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富士山自然図鑑⑦(ラジオ原稿)「宝永火口の大崩落」※無料

みなさん、こんにちは。富士山自然図鑑を担当します富士山ネイチャーツアーズの岩崎です。
読書の秋、食欲の秋、スポーツの秋・・・。秋の楽しみは沢山ありますが、みなさんはどんな秋を楽しんでいますか?富士山では紅葉もはじまり、秋の行楽シーズンをトレッキングで楽しむ方も増えてきています。今日は秋のトレッキングのススメと注意についてお話したいと思います。

カラマツの黄葉が美しい第三火口

秋のトレッキングの楽しみと言えばやはり紅葉。富士山五合目ではカラマツの黄金色の黄葉が10月の半ば頃にピークを迎えます。森林限界付近の木々は背丈が低いため目線の高さで美しく色づいた黄葉を楽しむことが出来ます。また、この時期は富士山頂の冠雪も期待できるので、秋晴れの日には冠雪した山頂の白、抜けるような秋の青空、黄金色のカラマツの織り成す色彩豊かな富士山が時間の流れを忘れさせてくれること間違いなしです。温かいコーヒーなんかが手元にあればもう最高ですね!そして、私のオススメスポットは富士宮口からアクセスする宝永火口。壮大な火山景観と秋色の富士山を堪能できます。あっ、それから双眼鏡を持って行くのもお勧めです。火口の縁の荒々しい岩盤や山頂の様子を間近に楽しむことが出来ちゃいます!

岩脈が荒々しく露出する第一火口上部

さぁ、今すぐにでも出かけたくなるところですが、しっかりと準備をしてからお出かけください!秋の富士山は急激に気温が下がります。晴れていても気温が10度を下回ることは当たり前。風が吹けば体感気温はすぐに5度程度まで下がります。フリースなどの上着に加えて、ダウンジャケット等も必ず携行していきましょう。また、季節に関わらず山の天気は変わりやすいので、レインウェアや手袋はどんな天気の良い日でも必携!水分や行動食もお忘れなく。

そして、現地に着いてからも野外での活動には危険がたくさん。9/15、宝永第一火口で大変大きな崩落が発生しました。人よりはるかに大きな岩が、火口上部3000m付近から無数に転がり落ちていく様子を、偶然居合わせた私たちは離れた位置から眺めていました。轟音と共に岩盤が崩れ、砂煙を上げながら山肌を転がり落ちる岩の一部は、猛スピードで登山道を横切り、火口の下でようやく止まりました。幸運にも火口内に人はおらず、登山道を歩く人たちの間を岩がすり抜けていったため、けが人は出ませんでした。

登山道上の白い点と列は人!人よりはるかに大きな岩が下り落ちる様子

富士山はスコリアと呼ばれる砂のような地層と岩盤が、ちょうどミルフィーユのように積み重なってできていて、火口の縁はそれぞれの地層が露出しています。強い風や雪解けなどでこの砂の層が流れると、岩盤がひさし状に突き出し、自身の重さに耐えられなくなった岩盤が崩れる、というのが崩落のメカニズムです。火口や谷地形で崩落が頻発するのはこうした理由からです。休憩時はこうした地形をしっかりと理解し、安全な場所を選定することがとても重要です。

砂の層と岩盤が交互に積み重なる

しっかりとした準備と危険を把握し、自然を正しく恐れることが、自然と楽しく向き合うためには欠かせません。今年の秋は自然への畏敬の念を心に宝永火口トレッキングに出かけてみてはいかがでしょうか。

最後までお聞きいただきありがとうございます。富士山ネイチャーツアーズ岩崎でした。

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