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エッセイ/短編/音楽/スピッツ/ミスチル/SixTONES

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文字から滲む思いに浸る

昔から文章を書くのが好きだった。学生時代は勉強の合間に自作の小説を書いていたし、何かあるごとに詩を書いていた。それは特に何かを目指していたわけでも、読み手を意識しているわけでもなかった。ただ書くのが楽しくて、自分の中から溢れてくる感情を昇華させていた。 そんな中、小学校高学年になると交換ノートが流行り、中学生になると手紙が流行った。これらは自分ひとりで書いているものとは違い、相手ありきで文章を書くものだ。どちらかと言うと会話に近いかもしれない。 友人とノートや手紙を交換す

    • レモンが運ぶ至福のひととき

      元気が出ない朝。ベッドでごろつく休日。気持ちが張り詰めて眠れない夜。 温かい紅茶に自家製はちみつレモンを落とす。 スライスされた鮮やかな黄色。ふわっと香るフレッシュな酸っぱさ。 紅茶を口に含むと優しい甘さが広がる。 ―――ああ。生き返る。 私はあまり体力や気力に満ち溢れた人間ではない。そのくせ、好奇心だけは人一倍強くて、気になることはやってみないと気が済まないし、幸せなことに友人からお出かけのお誘いをいただく機会も多い。知らず知らずのうちに自分の体と精神を酷使して、ふとし

      • 忘れられないずるい男

        「ゆかり、地震大丈夫だった?」 深夜に震度6の揺れを経験した翌朝。親しい友人たちからの連絡にまざって、ヤツからのメッセージがあった。 私たちが別れてからもう7年経った。独身の私に対し、ヤツは早々と結婚をした。それにもかかわらず、いまだに年に数回連絡が入る。 私自身はもう特別な好意を抱いていない。ヤツもそうだろう。 連絡の内容はさまざま。天変地異の心配、共通の友人の結婚、私が暮らす街の近くに旅行に来たこと。取るに足りないことばかりだ。 返事をしないといけない義務はない

        • わたしの腰には何かが憑いている

          昨年からずっと腰が重い。歩いているとき。椅子に座っているとき。寝ているとき。ずっしりとした重みとたまにピリッと感じる痛み。寝がえりを打とうとすると、金縛りのように腰が動かせない。私の腰にまとわりつく「何か」はどうしたら去ってくれるのだろうか。 世の中に腰痛持ちの人はどれくらいいるのだろう。私は高校時代から腰痛持ちだ。直接的な原因ではないかもしれないが、通学中の自転車事故が長年に渡って影響している気がしている。学生時代は長時間机に向かっていると、腰やお尻の奥の方が痛くなってく

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          痛みとともに迎えたありがたき新年

          そろそろ日常を取り戻そう。そう思ってPCの前に座っている。というのも、年始から1か月近く体調を崩していたのだ。そのうち2週間近くは声が出なかった。 始まりは大晦日。微熱が出て少し喉が痛かった。もしかしてコロナかも、と思い検査を受けたが結果は陰性。微熱とともに年を越すという、新年の始まりとしてはなんとも心もとないものとなった。 そんな大晦日は人生で初めてジャニーズカウントダウンを見た。SixTONESというジャニーズのアイドルのファンになったためだ。テンションはあがるがひた

          痛みとともに迎えたありがたき新年

          あの日の夜景はもう見られないと悟った

          職場の同僚に誘われて、先日長崎を訪れた。私も彼女も長崎は2度目。しかし、6年前に訪れた私に対して、彼女は幼少の頃に訪れたらしく記憶がないという。そこで、王道の長崎観光ルートを満喫しようということになった。 2人とも写真を撮るのが好きなこともあり、写真映えするスポットを調べながら旅程を立てた。彼女はツアーコンダクターさながらにてきぱきと計画を決定していく。私はただ「それいいね!」と言うだけになってしまっていることに申し訳なさを感じつつも、こういうことは得意な人が進めるのが一番

          あの日の夜景はもう見られないと悟った

          出来ないからこそ出来たこと――当たり前を越えていけ

          記事タイトルを見て「どういうこと?」と思った方がいるかもしれない。私がこの記事で伝えたいのは、「出来て当たり前なことが出来ないのは、みんなが出来ないことを出来るようになるきっかけだ」ということ。うん、ややこしい。 ――あなたは当たり前のことを当たり前に出来るだろうか? 学校に行く、仕事に行く、ご飯を食べる、寝る、友人と話す、など世間一般に当たり前だと思われていることはたくさんある。例えば、ここに書かれていること全部出来るよ、という方もいるだろう。一部なら出来るよという方、

          出来ないからこそ出来たこと――当たり前を越えていけ

          最高の表現者集団。ジャニーズらしからぬアイドル、SixTONESって知ってる?

          NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』で話題となった、「稔さん」。稔さんを演じている松村北斗がジャニーズのアイドルだということはご存じだろうか。すっきり爽やかで整った顔立ちの彼は、アイドルというより役者顔である印象を受けるが、所属しているSixTONES(ストーンズ)ではにじみ出る色気でファンを魅了している。 「ああ、ジャニーズの話ね。」と思い、読むのをやめようとしたみなさん。そんなみなさんにこそ、この記事を読んでいただきたい。 というのも、SixSTONESはジャ

          最高の表現者集団。ジャニーズらしからぬアイドル、SixTONESって知ってる?

          ふらり近所の老舗酒店へ

          家の近くに、地元の酒好きの間では有名な老舗の酒店がある。 商店やカフェが軒先を連ねる通りの一角。 ひっそりと佇むその店の店内は酒で溢れている。ワイン、ビール、日本酒、焼酎、洋酒。なんとなく種類ごとに仕分けはされているが、様々な瓶が所狭しと並ぶ様子はまるでおもちゃ箱のようだ。雑多なようでいて、酒のひとつひとつが際立って見える。 「今日はどうしたん?何かお探しかな?」 店内に踏み込むと店主のおばちゃんが声をかけてくれる。齢70近いというおばちゃんの接客は、元気でさっぱりし

          ふらり近所の老舗酒店へ

          観葉植物が私の部屋に光を呼んだ

          6時半にスマホのアラームで目を覚ます。 ――眠い。あと5分。 そう思いながらも、暖かい布団からのそのそと起き出し、部屋のカーテンを開ける。差し込む早朝の陽光が窓際のガジュマルの木に当たる。まだ成長途中の小さな木が嬉しそうに見える。 つぎに、寝起きのふわふわとした意識の中で、背丈の半分ほどあるゴムの木を窓際へと運ぶ。 ――たくさん光を浴びて元気を出しておくれ。 通常は部屋のデスク近くに置いているが、仕事に出かける前に窓際へ移動させるのだ。 そうこうしていると、徐々に

          観葉植物が私の部屋に光を呼んだ

          懲りない酒吞みたち

          「僕たちみたいに酒が強いとなかなか酔えなくて困るよね」 「カシオレとか何杯飲んだら酔えるの(あんなの一生酔えないよね)?」 0次会と称した立ち飲みバー。すでにほろ酔いなのでは?という様子でこう豪語していた男は今、私の前で吐き気を催している。 ――いい加減にしてくれ。 心の底からそう思いながら、全力で彼を店のトイレに押し込んだ。 *** 「日本酒の会」という名称で、職場の若手の日本酒好きが集まったこの会は今回で3回目。私も含めた女性3名と男性が1名の計4名で構成されて

          懲りない酒吞みたち

          軽やかに悟りをひらく――藤井風『帰ろう』

           ある日ふとこの曲を聴いて、一気に心を奪われた。  はじめて聞いた時は歌詞の内容というよりも、音楽のやわらかさと壮大さを感じた。Bメロからサビに入った瞬間に、ぶわっと世界が広がって心がのびやかになる感じ。初夏のぽかぽかした空気のなか、木陰で芝生に寝っ転がって、風が頬を撫でる。「あ~心地いい。最高。」っていう、そんな感じ。  この曲を気に入ってからは、何度も何度も繰り返し聞いている。そうする中で、歌詞に対しても考えるようになった。とはいえ、私は歌詞の考察をするつもりもないし

          軽やかに悟りをひらく――藤井風『帰ろう』

          花を飼うススメ

          淡くてまろやかな桃色に惹かれて、芍薬の花を買った。 右手には夕食のための食材が入ったエコバックを持ち、左手には1本の花を持つ。わたしが通うこのスーパーの入り口には、小さな生花店がある。つい最近までは、桃や桜などの枝ものが並んでいたのに、いまでは色とりどりのガーベラやカーネーションで埋め尽くされている。 最近『花のある生活』が流行っているように思う。定期的に家のポストに花が届くようなサービスに登録している友人も多い。毎日の単調な暮らしに、花の華やかさを求める人が多いのだろう

          花を飼うススメ

          香りが誘う記憶の旅

          土曜日の昼下がり、部屋の窓を大きく開く。 雲一つない大空。 庭の花の香りを纏ったもわっとした暖かい空気が一瞬で部屋へ入ってくる。 おそらくきちんとした生活をする人は、朝一番に窓を開けて澄み切った新鮮な空気を取り込むのだろう。しかし、私はこの日向ぼっこの香りがする空気を取り込む瞬間が無性に好きだ。 香りとは不思議なもので、私の印象深い記憶たちは全て香りとつながっているように思う。 春の夜の湿った空気の香りと、ともに立ち上がる芝生の香り。それらを感じるとき、私は一瞬で学生時

          香りが誘う記憶の旅