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管理職の多様性

先日、ある大手企業の関係者Aさんとお話する機会があり、Aさんから同社のマネジメントの実情をお聞きしました。Aさんの話の概要は、次の通りです。

・社長は、経営情報(経営方針や社長の思い含む)が上級管理職者によく伝わっていると思っている。実際に、上級管理職者とは頻繁に経営ミーティングを行っている。そして、上級管理職者が各部署の社員(初級管理職者+非管理職者)にそれら情報を浸透させてくれるのを期待している。しかし、上級管理職者は社員に直接伝える機会をつくっていない。

・Aさんが所属する部署では会議がまったく行われない。情報共有するためのインフラも使われていない。よって現場情報の共有もまったくない。ましてや、上級管理職者から部下の社員に対して経営情報を伝えるなどあるはずもない。各部署が似たような状況。

・むしろ、意図的に伝えていない面がある。そうする理由は、「部下は上司(自分)に命じられたことをやっていればよく、経営情報など知る必要がない」と考えているから。また、自分を含めた上級管理職層だけが経営情報を握れていることがステータスで、優越感に満たされたいのもあるようだ。部下に対するこの姿勢は、部下が女性社員だけの部署においてその傾向が顕著である。「スタッフ職は余計なことは知らなくてよい」といった雰囲気。

・部下の側も上記の風土を当たり前のこととしてきた傾向がある。経営情報は自分たちが知るべきものでもないと思っている。改善のための提案などに至っては、そういうことをやるという発想すらまったくない。この傾向は、女性社員のほうが顕著である。

・社長も現状がよいとは認識していない。管理職者に経営情報を浸透させるよう徹底させると同時に、毎日の朝礼で経営に関する話を伝えていくことや、メッセージを込めた動画を毎週つくり社員全体に直接届けることに取り組み始めた。

絵にかいたような旧態依然とした管理職の行動様式です。管理職者が、社内の階層間による情報格差で自身の優位性を成り立たせようとするなど、昔話のような世界で、いまだにこういう発想なのかという印象です。

女性社員に対しての対応で旧態依然さが特に顕著だということで、聞いてみたところ、やはり女性役員も女性管理職者もゼロということでした。女性管理職者がひとりでもいれば、上記のような風土は変わりやすくなるのではないかと思います。

「女性管理職○%」「女性役員○%」「女性議員○%」などを目標化することの是非を聞くことがあります。このことにはいろいろな見方があるでしょう。その人に期待役割を果たす有能さがあるかどうかが問題であって、属性の比率で仕切りを入れるとかえって不公平、という意見もあります。もっともな意見です。

一方で、上記のような風土の組織であれば、当事者に向かって「意識を変えろ」「行動を変えろ」といっても、変化はなかなか難しいものです。また、有能な女性社員がいたとしても、本人もアピールしようと思わないし、アピールがあっても上司の側も評価しようとしないでしょう。よって、「女性管理職者○%」などの形から入ったほうが、変化させるのは早いと考えられます。この観点からは、属性の比率実現を目標化するのも、場合によっては意義があると言えそうです。

同社は、今後上場を目指してガバナンスを整備する方針だそうです。よって、女性役員や女性管理職者の比率も問われてくることになるだろうとAさんは話していました。その結果、風土がどのように変わったのか、今後またお話を聞いてみたいと思います。

上記に関連する内容を以前投稿しました。よかったらご参照ください。

<まとめ>
女性管理職の登用比率といった目標は、効果が期待できる面もある。


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