【全文公開】もし孫子が現代のビジネスマンだったら(安恒 理・著)
孫子が現代の会社の課長として降臨!?
「孫子の兵法」の重要エッセンスを超実践的に学べる本
武田信玄、ナポレオン、孫正義、ビル・ゲイツなど、古今東西のリーダーが愛読する不朽の名著「孫子の兵法」。
今でも「ビジネスや人生に役立つ」バイブルとして、広く知られています。
しかし、
といった人も多いでしょう。
そんな悩みを抱えている人に、おすすめなのが本書です。
書名タイトルのとおり、本書では、孫子が現代のビジネスマン(課長)として降臨した設定で、
【価格競争】【商談交渉】【情報収集】
【上司や部下の使い方】【データ活用】
など、具体的なビジネス事例を交えながら、わかりやすく解説していきます。
「孫子の兵法」の重要エッセンスが各所にちりばめられており、知識ゼロから楽しく学べることができます。
著者は孫子関連本(「現代ビジネス兵法研究会」名義)やビジネス書、政治・経済関連書を中心に、数々のベストセラーを世に送り出している人物。
「孫子の兵法」を読んだことがない人にはもちろん、すでに読んだことのある人にも、役立つ内容が満載の1冊です。
【内容項目(一部)】
◎敵と味方を比べる5つのポイント
◎どちらが有利かを見極める7つの視点
◎現代のビジネスにおける敵は2種類
◎目先の利益ばかりを追求していると、大きな利益を逃す
◎「思い込み」は墓穴を掘る
◎値引き交渉の秘訣
◎敵が喜ぶ情報を提供し、敵の力を逆利用する
◎リーダーにとって、威厳と同じくらい大切なもの
◎巨大チェーンとの賢い戦い方
◎「味方」の情報収集も怠ってはいけない
◎徹底的な秘匿は最強のゲリラ戦術になる
◎相手のスパイ工作を逆利用する
◎ピンチのときこそ、リーダーは強気たれ
◎信頼関係のない圧力には、人はついてこない
◎あえて戦略を公開して、相手に決断を迫る
◎人は不利なときのほうが力を発揮する
……and more!
【著者プロフィール】
安恒 理(やすつね・おさむ)
現代ビジネス兵法研究会代表。
1959年生まれ。大学卒業後、出版社勤務。ビジネス雑誌の編集を15年間務め、多くの経営者やビジネスマンを取材する。フリーとして独立後、「現代ビジネス兵法研究会」を設立。同会は、ビジネスの成功法則を「孫子の兵法」の視点から研究・分析を行なっている。会社経営者、銀行マン、商社マン、弁護士、公認会計士、編集者、ファイナンシャルプランナー、学生、主婦など、会員はさまざま。
著書に、ベストセラー『なるほど! 「孫子の兵法」がイチからわかる本』(現代ビジネス兵法研究会名義)はじめとする孫子関連本のほか、『いちばんカンタン! 株の超入門書』などのビジネス書、政治・経済関連書多数。
はじめに──なぜ『孫子』はビジネスに役立つのか?
中国古典の『孫子』は兵法書として最高傑作といわれていますが、それゆえ現代でも幅広く読まれています。
単に兵法書というだけでなく、ビジネスの現場で大いに役立つところにその秘密があります。
『孫子』が書かれたのはおよそ二五〇〇年前。
当時、中国は戦乱に明け暮れ、そのなかから数多くの兵法書や思想書が生まれました。従来の兵法は、武運によって勝敗は決するという思想が強かったのですが、『孫子』は、「人為によって勝敗が決する」と断言。勝利への道筋を見事に理論立てているのです。
ただ、いたずらに戦争を起こすのではなく、とてつもない被害をもたらす戦争はできるだけ避けて、自らの利益だけでなく相手方の利益を最大限に高めること、平和を求めるのが『孫子』の神髄です。
数多くの戦いのなかから得られた戦略・戦術だけでなく、徹底的に人間そのものを研究、分析し尽くしており、そのため、戦場における人間心理が現代のビジネスや政治といった諸場面にも当てはまるのです。
実際、現代のビジネス現場で「孫子の兵法」を活用しているビジネスパーソンは数多くいます。
たとえば、ソフトバンクの創業者で社長の孫正義氏やマイクロソフト創業者、ビル・ゲイツ氏も『孫子』を熟読し、活用しているといわれています。
私はビジネスパーソンや経営者を対象とする雑誌の編集に長年携わり、数多くの方々に取材してきました。ビジネスで成功してきた方々です。その成功の軌跡をたどると、「孫子の兵法」のノウハウに重なるケースが多々ありました。
その成功者が孫子を意識していた、いないにかかわらずです。
本書では、現代のビジネスや政治、外交の場に応用して「孫子の兵法」を紹介していきます。
本書のタイトルにある、もし孫子が現代のビジネスマンだったら、どんな判断を下し、どのように対応していくのか?
現代のビジネスシーンにおける課題を具体的に取り上げながら、孫子が課長としてアドバイスしていきます。
本書があなたのビジネスにお役に立てたなら、著者としてこれほどうれしいことはありません。
なお、このたび「孫子の兵法」の全原文および私が訳した全訳(PDFファイル)を無料プレゼントとしてご用意しました。詳細は本書巻末ページをご覧いただき、http://frstp.jp/sonshi よりダウンロードしてください。
序章
『孫子』は、「情報」に重きを置く
『孫子』とは何か?
具体的な話に入る前に、『孫子』についてもう少し詳しく説明しましょう。
著者とされる孫武が生きていたのは、およそ紀元前五〇〇年頃。春秋時代末期にあたり、戦乱の世でしたが、さらに世は乱れ戦国時代へと突入していきます。この春秋時代には数多くの学者を輩出し、いくつもの学派を生み出します。これらは総称して諸子百家と呼ばれ「儒家」や「道家」「法家」「兵家」などの学派がひしめき合っていました。儒家では『論語』や『孟子』といった中国古典が生まれ、道家では『老子』『荘子』、法家は『韓非子』を生み出します。
『孫子』は兵家の書として『呉子』などと並んで世に出されました。
著者の孫武は、呉の国の王・闔閭に仕え、その力を存分に発揮。呉は列国を次々に打ち倒していきます。孫武は呉の国において将軍としての名声を高めたのでした。歴戦のなかから戦略の本質を見抜いた孫武の理論は、実戦でその有効性が証明されたのです。
孫子が最も言いたかったこと
『孫子』は全十三篇から成り立っています。
最初の三篇「計篇」「作戦篇」「謀攻篇」は、戦う前の準備や心構えについての説明です。
次の「形篇」「勢篇」「虚実篇」は、勝利に向けての態勢づくり。
あとの七篇は、より実戦的な戦場における軍の動かし方などについて説明しています。
すべて自国・自軍を勝利に導くためのノウハウを説いていますが、その前提として、
「戦争はできるだけ起こさない、それに越したことはない」
といっています。
「兵は国の大事であって、死生の地、存亡の地なり。察せざるべからず」
(計篇)
戦争は国家の一大事であり、国民の生死、国の存亡に関わるもの。よくよく慎重に見極めなければならない、という意味です。
これは冒頭の言葉で、戦争を起こすには熟考を重ねる必要があるとしています。
孫子が目指すところは、「戦わずして勝つ」ことにあるといっても過言ではないでしょう。
他の兵法書が単純に目先の戦いに勝つことを目標とする「戦術」に重きを置いているのに対し、『孫子』は、国家の運営という大所高所から戦争という外交の一手段を俯瞰しているのです。
そのキーポイントは「情報」です。
敵と味方を比べる5つのポイント
戦争という一大事に臨むには、その前に統治の面で次の五つのポイントで自軍と敵方と比較するようにします。
その五つとは、次のとおりです。
◉「道」(人民とその上に立つ指導者が一致団結しているか)
◉「天」(自然現象)
◉「地」(戦地の地形)
◉「将」(指導者の器)
◉「法」(軍の規律)
為政者や将軍、指導者など上に立つ者は、以上の五点で敵味方双方の状況を綿密に把握します。
もっと具体的に比較するポイントを説明すると、次のようになります。
◉「道」…… 人民と為政者が心を一にしているか。これは兵士が危険を恐
れず、国家のために命をかけて戦いに臨むことができるかど
うかの問題にかかわっています。
◉「天」…… 暑さ寒さといった天候など自然の巡りが自軍に有利かどう
か。
◉「地」…… 地形の状況や自軍と戦場の距離など、地理上の有利不利を見
極めなければなりません。
◉「将」…… 指揮官に才智や威厳、部下への思いやり、勇猛果敢さがある
かどうか、リーダーとしての資質を問わなければなりませ
ん。
◉「法」…… 軍の編成や運用、官僚機構における規律など。
どちらが有利かを見極める7つの視点
統治の視点で敵と自軍を比較したのちは、敵味方がいざ衝突したときにどちらが有利か情勢を見極める必要があります。
『孫子』は、この点について、「七つの視点で見極めろ」と教えます。
一、 どちらの為政者がいい政治を行なっているか。
二、 指揮官はどちらが有能か。
三、 どちらが地の利に恵まれているか。
四、 軍律はどちらがしっかり守られているか。
五、 第一線の兵士たちはどちらが士気が高いか。
六、 兵士たちの訓練はどちらが行き届いているか。
七、 賞罰はどちらが公明正大に行なわれているか。
繰り返しますが『孫子』は、いざ戦争となればそこでの勝利を目指す戦術書です。しかし、ビジネスやスポーツにも応用できる内容になっています。
軍隊を会社(あるいはスポーツにおけるチーム)、兵士を社員(選手)に置き換えることができます。
現代のビジネスにおける敵は2種類
ただ、ここで一つ注意しなければならないのが、『孫子』における敵は現代のビジネスにおいては、二通りに解釈できるということです。一つは、競合相手。つまりビジネスにおける同業者でライバルです。
もう一つは顧客です。市場でシェアを拡大し、自社の売上を伸ばすには顧客の心をつかまなければなりません。
そのためにはライバルと顧客という「二種類の敵」をよく知るようにしなければなりません。
戦力は、ビジネスにおいては資金力であったり、社員のスキルであったりします。
たとえば、新規事業に参入しようとすれば、経営者は事業計画書を策定します。勝算(=ビジネスでの成功)の見込みを立てるには、自社の競争力、ライバルの動向などマーケットの状況をつぶさに調査しなければなりません。
また、戦場においては戦闘が、ビジネスで新規事業をスタートさせたときは市況などが、刻一刻と変化していきます。
指揮官はその状況を見極めながら、臨機応変の対応を取らなければなりません。戦い方を変えなければならないこともあれば、時には撤退も考えなければなりません。
そういった判断を正しく下すには、情報力が必要です。
戦いの場におけるデータを集め、正しく分析し、これからの行動にうまく活用しなければなりません。
戦いにおいて勝利するには、また、ビジネスにおいて最大の利益を得るには、情報力が求められます。
『孫子』が説く兵法は、この情報の扱いに重きが置かれているのです。
『孫子』が後世に与えた影響
『孫子』は当時だけでなく、後世にも大きな影響を与え、その教えは語り継がれています。
中国では三国時代に魏国の曹操が愛読していたといわれ、日本にもすでに奈良時代には伝来しています。その影響を受け、実戦で役立てた武将も数多くいます。日本では源義家、武田信玄などが有名です。
源義家は前九年後三年の役で、「鳥の飛び立つところに敵の伏兵あり」をもとに敵の動きを察知し勝利しています。また、武田信玄軍の旗印には『孫子』の一節、「風林火山」の文字が使われています。
近現代でも日露戦争における日本海海戦で勝利した東郷平八郎も『孫子』を愛読。またイラク戦争においてアメリカ軍が採用した「衝撃と畏怖作戦」は、国務長官のコリン・パウエル氏が『孫子』の思想を採り入れています。
『孫子』が用いられたのは、戦時だけに限りません。幅広くビジネスや経営にも活用されてます。
マイクロ・ソフト創業者の一人、ビル・ゲイツ氏やソフトバンク創業者の孫正義氏も『孫子』をビジネスで活かしているのは「はじめに」で記したとおりです。
また、後世のビジネス理論、マーケティング理論にも多大な影響を与えています。経済的な戦略の意思決定にも使われるゲーム理論や、マーケティングで使われるランチェスター戦略などです。
ランチェスター戦略とは、もともと戦場における戦闘員の消耗度を数理モデルで示したランチェスターの法則を、マーケティングに応用したものです。経営コンサルタントの田岡信夫氏が、『孫子』も深く研究・応用し、経営戦略として世に送り出した理論でした。
そこに共通するのは「弱者の戦略」です。
具体的な戦い方としては、
◉差別化
◉一点集中
◉接近戦
◉隠密行動
を基本とします。そしていずれも重要なファクターとなるのが、「情報」です。
あなたの「情報感度」をチェック
「孫子の兵法」をビジネスにうまく活用できるかどうか、それはひとえにあなた自身の情報感度によって差が出てしまいます。
あらゆるデータから、「状況をうまく読み取ることができるか」「ものの見方が一面に偏っていないか」「思い込みが強くないか」などが問われるところです。
そこで孫子の生まれ変わりで、その理論をビジネスに役立てている孫子課長にチェックしていただきます。
モノゴトの一面だけを見るな
このように短絡的にモノゴトを結びつけると、とんでもない誤解や錯誤を生みかねません。
特に戦場においては、精神状態は平静を保てないため、状況を見誤ることがあります。そして、戦場におけるような特異な精神状況が生まれるのが、大災害時です。
大災害時に発生しがちな「デマ」で事例を挙げましょう。
大地震が発生した前日。飼っていた犬がキャンキャンとやたら吠えていたとします。
「うちのワンちゃん、地震を予知していたに違いない!」
と勝手に、地震という特異事例と犬が尋常ならざる吠え方をしていたという事例を結びつけてしまうような短絡的な思考はよく見かけます。
私は地震災害に関する本を執筆し、多方面に取材をしたなかから地震の前兆として動植物に異常な症状が表れることが報告されていることを知りました。これは大地震前には大地から桁違いの強力な電磁波が発生することと関連するのではないかという説もあります。
そのため、「犬がやたらと吠えていた」ことと「大地震」には因果関係があるのかもしれません。
しかし、その証明は難しく、多くの事例(データ)を取り、さらに科学者などの専門家がその因果関係を証明するまでははっきりしたことはわからないのです。
「前日に犬がやたらと吠えていた」というのは、単に犬が体調を崩して気分が悪かっただけなのかもしれません。
短絡的な思考と思い込みだけで判断しては、大きな間違いを冒しかねないのです。
判断ミスを防ぐには、数多くのデータを集める、多角的にモノゴトを見るといったスタンスが求められます。
「犬がやたら吠えていた」というのであれば、獣医師に見せて病気を抱えていないかどうかといったデータも必要でしょう(実際にそこまで行なう人は少ないと思いますが)。
多角的にものを見るとはどういうことなのでしょうか。
「思い込み」は墓穴を掘る
孫子課長から次の問題が出てきました。英文です。
孫子課長からまた次の問題が出てきました。
孫子課長の言いたいことは、思い込みや強い先入観は、状況判断を誤ったりするようにデータ処理、情報処理の際に大きな障害となりうるということです。
別の視点でモノゴトを見るクセをつける
さらに孫子課長が問題を出します。
全体像を把握する上で判断するデータが不足するとき、勝手な解釈を先行させては大きな誤りを犯してしまう、ということです。
安易なレッテル貼りをしていないか
先入観や思い込みは状況判断を誤らせます。
その要因は足りないデータだけで判断してしまうことの他に、足りないデータを単純な思考で切って捨ててしまう愚行を犯してしまうケースがあります。
思考が「○か×か」「白か黒か」「イエスかノーか」「すべてかゼロか」といった二項対立になってしまうことです。
○が絶対に正しいと信じている人は、○以外のものはすべて×と決めつけてしまう傾向が出てしまいます。○と×以外にも△や□もあるはずです。
多様性を無視したこの思考は、偏見に満ちた差別にもつながりかねないのです。
こういったミスがなぜ生じるかというと、「言語には恣意性があることを認識していないから」と孫子課長は力説します。
これはどういうことか?
孫子課長にもっと具体的に説明してもらいましょう。
孫子課長の言いたいことは、人が発する言葉には人それぞれに指し示す範囲が微妙に違ってくるということです。
データの取り扱いを間違うと、情報分析に大きな誤りが生じ、状況判断を誤ります。
これは混乱極まりない戦場では日常茶飯に起こり、いかに致命的なミスを犯さないかがポイントになります。逆にいえば致命的な判断ミスが敗因となり、ビジネスの世界では事業の失敗につながるのです。
冤罪を生むメカニズムからわかること
これを犯罪捜査にたとえるなら一つひとつの点は犯罪を立証し犯人を特定する「証拠」ということになります。そこで捜査当局は「首から先」のデータを集めて、犯罪の全体像、犯人の特定を急ぐわけです。
孫子課長は実際の冤罪事件を例に、なぜ情報の扱いで失敗したのか、ケーススタディをやってくれます。
その実際にあった冤罪事件とは「足利事件」。
一九九〇年に発生したこの事件は、足利市(栃木県)のパチンコ店の駐車場から四歳の女の子が連れ去られ、近くの河川敷で遺体となって見つかったというものです。
目撃情報もありましたが、なかなか犯人にたどり着けません。
そのうちに捜査当局は犯人像を「独身男性」「子ども好き」という犯罪者プロファイリング(犯人像を描く)にのっとって聞き込み捜査を始めます。そこから捜査線上に浮かび上がったのが、のちに誤認逮捕され無実の罪で一八年もの間、不当に拘束された菅家利和さんです。菅家さんには前科・前歴・逮捕歴はありません。それでも警察にマークされたのは「独身」で幼稚園の送迎バスをやっているから「子ども好き」ということで犯人では、と目星をつけられたのです。
尾行中の刑事が、「立小便ひとつしない」と評したように、人並み以上に道徳心の強い人でした。警察は菅家さんが捨てたゴミ袋からDNAのサンプルを採取しようとしますが、指定日、指定場所にきっちりゴミを捨てる菅家さんに対し、「警戒心の強い男」という曲解した印象を持ちます。そして当時、まだ不確実だったDNA鑑定と強要した自白だけで逮捕、裁判所も有罪を決めつけてしまったのです。
捜査過程では有力な目撃情報もありました。
しかし、その目撃情報は「菅家さんは犯人ではない」とするものでした。有力な証拠となったはずですが、捜査当局はその目撃情報を「ノイズ」と決めつけてしまったのです。その目撃証言を行なった人に対して、
「正直に言うと、アンタの証言が(菅家さんを有罪とするには)ジャマなんだよ」
と、証言の撤回を強要したのです。そして調書には「目撃証言は勘違いによるものだった」
と書き換えられてしまったのです。
あやふやな段階から「菅家さんが犯人」と決めつけ、その思い込み、先入観に沿って捜査を行なった警察の大きなミスでした。
第一章
相手をよく観察し、
状況をしっかり把握する
目先の利益ばかりを追求していると、
大きな利益を逃す
ノルマ至上主義のデメリット
戦場においては、現状分析が重要になってきます。
味方の戦力、敵の戦力。敵味方の士気はどうか、地の利はどちらにあるか、など。ただ戦場では軍は敵から秘匿した行動をとるようにします。
そのため、さまざまなデータから敵の動き、作戦を推測していきます。
誤った情報分析は、戦場においてはつきものですが、致命傷になるような錯誤を起こさないことです。
特に指揮官の思い込みは、大きな敗因となりかねません。
ビジネスでも同様のことがいえます。
自分の利益ばかり追求していると、時にはライバルのみならず味方であるはずの仕事仲間やクライアントの心情を軽んじて失敗しかねません。
営業マンに対するノルマが厳しい業界では、かつてお客様に商品をごり押しするなどして問題を起こしたりしていました。
そのうちの一つに不動産業界がありました。
「とにかく売りさえすればいい」という志向で、お客様の立場を軽んじているところも少なからずありました。
最近、私もそういった業者に遭遇しました。オフィス用の物件を探していたなかでJ社というところからいい物件を紹介してもらいます。物件そのものはよかったのですが、その手続きがあまりにずさん。J 社営業マンはとりあえず売りさえすればいいという感覚なので説明不十分、あとからなにかしら問題が出てきます。
あまりのひどさに別の不動産業者に話すと、「ああ、J 社ですか。あそこは、いわゆる古い時代の悪いイメージを残したままの不動産会社なんです。とにかくノルマ至上主義で、どんな手段を使ってでも売ればいいという考え方の会社なので、業界内でも評判はよくありません。社員もなかなか定着しないんです」
とのこと。
目先の利益ばかり追っていると、大きな利益を逃しかねないのです。
自分本位が、味方もお客様も引き離す
「敵情を分析して勝利の見込みを想定しながら、地形が険しいか平坦か、遠いか近いかを検討するのが、全軍を指揮する将軍の役割である」(地形篇)
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