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積木蔵 ふぶき
2022年6月9日 12:41
心停止したからといって、すぐに自由になれたわけではなかった。 どこかで、人の泣きわめく声がする。頭から血の気がひいていくのがわかる……意識が朦朧としてくる……声がどんどん遠ざかっていく……真っ暗になり……とけていく……闇のなかに溶けていく……とけていく……きえていく……きえてしまう……。 ぬるりとして、気がつくと、裂けた背中からたれさがっていた。ベッドを突き抜けて、たれ下がっていた。のけぞ
2022年6月9日 12:36
ぎょろぎょろと、うすっらと皮膜のようになった水面の下で、そいつの目玉が動いている。おれに気づいているのか、いないのか。おれに乗っかられているのに、そいつはまるで重さを感じていないようにも見えた。もっとも、水の中だ、重力も地上の六分の一になる。それにしてもおれときたら……波打ち際に足と尻があるというわけでもなかった。かといって、ないというわけでもなかった。足が存在すると思えば存在しているようだし、
2022年6月9日 12:31
あの塊のところへ……。おれは念じた。夜空を埋める無数の星々、その星のひとつ、あの星へ、と念じればたちまちその星に降り立っているこのおれだった。だが、そのおれが……いまだに、漂っていた、夜空を。月の煌々と照る、うつくしい、清らかな光に満ちた、この夜空を。風にふかれて。ヤキがまわったか。ためしに、おれは目についたあの星を念じてみた。一瞬だった。行き、帰ってきた。ためしに、おれは、八畳敷きを念じてみた