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医者曰く、この年頃の女の子にはよくあることらしい。~眼鏡に憧れるお年頃~

#20240524-401

2024年5月24日(金)
 「はい、ママ」
 学校から帰ったノコ(娘小5)がランドセルからプリントを出した。
 眼科検診の結果だ。視力が落ちたため、眼科で再検査し、その診断内容を学校に提出するよう書いてある。

 私は近視に軽い乱視、それに近頃は老眼も加わりつつある。
 眼鏡は中学生から使うようになった。それも授業中だけで、矯正すると見えすぎてかえって距離感がつかめず、怖くて階段を下りられなくなった。
 コンタクトレンズの使用は、大学生になってからだったと思う。ハードタイプのコンタクトレンズ愛用者だったので、目にゴミが入ると大変だった。もう地団駄踏みたくなるほど痛くて痛くて、街なかでも涙をボタボタ流すこともよくあった。道路を掘り返す工事現場の近くや地下鉄の電車がホームに入ってくるときの突風がなかなか曲者くせもので、目を細めて歩いた。
 次第に、スポーツをするときはソフトタイプの1dayコンタクトレンズを使うようになったり、花粉症が重くなると眼鏡が復活したりしたが、どれにしても目への負担は裸眼に勝るものはなかった

 ノコにも部屋の明暗や見る距離に注意し、視力が落ちると不便なことを口すっぱくいい続けていた。
 あぁ、そうはいってもノコは街に暮らす現代っ子。
 野山はなく、遠くに目を凝らすことなんてない。
 ゲーム機やスマートフォンスマホは使わせていないが、TVテレビが大好きだし、学校の授業ではタブレットも使う。本や漫画を好み、どこでもすぐ読みふける。
 いつかは眼鏡やコンタクトレンズのお世話になることはなるだろうと思っていたが、もう少し先であることを願っていた。
 眼鏡生活がわずらわしいのはもちろん、眼鏡の管理も今のノコだとままならない。
 くす、壊す、手入れをしない。
 覚悟せねば。

 ノコと眼科へ向かう。
 に落ちないのは、日常生活でノコは目を細めたり、近付けたりと見づらそうな様子がないことだ。
 「字が見えにくかったりするの? たとえば黒板の字とか」
 ノコが小首を傾げる。
 「今は一番前の席だし。遠いと、ちょっと見づらい・・・・・・かな?」
 さらに深く首を傾げる。
 なんだか、ずいぶんあやふやだ。

 視力検査がはじまると、ノコがすぐに首を傾げる。
 「わらかないなら、わからないっていっていいからね」
 視能訓練士がやさしくノコに声を掛ける。
 「・・・・・・わかんない」
 「じゃあ、これは?」
 「・・・・・・わかんない」
 わからないが続き、そんなに視力が落ちたのかと心配になる。
 レンズが交換できる黒枠の丸眼鏡ーー検眼枠を掛け、再度視力検査がはじまる。
 アルファベットの「C」のようなランドルト環が示されると、ノコはすらすらとあいている方向を答えた。
 やはり眼鏡なのか。こんなに違うのか。
 「眼鏡、掛けたい?」
 そう問われると、ノコはこくりとうなずいた。

 呼ばれて入った診察室はほの暗く、医師がノコに目の状態を診る器具にあごをのせるよういった。
 「ちょっと赤いね。目、かゆい?」
 机の上のディスプレイに映ったノコの巨大な目玉がギロギロと動いている。
 「ちょっとだけ」
 「アレルギーっぽいね」
 そして、ノコに医師がいう。
 「じゃあ、外にある椅子に座って待っててね。お母さんと少しお話するから
 ノコはバッグを持つと、小さくうなずいた。
 ノコ不在の診察室でカルテを手に医師が笑う。
 「この年頃のお嬢さんにはよくあることなんですけどね」
 この年頃? 私は医師の言葉を待つ。
 「度の入っていないレンズを入れると、視力があがるんです」
 「えっと、目は悪くないということでしょうか」
 「眼鏡を掛けたいお年頃みたいですね」
 医師が笑い、私は力が抜ける。ノコの視力は落ちていない。見えているんだ。
 そういう場合はどうするか尋ねると、このまま様子を見ることもあれば、度の入っていないレンズを処方することもあるという。
 そんなこともできるんだ。
 眼鏡の処方箋の有効期限も薬と同じ4日か確認すると、1ヶ月だという。とりあえず、処方箋を作成してもらうことにする。

 さて、このまま様子を見るか。
 そんなに眼鏡を掛けてみたいのなら、試しに度なしの眼鏡を持たせてみるか。それで不便を感じれば、視力が落ちるような行為をしなくなるかもしれない。
 病院が怖い、嫌いと騒ぐわりに、ノコは行くはめになることをしでかす。

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