アピアランス)。病気や外傷により外見に不安や困難を抱える人々に、どのような心理社会的支援を行っていけるのでしょうか。  原田輝一さんは、医師として治療に携わりながら、新興の学術分野である「アピアランス〈外見〉問題」の最新の研究成果を紹介し、その学術的知見と技術の導入をめざしています。本連載では、アピアランス〈外見〉問題の概要や、それに対処するための研究とケア開発の歴史について、事例を交えながら紹介していただいています。

          アピアランス〈外見〉問題と原子爆弾(前編)|『子育て支援と心理臨床』より⑤

          パリでもないのに~ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つ篇~|①帰ってきました

           みなさん、お久しぶりです。  去る2022年8月1日、日本に帰国した。何度か持ち上がった一時帰国の話も立ち消えになり、実に十一ヶ月ぶりに祖国の土を踏むことと相成った。一年間の交換留学はつつがなく――いや今後書いていくように実際には非常につつがあったのだが――終了し、危惧していたロストバゲージや空港での足止めもなく、フランスから送った荷物も無事に到着し、万事首尾よく帰国が済んだのは幸甚というほかない。  まずはフランス在留中に始めた当連載の二回目を昨年末に書いたきり、実に半年

          パリでもないのに~ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つ篇~|①帰ってきました