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短編集「けものみち」

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「焼肉定食と緑のたぬき」を始めとした1話完結の物語をまとめました。
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焼肉定食と緑のたぬき

焼肉定食と緑のたぬき

18歳、社会人一年目の冬。僕は死んだ。

「さむい・・・」

ほとんど体は何も感じない。寒いと感じるのは「なんとなくさむい」それだけだ。

僕が古臭いホンダシビックで生活をはじめて1ヶ月が経過しており、そろそろ終わりにしようとしていた。

シビックのエンジンを最後にかけたのは10日ほど前だったと思う。
この空き地のなかの、外灯の明かりが照らす場所から、今の真っ暗で誰にも気づかれないような草むらに移

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土と人にまみれた泥臭い一夜の話

土と人にまみれた泥臭い一夜の話

今回の話は、僕が20歳の駆け出しの電気工事士の頃の話である。

一人前の職人になれていない僕は毎日怒られてばかり、その日も昼間の仕事では散々だったが、めずらしく夕方5時前に仕事がおわるようだ。
僕は弾む気持ちを抑えながら、冷静を装って仕事用のバンの運転席に乗り、助手席には親方が乗った。


僕が勤務していた会社では社長のことを「親方(おやかた)」と呼んでいた。
ちなみに、親方は僕のことを名前では

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出会いの本棚

出会いの本棚

今日は2022年12月31日。
ブロガーとしての今年をひと言でいえば、出会いに恵まれた年だった。

人との出会いは刺激的だと思う。
200人、300人のブロガー仲間に会ってきたけど、どの出会いも大切な一冊の本のようだ。

一冊の本が10万文字だとしたら、一回の出会いで何万文字話をしているだろう……

もちろん、人数や時間によっても違う。
一回の出会いという本を毎回振り返り、あとになってタイトルをつ

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最高の余韻を忘れない方法

最高の余韻を忘れない方法

良いことがあり、悪いことがある。

この話は、ただの女々しい男の、ただの独り言。

僕は目の前のスーパードライの泡をみつめ、ジョッキを通して思い浮かべる。

ちょっとした、、、
通過地点のお祝いのビール。

その日、僕は大切な思い出をつくり、それを両手でそっと胸に整列させた。
別に誰かに話したいわけではなく、しいていえば一緒に過ごした大切な人と共有したい。

そんな気持ちわかる?

でもいつか忘れ

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檻の中のライオン

檻の中のライオン

4月はなにかと始まりの季節。

ふと思う。なんで自分が今の仕事についてるのかな?と。

選択の理由僕は電気工事士の仕事をしている。

生活に困った時に電気のありがたみを実感して、
「インフラは大切」って歯をギシギシいわせながら噛み締めたことが「電気の仕事」を選んだ理由なのは間違いない。

でもちょっとまてよ。

本当に自分で選んだ選択なのか?

電気工事の仕事を選んだ19歳の自分の中に、例えば「レ

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僕と15歳と幸せのパンケーキ

僕と15歳と幸せのパンケーキ

僕は42歳。
とあることがキッカケで15歳のブロガーとパンケーキを食べる機会があった。

彼、そう彼のことを「A君」としよう。
A君とは同じブログサロンに入っているが、実際会うのはその日がはじめて。

生意気なやつ
A君は中学生。
彼の辿ってきた数ヶ月のブロガーとしての変化をきいて、「事業として取り組んでいるんだな」というのが、ヒシヒシと伝わってくる。
親と子供ほどの年齢差があるA君の話に耳を傾け

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誕生日パーティーはおわらない

誕生日パーティーはおわらない


僕は今月42歳になった。

Twitterでつぶやいたときの、みんなのリプが嬉しすぎる誕生日に感謝している。

40歳までは生きられない以前の僕は、お金に困っていた。

お金を稼がないといけない一心で、18歳から21歳までは随分と無茶な働き方をしていて、周りの大人達からは
「体を壊す」
「長くは続かない」
「普通じゃない」
などと言われてきた。

中でも印象的だったのは、19歳のころに意識を失っ

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出勤前の贈り物

出勤前の贈り物

出張の合間、会社に向かう朝僕は比較的出張がおおい仕事をしている。

今日は1月15日。県外出張の合間に会社で事務作業をする予定。
現場での仕事がおおいが、事務処理が滞ると書類と領収書の山に埋もれることになる。

すっかり寒くなった朝、行きなれた駅にいき、会社に向かう途中の交差点でキョロキョロしているおばあちゃんを見つけた。

たくさんの人が往来しているが、おばあちゃんは誰にも声をかけていない様子。

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月1「ご褒美給」はじめました。

月1「ご褒美給」はじめました。

こんにちは。リベルタ(@liberta0101)です。

最後に転職をしてから2年以上経ちますが、転職してからはつくづく「給料ありがてぇ」「ボーナスって嬉しいもんなんだ」と感じます。

お金の使い方が下手な人、上手な人僕は、今まで給料もボーナスも全部ひっくるめて『生活給』だったんです。

きれい事をいえば、年収ベースで収支を考えることはいいことだと思いますよ。

でも現実は使えるお金も少なかったし

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