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「成果」「役割」に基づくマネジメント

前回までの投稿で、オンラインでの社員間コミュニケーションや、社員に対する監視の必要性有無について考えてきました。その中で、「成果」「役割」「目的」「個別」に基づくマネジメントがしっかり実現できていれば、本質的には監視は不要ではないかと言及しました。

今回は、「成果」「役割」について深掘りしてみます。

1. 成果マネジメント
各人が具体的に何をアウトプットするのか(どんな成果物を生み出して貢献するのか)を、客観的な基準で明示し、それに基づくマネジメントを行うことです。例えば、ある仕事について100アウトプットするのに、8時間かかる人と1時間でできる人がいたとします。その場合、究極的には、8時間かけた人と1時間で済ませて7時間遊んでいた人の価値は、全く同じであるべきです。

以前から「成果主義」が叫ばれ、成果に基づくマネジメントの実現は課題だと言われながら、なかなか進みませんでした。その理由は、大きくは2つに集約されると思います。

・「頑張る」過程に価値が置かれ、成果より「頑張り」が高く評価される。
・各人に求める「成果」が何なのか、結局定義しきれていない。

「頑張る」は、言うまでもなく尊いことで、価値があります。頑張った人、頑張らなかった人で、明日成長している人は、おそらく頑張った人のほうでしょう。しかし、「頑張る」自体に対しては、企業が対価を払う価値は何もありません。

例えば、Aさんの頑張りを周囲の人が見ることで周囲に良い影響を与え、社風をよい方向に変え、社員満足度調査でも「Aさんから毎日の活力をもらっている。評価したい。」と100人が特記事項で答えたとするならば、それはAさんの成果と言えるかもしれません。逆に、「Aさんが頑張るのはいいけど、どう見ても非効率で残業して、あれで残業代出てるんだっけ?」と社風にネガティブな影響をもたらしているなら、頑張った分ほど評価をマイナスにする必要があるかもしれません。

私たちは、どうしてもかけた時間に単純比例して達成した仕事量を想定したくなる傾向があります。テレワーク全盛となる中では、この呪縛からは離れる必要があるでしょう。

また、成果の定義は、決して簡単ではありません。経営に関する問いかけである「ドラッカーの5つの質問」のひとつが「われわれの成果は何か」です。それぐらい難しく、奥が深いわけです。よく言われるのは、「営業は売上を成果と定義できるからシンプル。しかし間接部門は難しい。」です。しかし、売上のみが=成果ではありません。確かに、売上は成果が積みあがった結果最終的に表れる指標ですが、成果そのものとは言えないでしょう。

成果とは、お客様のためになる価値の提供です。お客様にもたらしたよい変化の大きさ、と言い換えられるかもしれません。ここには、企業目的や事業目的、マーケティングの視点も絡んできます。例えば、飲食店だとして、成果が「Aおいしかった」と思ってもらうことかもしれないし、「Bゆったりした時間を過ごせた」と思ってもらうことかもしれない。あるいは、「Cとりあえず食べた感を満たしつつ速く安く食べられた」ことかもしれない。BやCが目的であれば、料理の味そのものはそこまで重要ではないかもしれません。

本という商材も「面白かった」なのか「○○分野の知識が網羅的に得られた」なのか、その両方なのか、目的によって成果の定義が変わってきます。そして、その中で個人が何をどこまで貢献することを本人の成果とし、それをどう測定するのか。ドラッカーが問いにしているぐらいですので、定義は簡単ではないでしょう。

しかし、テレワーク・オンラインで就業可能な仕事は、各人の成果を明確化することは避けて通れません。

2.役割マネジメント
役割とは、割り当てられた役目のことです。成果を生み出すために取り組みが必要なことです。例えば、チームを取りまとめてコト(タスク)とヒトのPDCAを回すチームマネジメントが役目の人もいれば、有力な情報を集めて分析するのが役目の人、ある工程のトラブルシューティングに特化するのが役目の人など、チームとして求める成果は同じでも、求められている個々の役割は様々でしょう。

役割は成果と一体になるものですが、業務によっては両者の区分が難しいこともあるでしょう。例えば、実質的にクレーム対応窓口の機能を果たしているコールセンターのオペレーターなどは、そうかもしれません。

お客様は、元々クレームをつけたくて電話をしてくるのであれば、文句を言われて通常の状態です。早く終話するのがよいとも限らないでしょう。電話の相手に丁寧に寄り添い、不満を解消できないまでも爆発させずに終話するのが役割だとすれば、時間をかけるべき通話もあるかもしれません。ここで、お客様満足度の高さや通話時間の短さ、こなした件数などを成果の指標として持ち出すのは、無理があるでしょう(中には、それが可能なコールセンターもあるかもしれません)。その場合には、「求められている役割を遂行しているかどうか」の視点でマネジメントすることがより重要になってくるでしょう。

顧客の観点では、社外の人だけではなく、社内の人もお客様になり得ます。間接部門の場合、社員を顧客とし、どれだけの価値が提供できたのかが成果となります。担当業務にもよりますが、客観的な基準で成果を設定するのが難しい状況もあるかもしれません。その場合でも、どんな役割の人なのかの定義と、それを実現しているかの確認はできるはずでしょう。

オフィスであれば、こうした個人の成果・役割の明確化がなくとも、「何かできそうなことをその場で見つけて手伝う」「手が空いた様子を見てリーダーが指示し命じた作業を行わせる」あるいは「実は何もしていないがなんとなく仕事をこなしている風に立ち回る」もあり得たでしょう。しかし、個人空間で仕切られたテレワーク・オンライン環境では、それらの行動では仕事として成り立たなくなります。各人の「成果」や「役割」を明確に定義し、それらを達成や遂行しているのかを確認し、必要な改善を施すPDCAのマネジメントが、これまで以上に求められていると言えるでしょう。

<まとめ>
各人の「成果」「役割」の定義・評価が、これまで以上に重要。

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