国の歳入(収入)の構成、財政の機能と役割とは(税金#4)
私たちが健康で豊かな生活を送るためには、国や地方公共団体がさまざまな公共施設や公的サービスを提供していく必要があります。
そのために税金などのお金を集めて管理し、必要なお金を支払っていく活動を財政といいます。
歳入(収入)を決める前に、まずは予算を決めます。
国は、国民の暮らしを豊かにするために国に納められた税金をどう使うかを話し合いで決めます。
そして、内閣が1年間に入るお金(収入=歳入)と、国の仕事に必要な お金(支出=歳出)を計算し予算案をたてます。
その予算案につい国民の代表である議員が国会で話し合い、予算や税金の使いみちを決定します。
令和3年度の歳入(収入)は、当初予算で106兆6,097億円でした。
本年の令和4年度は、令和3年度補正予算と⼀体となっており、
「 新型コロナ対策に万全を期しつつ」・「成⻑と分配の好循環」による「新しい資本主義」の実現を図るための予算になっています。
本記事は、補正予算と一体となった令和3年度当初の予算を再度見ていき、財政の機能と役割について簡単に解説していきます。
1.国の歳入(収入)の構成
財源については大きく2つに分けられます。
国民などから徴収した「税金」が53.9%
政府の「公債金」が40.9%
歳入項目別に見ると、
全体の53.9%を占める「租税及び印紙収入」です。
※租税:税金(所得税・法人税・消費税・酒税など)
印紙収入の主なものは「印紙税」です。
印紙税とは、契約書、領収書などの文書を作成したときにかかる税金です。契約書の内容や契約金額などにより税率が定められています。
たとえば土地や住宅を購入した場合にかわす契約書には、印紙が貼られます。この印紙代が印紙税として国の収入となります。
40.9%を占める「公債金」
国債を発行して借りられたお金(元本の額)です。
国が税収の不足を補うために発行する、債券により借りられた金額のことです。
公債とは、国債(国の借金)と地方債(地方公共団体の借金)の総称です。
公債金とした場合は、国だけの借金を指しており、地方公共団体の借金は含まれません。
1-1.令和3年度予算のまとめ
令和3年度の税収(租税及び印紙収入)は、57兆4,480億円です。
令和2年度より約9.5%(約6兆円)減少しました。
原因は、新型コロナウイルスに伴う景気の落ち込みで企業業績が悪化したことで、法人税が令和2年度より約25%(約3兆円)減少したことで税収が減ったからです。
その反面、公債金(特例公債、建設公債を含めた国債発行額)が令和2年度より約34%(約11兆円)増え財政収支は一層悪化することになります。
新型コロナウイルス対策予備費のほか、社会保障費や防衛費などが増加傾向にあり、それを国債の発行で賄っており、元本の返済や利子の支払いなどの負担を、将来の世代に残すことになります。
2.日本の税収の税目別の内訳
日本の税収は、国税・地方税(令和3年度予算)を合わせて100兆1,083億円です。
■税収には、いろいろな税目がありますが、大きく3つに分けられます。
「所得課税」:お金を稼いだ時に掛かります。
「資産課税」:資産を保有することで掛かります。
「消費課税」:お金を消費する時に掛かります。
税項別の内訳をみると中でも下記の項目が日本の税収の74.7%(全体)を占めています。
・「所得課税」48.7%
個人に対する所得税・住民税・事業税(32%)
法人に対する法人税・住民税・事業税(16.7%)
・「消費課税」26%
消費税(20.3%)
地方消費税(5.7%)
さらに細かく見ると、
個人に対する所得税・住民税・事業税(32%)、消費税・地方消費税(26%)、法人に対する法人税・住民税・事業税(16.7%)です。
今まで何となく遠い存在に感じていた国家予算も、実は私たちの身近な税金(税収)が多くを支えています。
3.財政の機能と役割とは
国や地方公共団体(都道府県・市町村)が必要な資金を集め、これを管理し、必要な資金を支出する経済活動を「財政」といいます。
■大きく分けて3つの機能や役割があります。
1.資源配分の調整「社会資本の整備(提供)や公共サービスを提供する」
「市場の失敗」と呼ばれる市場機構に内在する欠陥を補うために、政府が自ら公共財・サービスの供給を行います。
具体的には、公共施設の整備(上下水道、道路、病院、学校など生活に不可欠な基盤となる整備)、私たちが暮らしで使っている公共サービス(警察、ゴミ収集車、美術館など)を提供するために使われています。
2.所得再分配「格差が拡大するのを防ぐ」
お金をたくさん稼ぐ人ほど多く税金を納め、その税金は教育や医療の給付などを通じて国民に分配することで国民の間での所得格差(所得の開き)を縮める役割をもっています。
3.景気の調整「景気の安定を図る」
急激な景気変動をおさえる。たとえば好況期のときには税負担が増え、景気の過熱(過度なインフレ)がおさえられます。
逆に不況期のときには税負担が減り、景気のさらなる冷え込み(過度なデフレ)がおさえられます。
財政には、「市場の失敗」と呼ばれるものがあります。
市場の失敗とは、需要と供給のバランスで維持されている経済が、あるきっかけによってそのバランスが崩れ、不況や格差など、市場の混乱を引き起こす状態を指します。
■市場の失敗が生じる要因
「独占・寡占」:少数の企業が市場を支配する。
「外部性の問題」:企業により公害・環境汚染など経済活動に伴い社会にマイナスの影響を与えるものが発生する。
「公共財」:国や政府が提供(警察、消防、公園、道路など)するサービスを指します。
「情報の非対称性」:売り手と買い手の間に情報量の格差が生じる。(例:中古車の購入時に見た目以外の性能の欠陥を消費者は知ることができないなど)
「費用逓減産業」:電気やガスなど社会的インフラとして巨額の設備投資を必要とする半面、供給が進むにつれ費用が減少し独占が生まれやすい。
「不確実性」:予想できないリスク(コロナ、災害など)の発生。
市場だけに任せていると社会が適切に機能しないところに対して、市場に代わって政府が自ら公共財・サービスの供給をおこない取り組む機能が財政です。
※政府の政策がうまくいかない場合(政府の失敗)もあります。
3-1.財政のまとめ
財政は、「資源配分の調整」「所得再分配」「景気の調整」の3つの機能があることをお伝えしました。
【財政の3つの機能と役割のまとめ】
資源配分の調整:「市場の失敗」に対して介入し、資源をよりよく配分する。
所得再配分:所得格差が公平になるように再分配により調整する。
景気の調整:政策によって景気を安定させる。
これらがバランスよく機能することにより、わたしたちは安心して豊かに暮らしていくことができます。
4.まとめ
国の予算は、実は私たちの身近な税金(税収)が多くを支え、不足部分を公債金(借金)で穴埋めをしているのがお分かり頂けたのではないでしょうか。
そして財政がうまく機能することにより、わたしたちは安心して豊かに暮らしていくことができます。
財務省が発表した令和3年度の国の税収は、企業の業績回復を背景に税収が当初予算から約16%増(9兆5,899億円)の67兆379億円と2年連続で過去最高となりました。
新型コロナウィルス過からの企業業績の回復で法人税が伸びたほか、消費税の税収も増えたためです。
令和4年度は、経済活動の再開で企業業績が回復傾向にあることなどから、税収は令和3年度当初予算と比べて約14%増(7兆7,870億円)の65兆2,350億円です。
ですが、金融環境の悪化や世界情勢、新たな変異株「オミクロン株」の影響など、見込みどおりの税収を確保できるか、不透明な要素もあります。
公債金(借金)は、令和3年度より約18%減(6兆6,710億円)の36兆9,260億円となり、令和4年度の新規国債発行額は2年ぶりの減額となりました。
ただ、16年度以降5年にわたり30兆円台前半としてきた発行予定額には届かず、依然として国債発行に頼る厳しい財政運営が続いています。
このため、令和4年度の国債残高は1,000兆円を超え過去最大となりました。
この借金の返済には将来世代の税収等が充てられることになるため、将来世代へ負担を先送りしているのが現状です。