見出し画像

ビジョン型か価値観型か

先日、ある方(Aさん)に対してキャリアコンサルティングを行う機会がありました(ちなみに、私は国家資格キャリアコンサルタントの登録者でもあります)。その際に改めて、キャリアとの向き合い方は人それぞれだというのを感じました。

当初、Aさんに対するキャリアコンサルティングの目的は、今後のキャリアビジョンを描き、明日からどんなことに取り組むのかの行動計画を明らかにすることでした。前回セッションの終了時に、今回のセッションに向けての事前課題を出しました。その事前課題ワークシートに書き出された内容をもとに今回のセッションを進めていこうとしていました。

そのワークシートは数枚構成で様々な問いかけに対して自分の回答を埋める形式で、例えば下記のような問いがありました。

・これから先、自分がいつの時点でどんな目標を達成していたいか、「自分の未来年表」のシナリオを自由に作ってみましょう。

・何十年後あなたが日経新聞の「私の履歴書」に取り上げられるとしたら、どんな内容になるのでしょうか。自由に考えてみましょう。

・もし余命が残り1年しかないというのがわかったら、何をしたいでしょうか。

こうした問いかけのワークシートに対し、Aさんはほとんど白紙のまま埋めてくることができませんでした。そして、感想として言われたのが、「将来のことを言語化するのは難しい」でした。

Aさんは難関な国家資格合格者であり、仕事に対する評価も高く書物も世に出されていて、言語化能力自体は低くありません。むしろ、大変高いと思われます。言語化能力が低いのではなく、「将来のことについて」言語化するのが苦手なだけなのです。

このことについては、私自身も思い当たります。
本コラムでも時々取り上げる「ストレングスファインダー(ギャラップ社)」は、34の資質を手掛かりに個人の強み・弱みを発見し、能力開発やチームビルディングに活かすものです。診断を受けた結果のAさんと私の共通点は、「未来志向」「目標志向」が大変低いことです。私自身も、「将来どうなっていたいのか」「10年後何をしていたいのか」「何を具体的な達成目標にしたいのか」などの問いかけを正面切って突き詰められると、息苦しくて答えられません。

ギャラップ社によると、「未来志向」「目標志向」の資質について、次のように説明されています。

未来志向:「未来志向」の資質が高い人は、未来と未来にできることを心に描くことで、ひらめきを得ます。未来についてのビジョンを語ることで、人々にエネルギーを与えます。

目標志向:「目標志向」の資質が高い人は、目標を定め、その目標に向かってまい進し、目標達成に必要な修正を行うことができます。優先順位をつけてから、そのとおりに行動します。

未来志向資質の高い人に対して、映画の見方について尋ねると、多くの人が「映画が始まった瞬間からエンディングを想像し始める」「開始数分見たらエンディングがだいたい読める。そしてほとんどが当たる。」といった反応を返してきます。最後まで見ないとエンディングがわからない私などには、どうやったら開始直後に先読みできるのか(そもそも、何で先読みしながら見たいと思うのか)不思議でなりません。これは、各人が持ち合わせている得意資質が違うということです。

こうした資質の持ち主であれば、上記のワークシートの問いかけなどに対しても、スラスラと思うところを書き出していくことが比較的容易で、「自分の将来ビジョンができあがった」のような展開も期待しやすくなります。実際、以前「未来志向」が高い別の方に上記の問いかけをもとに自身のキャリアビジョンを考えていただいたところ、スムーズに進んで「これはいいですね」という感想を得ていました。

もちろん、「未来志向」「目標志向」が低くても、別の資質をうまく使って、10年後に何を達成していたいかなどの将来目標を具体化することができる人もいるでしょう。しかし、一般的な傾向としては(私のこれまでの経験からも)、両資質がダブルで低いと、将来のビジョンについて言語化するのが苦手という人が多いと思われます。

企業の経営戦略策定であれば、未来のビジョンを描く工程をそれが得意な別の人に任せて、苦手な人は別の工程で貢献するということも可能でしょう。しかし、個人が自身の未来についてのキャリアビジョンを描く工程では、そういうわけにもいきません。

それでは、どのように対応したのか。
キーワードを「ビジョン」ではなく「価値観」に置き換えて取り組むことにしたのですが、どのような内容だったのかは次回以降のコラムで取り上げてみたいと思います。

<まとめ>
将来のビジョンを言語化するのが苦手な人もいる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?