メンバーに継続を促すリーダー

先日、ある会社の社員数人の方にお話を聞く機会がありました。同社様では中小企業ということもあり、社長と社員の距離が近いことが印象的です。

同社様では、社長が頻繁に社員の役割を見直したり、担当業務を変更したりしているそうです。社員の希望、強みや特徴、会社の方針を加味しながら、社長なりの最終判断に基づいてのアクションです。そして、社員に対して、自分の仕事を継続させて取り組んでもらうよう、社長が率先して働きかけているようです。

社員の方からは、次のようなお話を複数人からお聞きしました。社長との電話でのやり取りでは、仕事への不安などの感情があふれて泣き出してしまうと言う人もいました。

・「自分の新たな担当業務だとされた仕事にはじめは実感わかなかったが、続けているうちにコツもわかってきた。今は、自分の仕事はこれかなと思えるようになってきた。」

・「社長からは、毎日いろいろなメッセージが個別に届く。メールがきたり、(おそらく社長が文字メールで伝わらないと思ったときは)ボイスメールがきたりする。電話がかかってくることもある。仕事に行き詰まっている時も、そうしたコミュニケーションの中で自分を振り返り、もう一度やり直してみようと思えることも多い。」

お話からは、慣れない仕事に継続して取り組んでもらうための行動を、社長がこまめにとっているのが伺えます。同社様は、増収増益を続けている会社です。もちろん、このことだけが増収増益の要因ではありません。その上で、業績を伸ばしている会社は、経営者・上司が社員のパフォーマンスを高めることにつながるアクションを相応にとっているのだろうと感じるエピソードです。

中小企業の特に若手社員は、素直な人が多く見られます。社長からじかに激励やアドバイスがあると、そのまま受け入れて張り切って仕事をする人も多いでしょう。同社長の姿勢には学ぶべきものがあると思います。

「好きこそ物の上手なれ」と言われます。その意味は、「好きな事にはおのずと熱中できるから、上達が早いものだ。」(コトバンク)ですが、ポイントとなるのは「好き」と「上手になる」の間にある要素だと考えます。つまりは、下記の通り「取り組みの継続」です。

何かが好きである→好きだから熱中してその何かに「継続」して取り組む→「継続」するから考え方・知識・技能が身につく→考え方・知識・技能が身につくので、その何かがうまくいくようになる→うまくいくので面白くなってその何かがより好きになる→・・・(正のスパイラル)

上記の流れでは、途中の要素から始まっても成立するはずです。例えば、「好きではないがひたすら継続する」→「考え方・知識・技能が身についてうまくいくようになり面白くなった」→「好きになってきた」ということです。

稲盛和夫氏の著書「誰にも負けない努力」には、「自分の仕事を好きになる努力をするべきだ」ということが書かれています。同書には、以下の箇所があります。

~~努力をして仕事を好きになる。本当に好きになったら、「誰にも負けない努力」ができる。そうして一生懸命に働く中で、創意工夫して仕事を進めるようになり、やがては素晴らしい成果ももたらされる。また、自分の魂を磨き、美しい心をつくっていくことにもなる。~~

同書の示唆は、上記のことを指しているのではないかと考えます。すなわち、ひたすら継続するという努力をするうちに、取り組んでいることが好きになるということです。

創業者やそれに準じる経営層は、自身の仕事に対する興味や仕事観が、会社と一体となっています。しかし、経営層でもない社員に、最初からそれと同じレベルの仕事への興味を求めるのは無理があります。自分がつくった会社・選んだ仕事ではなく、あくまでも命じられた仕事だからです。よって、「頑張って仕事を好きになれ」と言うだけでは、社員は簡単にそうはならないでしょう。

経営者や上司の社員や部下に対する役割は、「頑張って仕事を好きになれ」と言って放任するだけではないのでしょう。本人がそれを好きになると思えるまで、今の仕事を継続させて取り組むよう指導・育成・見守ることが、役割であろうと思います。(もちろん、担当の仕事についての意識・能力共に十分に高い社員に対して、過干渉は不要ですが)

上記の社長は、まさにそのモデル例だと思います。

<まとめ>
メンバーに取り組みを継続してもらうための努力が、リーダーには必要。


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