積木蔵   カラマツ吹雪

小説を書く、って、積木みたいなものかな、と。 幼子が、ひとり、夢中で組み立てて、飽きれ…

積木蔵   カラマツ吹雪

小説を書く、って、積木みたいなものかな、と。 幼子が、ひとり、夢中で組み立てて、飽きれば、壊し、壊しては、別のを組み立てて。 そんな、自家製積木の保管蔵。

マガジン

  • 遺族的マイノリティ

  • 廃墟マニア  2018/10  75枚

    本文より   ・・・このようにviridi とわたしは奇妙で神聖な愛をはぐくみつづけたのだったが、人口が減りつづけていくこの国では、あたらしい廃墟に事欠くことはなかった。・・・

  • バードコール 小鳥のくちびる

    一年前に、コロナ禍を題材にして小説を書いてみました。 「マスク」についてもちょっと書いてます。 「マスク」が、今こんなにいろいろと世の中で騒がれることになるなんて思ってもみなかった。 これから何回かにわたって記事にアップして、追加していきます。

  • あなたは犬騒音があるところに住みたいですか、それとも、・・・

    HSP(Highly Sensitive Person) ハイリー・センシティブ・パーソン  主観の小説です。

  • 悪霊誕生

    死後世界・・・? 「おれ」はどうなっちゃったんだろう・・・。   2019年4月に、一応、書き終えた小説です。

最近の記事

  • 固定された記事

ごあいさつ & 収蔵作品リスト

 小説を書くっていうのは、積木みたいなもので、組み立てては壊し、組み立てては壊し。  気に入っても、気に入らなければなおさら、次の積木を。   以前書いた小説で、今読み返して面白いかな、と思えるものを、ぼちぼち、ここにアップしていこうかな、と。     悪霊誕生  2019/04  76枚  全3回           公開 2022/06/07 死後の世界?  「おれ」はどうなっちゃったんだろう・・・?   ことハの独り歩き  2016/06  103枚  全3

    • 一年以上ぶり・・

      一年以上ぶりに、ちょっと、来てみた。 色々あって、放置プレイしちゃってたけど・・・まだ、残存してた(笑 さて、どうしよう。。。

      • 遺族的マイノリティ 後編

         ページを丸めて菊水の菊花のようになっていた文庫本は、生前の妹の愛読書なのだった。  「何度もおなじ本を読んでるので、五回くらいは読んだんか、ってきくと、『五回くらいやあらへんよ』って……」  「あの本は?」と聞くと、ケーちゃんがこたえた。    妹が好きだった食べ物。  子どものころは、トマトと鶏肉。トマトは、ことにあのトロンとしたゼリーのところ。鶏肉は、皮。私は、両方苦手だった。まさに、妹が好きなゼリーの部分と皮のために。気持ち悪かった。ことに鶏の皮はあのなまなましい鳥肌

        • 遺族的マイノリティ 2018/11 110枚   前編

           夜中に、釜の肌を子細にながめるのが慰めのひとつになった。「子細にながめる」とは、また、なんとも矛盾した表現だが。一ヶ月ほど前に手に入れた、「宝暦年時代」の阿弥陀堂釜だ。とても複雑、繊細、豊かな肌をしていた。堂々としているが、口から肩への明瞭でふっくらとしたライン、繊細で優美な羽おちは女性的で、松園の「楊貴妃」を思わせるところがあった。光の加減や見る位置や角度でこれほど印象ばかりか、まるで違うもののように見える釜もはじめてだった。  床の花入れには、カサブランカが活けてあった

        • 固定された記事

        ごあいさつ & 収蔵作品リスト

        マガジン

        • 遺族的マイノリティ
          2本
        • 廃墟マニア  2018/10  75枚
          5本
        • バードコール 小鳥のくちびる
          7本
        • あなたは犬騒音があるところに住みたいですか、それとも、・・・
          2本
        • 悪霊誕生
          3本
        • ことハの独り歩き
          3本

        記事

          廃墟マニア 5(最終回)

           白色LEDが、私たちの頭のうえを、蛇の肋骨のように連なっていった。  「ここも、昔はナトリウム灯のオレンジ色のひかりに満たされていたのよね」  運転席のviridiがなにか感慨深げに呟いた。たしかに、あたらしくはないようで、コンクリートのドーム型の壁面にはよごれや、つぎめから水が漏れているのか黒いシミがところどろこに目立った。それほどきれいな白い肋骨なんて、ほとんど手に入らない、と私は思うともなく思った。壁面の汚れや黒ずみが、骨にこびりついた肉や皮の名残を思わせた。用水路の

          廃墟マニア 5(最終回)

          廃墟マニア 4/5 

           「せっかくだから、担任の名前。小学校一年からの。憶えてる?」  教壇の右手にあったはずの教師の机と座席、viridiはその場所に椅子をもっていくと腰をおろし、脚を組んで、言った。深紅の包みから挑発的に伸びだしたviridiの脚が、五月のそよ風にまばゆかった。だが、窓の外にあふれるみずみずしい葉むらに戯れる光はさらにキラキラときらめいていた。一時期、学校というところがひどく荒廃したことがあった。この教室の窓ガラスのほとんどが割れたまま放置されているのは、まさかその名残というわ

          廃墟マニア 4/5 

          廃墟マニア 3/5

            Viridi、メールありがとう。   Viridi、自分の淫らな欲望を満たすため、欲望のまま、ひたすらひとり快楽にふけっている、そんな女性の姿を見ていると、ぼくは、そのひたむきさゆえに、彼女のことをとてもいとおしく、かわいく感じてしまうんだが……。   あの廃れた産院でのviridiは、まさにそんな感じだったよ。   Viridiちゃん、って呼びたくなる(笑     お じ さ ま(笑   Viridiちゃん、ですか?(笑   いくらわたしが「ベルバラ」を知らないからとい

          廃墟マニア 2/5

           ボンペーイ展のことがあって一ヶ月ほどしてから、viridiからの最初のメールが入った。Viridiからのメールはいつもこんな調子で、だいたい一ヶ月周期でくる。待ちあわせの公園へ行ってみると、viridiは車で来ていた。  「今日は一緒に行ってほしいところがあって」  車を発進するなりviridiは言った。やはりviridiの体をつつんでいるのは深紅の、タイトなワンピースだった。 「ああ、いいよ」  いまさらどうすることもできない私は適当に返事をした。  市街地から逸れて、田

          廃墟マニア 1/5 (2018/10 128枚)

           子どもの頃から、朽ちていくようなものが好きだった。道路に、車に撥ねられた猫の死骸をみつけたりすると、夜中に、そっと秘密の場所に移したりした。路上にほったらかしにしておけば、くり返し乗用車のタイヤに熨されて、パリパリの羽毛煎餅のようになってしまう。おなじ朽ちていくとはいっても、それではだめだった。秘密の場所は各所にあった。友達と共用のものもあれば、私だけしか知らないものもあった。猫の死骸などを見つけると、遠くまで運ぶわけにもいかないので、現場の近くにあたらしく増設することもあ

          廃墟マニア 1/5 (2018/10 128枚)

          バードコール 小鳥のくちびる 7(最終回)

            メ カ ク シ   ぇ、……     めかくし、しておけばよかったね、ひばりくん…………  「でも、チャットだから、できちゃう。……ほら、もうひとりのコルリが、ヒバリくんに目かくし……こっちのコルリは、アンダーシャツのうえから、ひばりの、肌と、肉と、内臓と、ふれるかふれないかで愛撫しつづけたまま……」  ふたりの、コルリ……。心臓が冥い体液のなかにとぷんと落下して革袋そのものもが鼓動になったようにくらくらとした。  「ff、めかくし、よ、ヒバリくん」

          バードコール 小鳥のくちびる 7(最終回)

          バードコール 小鳥のくちびる 6/7 

            ヒバリくん?   なにかあったの?   ここ二三日さえずりがきこえないみたいで。   元気かしら?   あ、コルリさん   心配してくれて、ありがとう。   はい、平気です、元気にしてます。   そう、よかった。   じゃ、またね。   あ、そうそう、こんどは、なにを交換しようかしら?  何を……  「uffu、ヒバリくんったら、あんな画像おくってくるんだもん」 つぎに会ったとき、部屋に入ってくるなり、挨拶もそこそこに、とろけそうな声でコルリは言った。  

          バードコール 小鳥のくちびる 6/7 

          バードコール 小鳥のくちびる 5/7

           うふふ  見せて ヒバリくんの ci cu bi 「コルリさんの、うなじも」   はい 交換ね    約束の時間にすこしおくれてコルリはやってきた。今日はぼくが部屋をとっていた。ぼくははずかしかった。コルリの言うとおり、乳首なんていっても、夏にプールや海水浴にでもいけば男の乳首なんてめずらしいものではなかった。はずかしいだけじゃなく、人のかたちをした革袋のなかの冥い体液はぷちょんぷちょんとゆらめき、波だっていた。女のうなじだって。髪をまとめてアップにしていれば、夏なんて、街

          バードコール 小鳥のくちびる 5/7

          バードコール 小鳥のくちびる 4/7

           わたしは、いま、疎外感とジレンマにさいなまれている。「私」がこれからもこのままこの回想をつづけるべきかどうか。気軽にわたしは現在の「私」からこの回想をはじめた。その時「私」は当時のわたしとほぼ等身大で、ズレやすきまを感じることもなかった。たが、語りすすむにつれて、当時のわたしの行動や感情を「私」ですべることがしっくりこなくなっていることに気がついた。時にはもどかしさや苛立ちや乖離さえ感じるようになった。現在の「私」が当時のわたしを「私」と言えば言うほど、当時のわたしはこの手

          バードコール 小鳥のくちびる 4/7

          あなたは犬騒音があるところに住みたいですか、それとも、犬騒音のないところに住みたいですか。 (2021/06 68枚)  前編

           十六万葉の宇宙船が地球から解き放たれた。まるで、いつか見た、望月がみなもをただよう熱帯の夜の海に珊瑚がいっせいに卵を放つ、そんな光景を、自らもその卵のひとなった舟の窓からのぞみながら、思いだした人もすくないだろう。舟はどれも軍隊のように自立し、都市のように自足し、完結していた。人類が目論んだ乗り物としては目もくらむほどの規模を誇り、まぎれもなく最大の代物であったが、これからのりだそうとする宇宙という虚無の大海原とむかいあうと、それは一枚の木の葉にも足りなかった。舟は、しばら

          あなたは犬騒音があるところに住みたいですか、それとも、犬騒音のないところに住みたいですか。 (2021/06 68枚)  前編

          あなたは犬騒音があるところに住みたいですか、それとも、犬騒音のないところに住みたいですか。 後編

           曲と曲の僅かな空隙、ほんの数秒の隙間、そのほんのすこしの空白がわたしのギザギザをさらに尖らせ発達させ、糜爛を増悪し、ひどくあわだたせ、凍えさせ、おびえさせ、おそれさせ、硬直させた。酷かった、今日は。界面は酸に侵された金属のように糜爛しながら、ギザギザは奥深くまでくい込み、わたしはホネガイのようにやせ細る。わたしは内側から泡だち、界面になるや糜爛し、ただ形骸のようなギザギザだけが発達していく。凍え、怯え、恐れ、硬直する。音楽が息を吹きかえすと、ふかく糜爛したギザギザのくい込み

          あなたは犬騒音があるところに住みたいですか、それとも、犬騒音のないところに住みたいですか。 後編

          バードコール 小鳥のくちびる 3/7

           「揚げヒバリ」はもう「揚げヒバリ」にはきこえなかった。自分でもよくわかる。うわずっていて、興奮にふるえていて、下心が見え見えな欲望にまみれていた。青空のかなた、どこまでもどこまでもただ青一色の無垢で澄みきった大気の深淵に思いが到達することなど、もうなかった。さえずればさえずるほど、コルリの重力と深みに沈みこんでいくのがわかった。黒いレースのマスクをしたコルリのことが頭を離れなかった。何度も、コルリの名を呼びながらひとりで……。それがすむと、自分のなかみがすべて絞り出されてし

          バードコール 小鳥のくちびる 3/7