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娘と写真。

#20240831-455

2024年8月31日(土)夏休み43日目
 私のスマートフォンスマホの画像フォルダには、まずはノコ(娘小5)、外出先での食べた物、見つけた昆虫、目にとまった植物が並んでいる。
 最近、ノコの写真が減ってきた
 難しい年頃なのか、スマホを向けると顔をそむけたり、不機嫌な表情をするようになったからだ。
 あふれるようににっこり笑ってくれる時期って、意外と短い
 それならば、と日常のありのままの様子を残そうとなにげない場面を撮れば、クレームが入る。
 「ちょっと、今、撮ったよね。見せて。あ、ダサイから消して」
 「いいじゃん、すごく自然で。いつもの感じが出てていいと思うんだけど」
 「ヤだから。今すぐ消して。はやく消して」
 容赦ない。

 里子のノコが我が家に委託されてから、毎月1冊ノコのアルバムを作っている。
 月額400円ほどで、毎月正方形のアルバム1冊、またはL判写真プリント30枚を自宅へ届けてくれる。
 プリンターはあるので、自分でプリントし、製本することもできないわけではない。それでも決まったフォーマットに写真をアップロードし、写真に一言添えるほうがいい。少ない字数制限にもどかしいときもあるが、ぶち込んでいけばいいのでとにかく楽だ。
 下手に自由だと、私の性格上あれこれ凝ってしまう。
 毎月のことなので続けることを最優先とするならば、とにかく手軽なことが重要だ。

 アルバムの類いは、居間のキャビネットに収納している。
 私たち夫婦の結婚式の豪華(!)アルバム。ノコが育った乳児院、児童養護施設の職員さんが丁寧に作ってくださったアルバム。それから、ノコが我が家に委託されてから毎月作成しているこの正方形のアルバム。
 ノコは物の扱いが雑なところがあるので、大切なものを手の届くところに置きたくはない。
 だが、アルバムは「親に見たいことを伝えて出してもらって見る」のではなく、「ノコが見たいときに見る」ことが大事だと思った。学校があるときはなかなかそんな余裕がないのか見ることはないが、夏休みのような長期休暇のときは勝手に広げてニマニマしている。
 「私、ちっさ(小さい)!」
 「もー、私、かわいい! サイコー! 見て、ママママ、ママママ!」
 乳児院の職員さんが書いた手書きの文字を――ああ、ノコももう自分で読めるようになったのだ!――読み上げては幼い自分のことを上書きしている。子どもの頃の思い出は、なかには自分自身で覚えている人もいるが、大抵はまわりの大人が「こうだったのよ」「ああだったのよ」と話すことで作られていると私は思う。
 デジタル化もよいが、やはりこうやって気軽に手でめくって見られるのがよい
 ノコが幼いうちに施設に預けられたのは、ノコの人生において大切な愛着形成を不安定にさせる要因にもなり、簡単に「よかった」とはいえないが、こんな手のこんだアルバムがあるのは施設にいたからだと思う。おそらく実親のもとに長くいた後に、我が家に委託されたのならアルバムを持参することはなかっただろう。

 スマホに笑顔を向けてくれないノコにいう。
 「アルバムに載せる写真、その顔でいいの?」
 アルバム1冊作るには、表紙を含めて写真が21枚必要だ。
 「写真が足りないと、今月のアルバムが作れなくなっちゃうけど、いいの?」
 これらの台詞がまだ通用する。
 どうやらノコもアルバムはほしいようなのだ。
 「ほら、こっち見て。ニコッとすれば、1回で終わるんだから!」
 ほんの1年ほど前までのまばゆい笑みは、もうしてくれない。
 ぎこちなく、かたい表情だが、これもまた将来振り返れば「この年齢ならでは」の1枚になるのだろう。
 そして、月末の晩。
 むーくん(夫)と私のスマホにある写真を合わせ、慌ただしくアルバムを1冊作り上げる。
 「はい、注文したよー! お疲れさま」

 明日から9月。
 ノコの長かった夏休みもおしまい。

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