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Restaurant cadre/濱屋拓巳さん(フランス料理)

飲食業界のトップランナーにインタビューする「つなぐ人」。福井県での開業準備で心がけることや土地ならではの魅力について、飲食に関わる様々な分野の方に教わります。

今回ご紹介する濱屋拓巳さんは、福井市高木にあるRestaurant Cadre(カードル)のシェフ。2021年にシェフに就任し、福井の食材とフランス料理が融合した“ここでしか味わえない”イノベーティブな料理を生み出しています。

フランス料理人/Restaurant cadre/濱屋拓巳(静岡県袋井市出身)
1995年生まれ。愛知調理専門学校卒業後、『ガーデンレストラン徳川園』にて6年修業したのちに、関心を寄せていた北陸の食材にふれようと来福し、2021年5月Cadreのシェフに就任。「圧倒的な地産地消」をコンセプトとし、福井の食材と文化を全国に発信し続ける。
https://restaurant-cadre.com/

プロフィール

1.一度は北陸で働いてみた方がいい

高校を卒業後、地元静岡から愛知の専門学校に進学し、料理を学びました。和食にはない独特の調理方法や食材に魅力を感じ、フランス料理の道に進むことに。卒業後は『ガーデンレストラン 徳川園』で6年間、レストラン営業から宴会・婚礼まで幅広く経験しました。

その時の先輩が石川県金沢市にゆかりのある方で、「魚介をはじめとした日本海側の食材は素晴らしいから、一度は北陸で働いてみた方がいい」とアドバイスをくださったんです。石川県や富山県には行ったことがあるので、どうせ働くなら未開の地がいい。そう思っていた時に、東京・銀座のモダンフレンチ『Air(エール)』の姉妹店である『Restaurant Cadre』の求人を見つけ、福井県で働くことを決めました。

福井県はちょっと車を走らせると田んぼや畑が広がり、海や山も近くにある。しかも、近所のスーパーに行くと、地元の漁港で朝水揚げされたばかりの新鮮な魚介が並んでいるんです。「先輩が言っていたことはこれか!」と実感しましたね。

2.お互いに高めあえるシェフと生産者の関係性

福井では、越前の雄大な山々と若狭湾に流れる水の美しさを表す「越山若水(えつざんじゃくすい)」という言葉があるのですが、お店で使う食材も豊かな自然の恵みがもたらすものばかり。魚介は敦賀、鹿などのジビエは池田町など、県内各地の生産者と関わっていますが、これまで扱ってきた食材とはまったく違うことに驚きました。

例えば、福井県で獲れた甘鯛には、重さや大きさなど厳しい規定をクリアしたものだけが認めらる「若狭ぐじ極(きわみ)」というブランドがあります。お店で使う甘鯛は「極」に匹敵するもので、水揚げ後すぐに神経締めをして、より新鮮な状態で調理できるよう内臓を出した状態で届けてもらうんです。内臓を出す時点でブランドの認定はつかなくなってしまうのですが、美味しさは「若狭ぐじ極」以上に。

そのままでも新鮮で美味しい食材に満足することなく、さらに美味しさを引き出す工夫をしてくださる。そんな生産者が多いのは、福井ならではの魅力だと思います。

神経締めし熟成させた甘鯛を骨で取った出汁でポシェし、ナージュ仕立てにした濱屋シェフのスペシャリテ。ソースは、ワトム農園の「魔法のトマト」を発酵させたもの

最近では、生産者同士のコラボも生まれています。僕が感動したのが「寒鮒」。あわら市の北潟湖で獲れた寒鮒を、池田町の生産者が1週間かけて泥抜きし、敦賀の生産者によって神経締めをして熟成されたものを調理する機会があったんです。淡水魚特有の臭みはまったくなく、程よい脂が乗った身と独特の食感はこれまで食べた寒鮒とはまったく別ものでした。

骨切りにした寒鮒を福井の郷土食材「福井地辛子」を使った酢味噌で和え、
トマトとコンソメをパール状にしたものとネブカネギを散らした一皿

シェフに就任して1年。コースをゼロから組み立てていく難しさを日々感じています。生産者の世界でも先ほどご紹介したようなチャレンジングな取り組みが生まれているので、僕たちも負けてはいられません。生産者たちのストーリーまで表現できるような一皿にしたい。生産者とシェフがともに高め合いながら、食材の素晴らしさを料理に昇華させていきたいと思います。

3.職人との距離の近さが強みになる

福井に来てもう一つ実感したのが、職人との距離の近さです。福井には和紙や漆器、刃物など多様な伝統工芸があり、お店のステーキナイフも越前打刃物の職人、黒崎優さんにお願いしています。フランス料理にナイフはつきものですが、正直これまでメンテナンスまで意識することはなく、研ぎに出しても戻ってくるまで時間がかかるのが当たり前でした。でも今は月1回研ぎに出すと、数日中には研ぎ直され素晴らしい切れ味になって戻ってくる。これには驚きましたね。

器も越前焼の陶芸家、吉田信介さんのものを使っていますが、「こんな器がほしい」と思い立ったらすぐ相談できるし、料理のテイストに合わせてオリジナルの器も作ってくださる。身近な存在として職人にすぐ相談できるのも、他の県にはない良さだと実感しています。

陶房遥(吉田信介さん)とCadreのコラボレーション
(『ふくいの食と器の旅 越前町Xフレンチ』/発行:南越前町 より)

最近興味があるのは漆器です。漆の艶は料理を引き立てますが、フレンチではナイフを使うので傷つきやすい漆器はこれまであまり使われることはありませんでした。しかし、福井であれば傷ついてもすぐに直しに出せます。実は今、漆塗りの椀を注文しているのですが、フレンチベースのコースの中でどのように使おうか楽しみなんです。これからも和洋の境界を超えて、さまざまな工芸を積極的に取り入れたいですね。

ここでしか食べられない食材や伝統的でありながらも独自性を出せる工芸など、福井は料理人にとって恵まれた環境が揃っていると思います。和洋のジャンルを超えて料理人同士のつながりも深いので、これから開業する方も安心してご自身の経験を活かせるのではないでしょうか。あとはどれだけ高みを目指していくか。僕もまだまだですが、これからも経験を積みながら福井の魅力を発信していきたいと思います。

(取材日:2022年5月/石原藍)


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