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診察の際や栄養指導の場で、糖質やタンパク質、脂質などの三大栄養素や塩分などについてはよく話題に上がりますが、ビタミンやミネラルに関してはあまり触れられることがないと思います。特にミネラルに関しては、優先順位として後ろになりがちです。

しかしミネラルは身体の正常な機能や構成、健康の維持に欠かせない物であり、このミネラル不足による不快な症状や不調というものが多くあります。

今回はその中でも『亜鉛』について解説していきます。

亜鉛の働きはずばり『新陳代謝を活発にすること』です。

亜鉛は新しい細胞を作る際に多く利用される酵素の一つでもあり、爪や皮膚、髪の毛などが伸びていくように、身体のあらゆる細胞の代謝に関わっています。またウィルスなどの感染症から身体を守ったり、頭の働きをよくする作用もあります。

順番にみていきましょう。

まず亜鉛は、上にも書いたように、血液や骨、筋肉など様々な細胞に存在しているため、多くの作用があります。

特に脳に関しては海馬などに作用しているため記憶力などに関係しており、学習や認知機能にも影響があります。そのため成長期のお子さんや高齢者まで幅広い世代にとって重要な栄養素です。

また前立腺、膵臓など生殖機能や消化機能にも関係しているため、日常的な不調などももしかしたら亜鉛不足が原因かもしれません。

さなに亜鉛は酵素との関係が深いことも特徴です。

酵素とは身体を正常に保つための材料となるものであり、消化酵素などがよく知られています。これらの酵素を活性化しているのが『亜鉛』です。
これを知ると、亜鉛が少なくなることにより身体の調子が悪くなるという流れがよくわかると思います。

さらに亜鉛はホルモンにも関係しています。ホルモンで有名なものとしてインスリンがあります。インスリンは血糖値を下げる働きがあり、このインスリンの効き目が悪くなる状態が糖尿病です。
つまり亜鉛が少なくなることで糖尿病になる可能性もあります。
その他にも成長ホルモンや甲状腺ホルモンなどホルモンはたくさんあります。これらの働き一つ一つに亜鉛が関わっています。

その他にも白血球などの免疫細胞にも多く含まれているため、免疫力にも関係します。感染症予防にも重要ということになります。

亜鉛欠乏による症状をまとめると、
疲れやすい、不眠症、うつ、皮膚症状、下痢、口内炎、風邪をひきやすい、不妊症、貧血、記憶力の低下、成長不良など他にもたくさんあります。

その中でもよく起こりやすい症状が味覚障害です。
特にがん治療の副作用などで亜鉛不足になる際によくみられますが、加工食品などの増加に伴い、高齢者の中でも味覚障害が出ていることがあります。


亜鉛が大事な働きをしていることはわかっていただけたかと思いますが、問題は欠乏状態にならないようにすることです。



まず初めに気を付けることが、ストレスです。
このストレスによって亜鉛が多く消費されるため、亜鉛不足になりやすい傾向にあります。

次に食事の偏りです。

亜鉛は貝類や牛肉、卵や納豆、玄米などに多く含まれています。
食事の偏りがあることで、亜鉛不足になる可能性があり、特に加工食品や添加物の多く食事になると、亜鉛を消費してしまい、結果欠乏状態となります。

最後に食事量がそもそも少ない場合です。
過度なダイエットで食事を制限している場合や高齢者で全体的な食事量が少なくなっている場合があります。
この場合は亜鉛に限らず、すべての栄養素が不足している可能性がありますので、総合的な介入が必要です。


亜鉛は過剰に摂取すると急性中毒を起こす可能性もあるため、まずは食事からが基本です。
採血などで亜鉛不足が明確に分かっている場合などは、お薬やサプリメントという選択肢もあります

気になる場合は診察時にお問い合わせください。



いかがでしょうか。

あまり聞き馴染みのない亜鉛ですが、とても重要な働きをしていることがよくわかったかと思います。

高齢者や病気の方だけではなく、妊婦さんや成長期の子供さんにも考えていくべき栄養素です。

身体の症状と日々の食事や生活に目を向けて、より豊かな生活を送れるようにこれからも一緒に考えていきましょう。