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人・組織・経営の最前線(2)

前回のコラムでは、「日本の人事部」が主催する「HRカンファレンス」に参加して感じたことをテーマに取り上げました。「人・組織・経営」についての最前線の事例や考え方に触れ、全体感としての印象を下記3点挙げました。
https://note.com/fujimotomasao/n/n483a4e67541a

1.コロナ禍の環境における新常態を前提とする
2.ベンダーとの積極的な協業を目指す
3.各メンバー・チームが果たすべき機能を極めていく

今日は、その続きです。

4.経営者から新人まで一体となって風土づくりを目指す。

「組織風土」という言葉はよく使われるが、「従業員風土」という言い方はしない。

同カンファレンスのプログラム中にお聞きしたこの言葉が印象的でした。
この言葉は、2つの示唆を含んでいると言えます。

ひとつは、従業員だけではなく、経営者も役員もその風土をつくりあげる重要な要素であるという点です。私も普段様々な企業に伺う機会がありますが、組織風土を本当に変えようと思っていてその実現に向かっている企業は、例外なく経営者・役員が先頭に立ってその取り組みの企画・実践に参画しています。そして、よりよい取り組みにしようと、外部の協業者との連携にも意欲的です。

他方、組織風土を変えることを目指しながらも進捗しない企業は、往々にして経営者や役員が実質的に関与していない場合が多いものです。極端な例では、風土改革は単なるスローガンとして叫ばれているだけで、経営者や役員が実は改革に後ろ向きで、改革を止める最大のボトルネックになっていたりします。そういう状態ではうまくいかないのは、「従業員風土」ではなく「組織風土」であることを考えると明白でしょう。

ふたつめは、風土をつくりだすのは従業員や経営者などの「ヒト」だけではなく、その組織に存在する制度、ルール、インフラなど仕組み面での「システム」も含むということです。例えば、毎日当たり前のように行われている朝礼も、システムの一部であり、そのあり方は企業によって様々です。どのような朝礼のやり方をしているかにより、そこから生み出される組織風土の一端は変わってきます。

同カンファレンスで複数企業の風土改革の事例を聞きました。興味深かったのは、事例で聞いた日本企業も外資系企業も、風土改革の抵抗勢力に対して真正面から切り込むことはしないという話です。「変わるべき」という正義感を真正面からぶつけると分断を生む。相手方に対し「反対分子」といった言葉を使っている時点で、分断を煽っているという指摘でした。確かに、各国の選挙の様子などを見ていると、このことはどの社会にも普遍的に当てはまるのかもしれません。

すなわち、「反対分子」とは、相手のほうに責任を持たせている言い方である。風土が変わっていくことを「学習プロセス」とみなして、学習を妨げている要素をどうすればよいか考えていく視点が大切、それを実現させるには対話によるお互いの理解は欠かせない、ということです。

風土変革における、こうしたサーバントリーダーシップのような進め方は参考になるでしょう。

ただ、すべての組織において上記のスタイルが効果的とは限らない、と考えておくべきでしょう。同カンファレンスで事例になるような企業は、組織開発に関する意欲・知識・実践力において、社員(組織の構成員)がそれなりの成熟度であることがほとんどです。そうした組織においては、変革にあたって社員からの意見提案や対話を促すようなリーダーシップが有効かもしれません。

他方、「風土」と言われてもピンとこない、他組織と比較するなどして自組織を客観視できないなど、組織開発に関する社員の感度・成熟度が低い場合は、意見提案や対話などと言われても何をしていいかわからず、社員は混乱するだけかもしれません。そのような状況では、権威型・指示型を前面に出してぐいぐい進めるリーダーシップのほうが有効かもしれません。

いずれにしても、経営者も役員も含めてその組織に関わる人全員が強くコミットして参画する、ヒト以外のシステムも細部まで見直す、ことが、風土改革には不可欠でしょう。

勢いがあって話題になるベンチャー企業では、人材採用で例外なく、候補者が自社の風土に合う人かどうかをこだわって見極めようとします。風土は、組織の競争力を左右する重大要素であることを、同カンファレンスで改めて感じた次第です。

<まとめ>
「組織風土」であって、「従業員風土」ではない。

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