#113[短編]ムーンライト・ストーム<月夜の嵐>[2024年8月]
このカフェは気密性が高い。なんせ、眼下の交差点で足踏みしている救急車のサイレンが全く聞こえない。雨の音にもまったく気づくはずがなかった。
♪ Kool & The Gang - Joanna (Official Music Video)
スマホに保存した noteに一区切りをつけ、ふと顔を上げると、窓ガラスを雫がつたって流れていく。思いのほか風は強くなかったせいで、音がしなかったのか。しばらく考えて、ようやく静かなこの場所のことがわかってきた。
少し前まであった通行人も、地下へ移動したのか路上には人がまばらになり始めた。そろそろいつもの列車の時間、今日はもう少しここで雨をみることにした。
路上に白く叩きつけるように落ちる雨は、白い粉塵のように地面に小さな嵐を起こしている。遠くで稲妻が光るが、音は相変わらず聞こえてこない。
静かな店内には落ち着いた音楽が流れ、聴いているのも悪くはないかな?
・・・
「2時間は何もお摂りにならずにお過ごしくださいね」
「お大事にどうぞ」
歯科を後にして、このカフェに立ち寄った。
いつものコーヒー。ほんのり薬の味がする。
眼前のビルの反射で、そろそろ陽がビルの谷間に落ちるのが分かる。
そのnoteには、昨日のおしゃべりに返信をした。
色とりどりのおしゃべり、楽しそうな絵文字、
笑い声が聞こえてきそう。
コメントを遡る。
ふっ……。ふふふふ。
うんうん、ここまでは読んだ。
もう一度、下まで降りていくと……。
・・・
舘ひろし?
え?ユージ&タカが来てくれるの?
いいね、それ!
傘もって? ここまで来てくれるの?
え、うれしい。
……。
おもしろかった。
うーん、だれか来てくれないかな~。
とかなんとか、思ってみちゃったりして?
・・・
帰りたいな。
どうしてこんなに、のんびりなんだろう……。
・・・
でもこういう過ごし方、キライじゃない。
・・・
いつの間にか雨はあがって、
道行く人は傘をさすのをやめていた。
帰るなら今だ。
・・・
了
文 / 写真: 筆者
あとがき
小一時間前のできごとを短編に。
家で仕上げようとしたらダメ……。
また降って来たらイヤだと思って帰ってきたら。
続きは書けなくなってて。ま、いっか。で送り出す。
(夜中に、ひっそり。こっそりね)
仕方がない。今日も今日とて、
今日感じたことを話すれんしゅう。
それではまた、次の記事でお会いしましょう!
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