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「ゆかり」が「縁」を呼んできた。

#20240127-349

2024年1月27日(土)
 ノコ(娘小4)が好きなおにぎりは、真っ白な塩むすびだ。
 次点が具なしの海苔を巻いたおにぎり。それから、鮭おにぎり。

 おにぎりの定番具材である梅干しは拒否。
 私も梅干しは中学生、いや高校生くらいまで苦手だった覚えがある。梅干しと一緒に漬け込んだ赤しそのふりかけはむしろ好んだが、なぜか梅干しそのものは苦手だった。
 子どもの舌には、酸味と塩味が強過ぎたのだろうか。

 今日の昼食はおにぎりと野菜炒めだ。
 食欲も食の好みもむらがあるノコの昼食を考えるのは、気が重い。おにぎりはわりとよく食べるので、冷凍ご飯を電子レンジで解凍して手早く握った。
 ただ握り、塩も具材もない。
 テーブルの上に、海苔、塩、赤しそのふりかけ、塩こんぶを並べ、各人が好きに食べるようにした。
 案の定、ノコは海苔に手を伸ばした。
 梅干しは苦手なのに赤しそのふりかけは好きだったのは、我ながらどういうことだと矛盾を抱えながらも、つい子どもでも大丈夫なのではとノコに声を掛けてしまう。
 「赤しそのふりかけゆかりはいらない? 無理しなくていいけど」
 強く勧めると、ノコは脱兎のごとく逃げてしまう。
 「ママもね、子どもの頃は梅干しが苦手だったんだけど、なぜかゆかりは好きだったんだよねぇ。変だよねぇ」
 笑いながら、自分のおにぎりに赤しそのふりかけをまぶす。
 母はご飯に混ぜ込んでから握っていたが、義母は握ってからまぶしていた。これもまたおいしかったので、今日はそうしてみる。結構大胆にまぶしたほうがおいしい。
 「ちょっとだけ・・・・・・ちょっとだけチョーダイ」
 ノコが皿の隅を指差した。
 「じゃあ、ちょっとだけね」
 ほんの少し皿に赤しそのふりかけをのせた。
 ノコは指先にふりかけをつけると、首を傾げながらちろりと舐めた。
 ぐぐぐっと首の傾きが深くなった。
 「あれ????」
 目玉がぐりぐりとまわり、まばたきを繰り返した。

 「あれ、私、これ食べたことある! ママママ、ママママ、施設にいたとき、塩むすびよりこっちのほうが好きで作ってってお願いしてた!」
 私も驚いてしまう。ノコと暮らして4年過ぎたが初耳だ。
 そもそもノコは赤しそのふりかけを味見しようともしなかった。
 「今、急に思い出した! ビックリ! ビックリ!」
 私だってびっくり仰天だ。
 「もっといる?」
 瞬間、ノコは真顔に戻ると、首を振った。
 「もういらない。懐かしいけど、もういい」
 ノコの目がどこか遠くを見ている。
 「私、食べたことあったんだね・・・・・・

 梅干しほど強烈ではないけれど、赤しその香りと酸味と塩けがノコの脳みそを揺さぶったのかもしれない。
 ときに、香りや味は古い記憶を掘り返す。
 ちょっと乱暴で戸惑うほどに。
 記憶はたとえ思い出すことがなくとも存外、体のどこかに残り続けるのかもしれない。

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