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#294【ゲスト/編集者・書店営業】2021年日本一売れた本の担当者が語る、売れた理由

このnoteは2021年12月28日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。


すばる舎編集長・上江洲さん、営業副部長・原口さんがゲスト

渡部:フォレスト出版チャンネル、パーソナリティの渡部洋平です。今日は編集部の森上さんともにお伝えいたします。森上さん、よろしくお願いします。

森上:よろしくお願いします。

渡部:今日なんですけれども、実は素晴らしいゲストの方々に来ていただいております。今年、2021年、日本で一番売れた本を生み出し、売ってきたコンビのお二人です。素晴らしいゲストですね、森上さん。

森上:そうなんですよね。2021年の取次の日販のベストセラー、ビジネス書ランキングではもちろんそうなんですけども、総合ランキングでも第1位を獲得したという、書籍の担当編集者と担当営業マンが今回は大変お忙しいにもかかわらず来てくださっているということで、本当にありがとうございます。

渡部:それでは、私のほうからご紹介させていただきます。本日のゲストは、すばる舎・編集部・編集長の上江洲安成さんと、すばる舎・営業部・副部長の原口大輔さんです。上江洲さん、原口さん、本日はよろしくお願いいたします。

上江洲・原口:よろしくお願いします。

森上:よろしくお願いします。

渡部:では、さっそくなんですけれども、まずはお二人に簡単な自己紹介をお願いしたいと思います。それでは上江洲さん、よろしくお願いいたします。

上江洲:はい。リスナーの皆さん、はじめまして。すばる舎の上江洲と申します。まずは、今日このような素晴らしい機会をくださった、フォレスト出版の森上さん、渡部さん、ありがとうございます。私は現在、すばる舎というところで編集者をやっています。15年目で、28才のときに編集者として拾っていただいて、今は42歳なんですが、日々「正しいより楽しく」をモットーに本を作っております。この後、紹介する本の著者さんがおっしゃっている「本の力で日本を元気にする」という言葉にすごく賛同して、私もそういう本を作りたいと思って毎日、編集活動をしています。今日はどうぞよろしくお願いします。

渡部:はい。上江洲さん、ありがとうございました。それでは、原口さんもよろしくお願いいたします。

原口:はい。はじめまして。すばる舎・営業部の原口大輔と申します。私は出版社の営業として、新卒からずっと勤めておりまして、今までに、営業の力でベストセラーを出せたということがありまして、今でもミリオンセラーを出すということを夢に掲げて、日々頑張っております。どうぞよろしくお願いします。

渡部:よろしくお願いいたします。上江洲さん、原口さん、ありがとうございました。森上さんは、お二人とはかなり仲がいいのかなって、事前の打ち合わせですごく感じたんですけど、どのようなかたちお知り合いになったんですか?

森上:そうですね。共通の著者さんの会合だったり、横のつながりの勉強会だったりとか、そういうところでいろいろとご一緒になって、情報交換をさせていただきながら、日々勉強させていただいている中で、お世話になってます。

渡部:そうなんですね。では、本題に入っていきたいと思うんですけれども。今回は冒頭でも取り上げた通り、上江洲さんと原口さんが世に送り出した本、『人は話し方が9割』、今年、日本一売れた本なんですけれども、取次ぎ・日販が発表した2021年ベストセラー総合ランキング見事1位ということで、本当に素晴らしい偉業を成し遂げられました。改めて、本当におめでとうございます。

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 上江洲・原口:ありがとうございます。

森上:おめでとうございます!

渡部:偉業というのには訳があって、森上さんからすると、羨ましいとか悔しいとか、それと同時にやってくれたみたいなところもあるんですよね?

森上:まあ、悔しいと言うか、同業者としては、そういったものはあるにせよ、やっぱりビジネス書が総合1位って、すごいことなんですよ。原口さん、ビジネス書が総合1位って、前回だとどれぐらい前になりますかね?

原口:8年前とかですかね。「もしドラ」以来とかになるんじゃないですかね。

森上:そうですよね。どうしても一般書、実用書、そういったものがだいたい1位を獲っちゃうんですけど、今回はすごかったですよね。上江洲さんと、原口さんの生み出したベストセラーのご本は。著者さんは、永松茂久さんですね。この『人は話し方が9割』が日販の年間ベストセラー総合ランキング1位。そして、2位が『スマホ脳』、3位『推し、燃ゆ』、これは芥川賞の本ですね。4位が『星ひとみの天星術』、5位が『本当の自由を手に入れるお金の大学』ということで、ベストセラーの上位5位までの中に、ビジネス書が2つ入っていて、しかも1位がぶっちぎりで『人は話し方が9割』ということで、これは本当にビジネス書にかかわっている人間にとって、我がことのようにうれしい。しかも、知っているお二人が獲ったっていうのがまたうれしいじゃないですか。そういう意味で、渡部さん、これは本当にすごいことです。

渡部:本当にすごいですよね。

森上:そうなんですよ。原口さん、これはトーハンのほうも結構上位にランキングされていましたよね?

原口:そうですね。トーハンさんの方も総合で5位ぐらいに入らせていただいて、ビジネス書で言うと、日販さんもトーハンさんも年間ランキング1位を獲得させていただきましたね。

森上:いや、すごい。いつ頃から、「これは行けるぞ!」と思った感じですか?

原口:そうですね。上半期だと日販さんのほうでも3位とか、それぐらいだったと思うんですけど、そのときに、もしかしたら総合も取れるかもしれないというふうに思っていたんですけど、最後はアホみたいに営業努力をしまして、編集の上江洲からもケツを叩かれながら、日々馬車馬のように営業をかけて、1位を獲得できたと。

森上:なるほど(笑)。原口さんが馬で、上江洲さんが騎手みたいなもんなんだね(笑)。

原口:そうですね(笑)。

『人は話し方が9割』の企画誕生秘話

森上:すごいですね。いや、素晴らしい。お二人が、努力した結果で、本当に血のにじむ努力があったと思うんですが。それで、企画の誕生秘話的なお話をちょっと伺いたいなと思うんですが、これはどういうかたちで生まれたんですか?

上江洲:そうですね。原口がうちに転職してきて、ある日、僕のところに来て、「今度、永松茂久さんという方にお会いしてほしい」ということで、それである居酒屋に行ったんですけれども、そのときに永松さんが座っていて、僕はもう5分も経たないうちに心を掴まれたんですよ。「この方はすごく魅力的な方だな」と。僕がお会いしたときも、かなり人気の著者の方だったんですけど、おこがましいですけど、ひと言で言うと、人たらしだなと思って。それで企画をしましょうということで、原口であったり、外部編集のOCHI企画の越智秀樹さんという方がいるんですけど、その方とか、それ以外のスタッフさんと一緒に雑談ベースで、「あーでもない。こーでもない」って、いろんな企画を考えていたんですよ。で、『人は話し方が9割』に行く前に、実は何個か違う企画が走っていて、ただどうしてもそれが永松さんのほうで、「ちょっと今じゃない」みたいなかたちになって、そのときに「ここだ」っていう感じで、原口が「話し方、いかがですか?」って、食い込んできて。実はすぐには首を縦に振らなかったんですよね。でも、何度か打ち合わせを重ねていくうちに、あるとき、観念して、「わかった。もう大輔がそんなに言うならやろう」と。原口大輔って言うんですけど。それで、やることになったんですね。

森上:なるほど。

上江洲:実は原口が前職のきずな出版さんのときから、ずっと永松さんとご一緒していて、6~7年越しですかね?

原口:そうですね。僕は永松さんのことを“しげ兄”と呼んでいるんですけど、しげ兄とお会いさせてもらってから、さっき上江洲が言っていたように、すごく人の心を掴むのがうまいと言うか、引き寄せる力があって、魅力的な方だなと僕も思って。そのときに「話し方の本を書いてほしい」って言ったら、「話し方の本は、俺は書けないから無理だよ」って言われて、だめだったんですけど、言い続けてよかったなと、今は本当に思っています(笑)。

森上:なるほど。そういう意味では、ご本人は当たり前のようにやっているけども、まわりがそこの部分が普通じゃないと気づく。そこに気づかせたお二人であるということですね。

原口:もしかしたら、そうかもしれないですね。

森上:上江洲さんもそんな感じで大丈夫ですか?

上江洲:そうですね。原口自身が話し方が苦手ということで、永松さんの話し方を学びたいと言って、話し方と言うより、結果的にもっと大きいところの、コミュニケーションの本にはなっているんですけど、全般的に永松さんから学びたい、永松さんのようになりたいっていう、出発点は原口の永松さんへの憧れみたいなところがあったのかなと思っていて。

原口:そうですね(笑)。

上江洲:その理でまわ僕だったり、OCHI企画の越智さんだったり、それ以外のスタッフさんとか、そういった方がコンプレックスに思っているところとか、悩んでいるところ、そこを相談しながら、いろんなネタ出しをしていって、結果的に形になったっていうイメージですね。その僕らの悩みに応えるかたちで、永松さんが原稿にしていっていただいて、最後、仕上げていただいたという感じです。

森上:なるほどね。以前、上江洲さんから、いわゆる話し方っていうジャンルだと、どうしてもスキルに寄っちゃうけど、そこだけに寄せなかったっていうところもすごく工夫があったというふうに、ちらっとお聞きしたんですけど。

上江洲:そうですね。元々、話し方の本を研究したときに、どの本もすごく細かくスキルが書いてあったんですよ。なので、今回もベストセラーにするために、スキルを出さなきゃいけないと思って最初は臨んだんですが、永松さん自身が、自然体でできちゃう方なので、スキルというのが当たり前のことで、なかなか最初は「これは普通ですよ」みたいな(笑)。「なんでできないんですか?」みたいな感じだったので、原稿にするときにお互いに苦労したと言うか。ただ、あるとき、永松さんが雑談の中で、「やっぱり会話っていうのは、スキルよりメンタルなんですよ」っていうことをおっしゃったんですよ。それを聞いた瞬間に、「あ、それだ」っていう感じで、永松さんの話し方の魅力、コミュニケーションの魅力っていうのは、メンタルにあるんだなっていうところに、はじめて気がついて、そこからは早かったですね。永松さんも原稿がどんどんスムーズに進んで。もちろんスキルもすごい方なのですが、それをご本人はすごいと思っていなくて。でも、まわりの人から見るとすごいので、それを一緒に話し合いながら原稿に落としていったっていう感じですね。

森上:なるほど。いわゆる本の肝っていうのは、スキルよりもメンタルだといったところに、工夫があったと言うか。実際に話し方の本って、我々の世界でいくと、レッドオーシャン中のレッドオーシャン。その中での勝負だったっていうところで、そういった内容的な工夫と特徴があったんですね。

上江洲:そうですね。だから、永松さんの最大の良さを生かした本にしたという感じですね。

担当編集者&営業マンが考える、コロナ禍でも売れた理由

森上:なるほどね。この本は2019年のご本なんですよね。原口さん。

原口:そうです。2019年の9月に発売した本になりますね。

森上:それで、そこからずっといって、年末年始を超えたところで、やっぱりずっと売れていて10万部いっちゃったっていう感じですか?

原口:いや。最初は、そういうわけではなくて、しげ兄はファンがいらっしゃる方なので、発売から1か月以上経ってから、どういう売れ方をするのかが勝負かなと思っていて、そもそも一緒に作り上げていく中で、永松さんを知らない方でも手に取るような表紙にしていこうという話をしていて、あとビジネスマンじゃなくて、例えば未来屋書店さんのように全国に展開している書店さんとかで働いている、パートの方でも買えるようなものにしたいねと。そういうところで売れて、ランキングに行きたいねって話していたんです。そしたら、2019年の年末年始で、売れ方がすごくよくて、「あ、これはもうビジネスマン以外の人がちゃんと買っているな」というふうに判断して、そこからもう10万部いけると確信して、どんどん営業を広げていった感じですね。

森上:なるほどね。もうコロナ前に10万部いっちゃった感じですか?

原口:そうですね。

森上:なるほど。コロナ禍ではまたいろいろと大変だったんじゃないですか? そこからが。だって、今は90万部?

原口:今、おかげさまで90万部(収録2021年当時)です。

森上:そこから80(万部)を積み上げているわけですから。

原口:そうですね(笑)。

森上:それって、実際はどんな感じだったんですか? 広告戦略とか、いろいろとあったんですか?

原口:そうですね。新聞広告とかもちろん打っていたんですけど、大きいのが去年、コロナ禍になって、交通広告で、すごくお金がかかるJR東日本全線のドア横ポスター広告っていうのをやっていて、そのときにちょうど緊急事態宣言が重なって。

森上:うわー。

原口:で、電車に誰も乗ってないっていう……。

森上:(笑)。

原口:そんなときにめっちゃ広告を打っているっていう、最悪のスタートだったんですよ(笑)。

森上:すごいな。その時はもちろん10万部いっていて、ベストセラーにはなっていたけども……、っていう話ですね。大変だわ。

原口:もう終わったと思いましたね、正直。

森上:そうですよね

原口:おうち時間で、「外出ないで!」ってやっている中だったので、コミュニケーションを人とすることないよねっていう感じで、これはきついと(笑)。

森上:で、実際、蓋を開けてみたら、どうだったんですか?

原口:実はですね、そういうふうに思っていて、著者のしげ兄にも、「いや、これもうきついな」って言っていたんですけど、蓋を開けたら、本当に売れが落ちることはなくてですね。

森上:えー。

原口:ゴールデンウィークとかも売れたんですよ。

森上:それはすごいですね。だって、結構、お休みにされている書店さんもあった中で。

原口:そうです、そうです。ほとんどやっていなくて、ロードサイドのお店とかはやっていたんですよね。路面店と言うか。百貨店とかに入っている書店さんは、みんな休業していたんですけどね。

森上:なんで、その期間も売れたんだと思われています?

原口:僕が思うにはなんですけど、「鬼滅の刃」が去年、めちゃくちゃ流行っていて、新刊が出ればすぐに売り切れてしまうっていう感じで、やっぱりおうち時間で飽きてしまう、することがない中で、本屋さん行こうってなった人って結構いたと思うんですよ。で、その中で、「今流行っているのって、“鬼滅の刃”だよね?」って、なったと思うんですけど、おかげさまで『人は話し方が9割』もランキングに結構入っていたので、これで、もしかしたら、「鬼滅の刃」を買いに来た人も、「こんな本も売れているんだね」って、目に付くことも増えて、「いずれ買ってみようかな」と思っていただけたんじゃないかなと。そういうのがあって、売れが落ちなかったんですよね。

森上:いやー、すごいですね。だから、いわゆる「鬼滅の刃」の集客で、その近くに展開をすると……。でもそこは、やっぱり営業努力ですよね。だって、他の出版社の本だっていっぱいあった中で。そこがやっぱり御社の営業力と上江洲さんの影の……、馬と騎手じゃないですけど。引っ叩く、上江洲さんの騎手としての、それが成しえたと言うか。

上江洲・原口:(笑)。

原口:そうですね。もちろん本に力があったと思うんですけどね。運がいい本でもあるかなと思っていますね。

森上:ほー。そう言っちゃうところが、また100万部いっちゃうんだろうなー。

上江洲・原口:(笑)。

森上:そういうふうに考えているお二人だからこそ運がいい、自分たちの力じゃないっていうね。そう言っている人にはやっぱり運が、ベストセラーの神さまが舞い降りるっていうね。典型的な……。本当に見習いたいですけど。

上江洲・原口:(笑)。

森上:でも、普通に考えるとすごくないですか? コロナ禍を跨いで、プラス80を上積みしているんですよ、渡部さん。

渡部:そうですよね。すごいですよね、本当に。僕は直接、営業部とかかわりがないんですけど、森上さんが「コロナ禍で、すばる舎さんの販促がすごくいい」みたいなお話をされていませんでしたっけ?

森上:していました。

渡部:うちも見習いたいみたいなことを言っていた記憶があります。

森上:そうなんです。原口さん、業界紙にも出ていたじゃないですか?

原口:あー。ありがとうございます(笑)。

森上:インタビューでね。それも、切り抜いて、営業部にさりげなく見せたりとかしたんですよ。

原口:ありがとうございます(笑)。

森上:やっぱりその辺りの選択と集中的なお話も記事でされていたと思うんですけど、実際戦略的には、そういう意味では。

原口:そうですね。うちに限らず、他社さんもそうだったと思うんですけど、書店さんがやっていなかったので、新刊とか、すごく減らされていたと思うんですよね。ずらしたりとか。なので、弊社としては、この商品はしっかり売れているので、これに集中して広告も打っていったりとか、広げていったりしようという流れで、みんなを巻き込んでいった形ですね。

森上:あーなるほど。それは、書店さん、取次さん含めてということですか?

原口:社内の営業マンも含めて、いろいろと巻き込んでいった形ですね。

森上:なるほどね。お立場的には、今は副部長というお立場であるにせよ、社内の全員、営業マンを含めて、まとめて巻き込んでいくって、なかなか大変ですよね。

原口:そうですね。難しかったですけどね。

森上:しかも、あの頃ってコロナでやっぱりリモートとかっていうのも。

原口:そうですね。やっていましたね。

森上:そんな中で、ですもんね。

原口:そうです。そうです。

森上:その目に見えない努力があってだなと改めて思います。そんなところで、まだまだ話を伺いたいところなんですが、お時間がきてしまいました。

渡部:ということで今日は、すばる舎から、お二人のゲストに来ていただきました。今回は、日本一売れた本が、どういう舞台裏があって、90万部まで売り上げを伸ばしてきたのか。編集者の視点、営業マンの視点から語っていただきました。明日は、すばる舎さんでの企画の決め方、タイトルの決め方、そして『人は話し方が9割』の続編ですね。(2021年)12月に刊行されました、『人は聞き方が9割』についても詳しくお聞きできればと思っております。 それでは、上江洲さん、原口さん、森上さん、本日はありがとうございました。明日もよろしくお願いします。

上江洲・原口・森上:ありがとうございました。

(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)

 

 

 

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