観葉植物が私の部屋に光を呼んだ


6時半にスマホのアラームで目を覚ます。

――眠い。あと5分。

そう思いながらも、暖かい布団からのそのそと起き出し、部屋のカーテンを開ける。差し込む早朝の陽光が窓際のガジュマルの木に当たる。まだ成長途中の小さな木が嬉しそうに見える。

つぎに、寝起きのふわふわとした意識の中で、背丈の半分ほどあるゴムの木を窓際へと運ぶ。

――たくさん光を浴びて元気を出しておくれ。

通常は部屋のデスク近くに置いているが、仕事に出かける前に窓際へ移動させるのだ。

そうこうしていると、徐々に頭が覚醒してくる。
「今日も仕事かー!!」


こうして書いてみると、わたしの朝はとても規則正しく、爽やかだ。
しかし、この生活は突如として始まった。

きっかけは2本の観葉植物を部屋に迎えたこと。職場の人間関係で憂鬱な気分になることが続いていたため、少しでも癒されたいと考えてのことだった。数週に分けて店を数件周り、種類や葉の様子などを比較し、一番気に入ったものを選んだ。

その時点でかなり愛着というものが生まれていたわけだが、部屋に迎えて毎日眺めたり水をやったりすることで、それはどんどん増していった。部屋のどの位置に置けば一番日当たりがいいか、どのように水をあげればより活き活きするのか。毎日考え、頻繁にネットで検索しては、それを試した。ゴムの木はビールで拭くと良いことを知り、一枚ずつ丁寧に拭くこともある。

正直それらを行っているだけでかなり気が紛れ、職場での悩みも気にならなくなった。もともと花をよく飾るようにしていて、植物の癒し効果は十分知っていた訳だが、切り花とは違って「育てる」という側面が強い観葉植物は、手がかかる分癒し効果が高いように感じる。

そのように可愛がっていると、少し葉に元気がないだけでも心配になる。育て始めて1週間の時点で、2種類ともに元気がなくなったことがあった。ゴムの木に関しては、少し葉が丸まってしまったのだ。慌ててネットで解決策を検索すると、日光不足の可能性が一番高いと分かった。

――ぐうたら寝ていたらこの子たちが死んでしまう!!

その不安から、私は一念発起した。朝は出勤の準備前に余裕をもって起きる。そして、早朝の光を取り入れるべく、真っ先にカーテンを開けるのだ。出勤してから帰宅までの間、十分に光を浴びられるようにゴムの木の移動も行う。



こうして冒頭へと戻る。

今ではそれぞれの木は日光を浴びてすくすく育ち、ガジュマルの木に至ってはいくつも新芽を出している。まるで子育てをしているかのように、少し目が出た、伸びた、などと小さな喜びを感じる毎日だ。

なにより、一番良い効果を得たのは私自身だ。毎朝気持ちよく早起きし、幸せをもらい、帰ってきて緑を見ては癒される。それに加え、早起きをするようになってからは、出勤前に少し手の込んだ朝ごはんを食べたり、部屋の整理整頓をしたりと、自然と生活全般を整えるようになった。観葉植物が私の部屋に光を呼び込み、私自身もその恩恵に預かったというわけだ。


ぐうたら時代の私しか知らない友人たちに、近況報告でこの話をすると、必ずみんな口を揃えてこう言う。

――え!!あのももが観葉植物のためだけに起きてるの?嘘じゃないよね!?

そんな私は、ついに明日から出勤前に英会話を始める。出勤ぎりぎりまで寝ていた頃の自分に、今の自分を見せてあげたい。そして、この生活が続いていくことを祈るばかりである。とりあえず今日はいつも以上に早く寝ることにしよう。


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