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買収先の経営者

前回の投稿では、私も担当として一部登壇した「会社の方向付けとしてのM&A」セミナーでの気づきをもとに、M&Aをテーマにしました。
https://note.com/fujimotomasao/n/n63a2cb907777
今日も、その続きです。

買収先の経営を、現在の経営者がそのまま代表を継続するのか、それとも経営者を交代させるのかの判断は、ケースバイケースでしょう。現在の経営者が代表を継続する場合でも、経営チームのメンバー構成を変える必要があります。なぜなら、現在の経営チームでうまくいかなかったからこそ、他者や他人資本の力に頼ることになったためです。現在の経営チームをそのままの状態で残していては、解決になりません。総入れ替えか、一部入れ替えか、現メンバーは残した上で新たなメンバーが参入するのかは、場合によるでしょう。

ここで大切になってくるのは、経営チームをどのようなメンバー構成にすれば買収先企業を立て直し(あるいは発展)させられるかを明確に描き、体制の準備をしておくことです。ある投資ファンドでは、買収先に人材を送り込み経営に深く関与することをポリシーとしていますが、「自社側(買収元側)に、買収案件の事業領域について明確に理解できている人物がいない案件は扱わない」と決めているそうです。つまり、買収先企業の商品・サービス、市場やビジネスモデルについて十分な造形のある人材がいる場合にのみ、案件の対象となってくるということです。

さらには、事業領域について理解が深く、経営の経験があれば、買収先でうまくいくとも限りません。傷んだ状態を立て直すフェーズには向いているが、そこそこ良い状態をさらに良くするフェーズには向かない人材もいるでしょう。その逆もあります。買収先の社風や価値観との相性もあるでしょう。同じ人物でも、うまくいく案件とそうでない案件があります。こうした様々な要因を踏まえた上で、だれを、どんな立場で(代表取締役か、いち取締役か)、何を任せるために(経営、執行、財務、営業など)、何人送り込むか、決めておく必要があります。

それでもうまくいかない場合は、買収元企業の代表者が乗り込んで、軌道に乗せるまで二足の草鞋を履かなければならないでしょう。以前、2社立て続けにM&Aを成功させた経営者様のお話を聞いたことがあります。その方も、やはり最後は自らが乗り込んで経営を行うことで、成功まで導くことができたというお話でした。買収元企業の代表としてM&Aの意思決定を行う場合は、自らが深く入り込む可能性まで覚悟しておく必要があるでしょう。

ポスト・マージャー・インテグレーション(PMI)という言葉があります。M&A後の統合プロセスのことを指し、経営、業務、意識など統合に関わるすべての範囲に及びます。M&Aの成功確率は、せいぜい全体の1/3程度とも言われています。成否を大きく左右するのは、PMIにおける経営チームの選定です。十分な人選が求められるでしょう。

そして、このことは何もM&Aに限った話ではありません。社内の組織再編においても、まったく同じことが言えるでしょう。現状維持では望ましくない理由があるからこそ、組織を再編するわけです。再編後の中核人材は、従来とは異なる陣容になっているはずです。そして、どのような陣容がよいのかは、相応の考察に基づいて決められるべきでしょう。

<まとめ>
買収後の経営チームの構成が、M&A成否のカギを握る。


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