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日本の砂漠化が進んでる!?~野菜は小さい方を選ぶといい(第4回)

こんにちは、フォレスト出版編集部の杉浦です。

前回は、『野菜は小さい方を選びなさい』より、「農薬を止めれば作物は病気にならない」「葉っぱに水が病気の原因」と言ったお話を紹介しました。

今回は、

「日本の砂漠化が進んでいる」
「自然と微生物が作物を育てる」

というお話です。

農薬や化学肥料の使用によって、密かに日本の砂漠化が進行しているのだそう……。どう作られたものを食べるかを私たちが選ぶことで、砂漠化を食い止める小さな一歩になるかもしれません。

今回も、ポイントの箇所は太字にしています。それでは、詳しく見ていきましょう。

微生物が死滅し、日本は「砂漠化」している

 植物の成長には微生物が欠かせません。植物に限らず、微生物の存在は、すべての生命体にとって欠かせない存在であることは間違いありません。言ってみれば、われわれ人間も微生物、ミトコンドリアから始まっていますので、微生物が欠かせないというよりも、微生物がすべての生命の根源なわけです。
 今から40億年前のこと。地球上にまだ生命体が存在しないころ、炭酸ガスで覆われていた地球に最初に生まれたのは光合成細菌という微生物でした。光合成細菌は、シアノバクテリアとして炭酸ガス等の毒ガスを浄化して酸素を生み出しました。やがて酸素を使うミトコンドリアが生まれ、シアノバクテリアはミトコンドリアを取り込み多細胞体になっていきます。それが生命誕生の瞬間です。
 最初に生まれた植物は藻でした。藻や苔は地球を冷やして地球に雨を降らせ、苔が水分を溜めこみ、植物が生えてきます。植物は根を生やし、草を地球上に落とし、雨によって砕かれた砂のなかに、有機物として混ざっていきます。有機物は微生物たちが分解をし、植物が栄養として利用できる腐植という姿になって、砂に混ざって土ができてきます。その土のなかには、有機物を分解し、植物が成長するために必要な必須元素を生み出す微生物だけでなく、菌根菌や根粒菌(こんりゅうきん)等の共生型の微生物が生まれます。菌根菌や根粒菌は植物が成長するのに必要な栄養、つまり元素を植物に橋渡しをする仕事を受け持っています。
 やがて、そうして生まれた植物を食べる動物が生まれます。さらには動物を食べる動物が生まれ、そのうち人間が生まれてきました。
 つまり、われわれ人間は、微生物で始まり、微生物によって生かされているということです。もし、自分たちがこの地球上で永遠に暮らしていきたいのならば、この微生物を大切にしなくてはなりません

 もう少し詳しく書きます。農業という仕事は、土のなかの窒素や炭素を使って植物を作るのが仕事です。この仕事をこなすためには、この窒素と炭素、もちろんその他にも水やミネラルもですが、そうした元素が地球上を循環している必要があります。
 作られた作物はタンパク質や炭水化物、水分、ミネラルとなっていますが、それが人によって食され、最終的には糞等となって土壌に戻されていきます。この戻されたタンパク質や炭水化物は、土壌中で、もう一度窒素や炭素に戻ってもらう必要があります。その役割を担っているのが、人間や動物のなかの腸内細菌であり、空気中の微生物であり、土壌中の虫や微生物たちです。だから、この土壌微生物を減らすという行為は、われわれが食する食べものを生み出す力を奪ってしまうことに他なりません。つまり循環を途切れさせてしまうのです。地球上の窒素と炭素の循環を行う力を持っている微生物を決して死滅させてはいけないのです。
 微生物を減らす最大の原因は、何度も書いていますが、農薬や化学肥料です。特に除草剤です。こうした土壌動物が生きていくために必要な有機物を奪う行為を繰り返していくと、畑は砂漠化していきます。有機物がなく、それが分解されないがためには、土が出来上がらないからです。土にならなければ、畑は砂に、つまり砂漠化するわけです。
 土は私たち先祖の屍(しかばね)です。私たちはその屍の恩恵を受けながら生きています。そして自らの排せつ物や自らの身体も、もう一度そこに戻していかなくてはなりません。
 そうしなければ、やがて土というものがなくなってしまうからです。土がなくなれば、地球誕生のころのように、生物が住めない世界になってしまいます。
 人間は知恵を働かせ、地球上に存在する空気や岩石等を使って化学肥料を生み出し、微生物の代わりに、作物に栄養を与え続けています。しかし、化学肥料を与え続けると土壌からも微生物は減り続けます。化学肥料は微生物にとっては余計なものです。彼らは有機物を分解し、必須元素を生み出すことで生きているのに、最初から必須元素を与えてしまっては、微生物の仕事がなくなってしまいます。仕事のないところからは生物は消えていくのが宿命です。
 雑草が困るのは栽培者の立場で考えればもちろんわかります。しかし、雑草は理由があって生えてきます。雑草が生えることで土のなかに有機物が増え、根っこによって土が割られ、空気が入り込み、あるいは適切な水分だけが保持されます。昼間は太陽の明かりが入り込んで微生物を動かし、夜になると月明かりが差し込み、種が芽吹いてきます。雑草は役割が終われば必ず生えてこなくなります。その役割を終える前にひたすら刈り続けるから、いつまでたっても雑草は生えてくるのです。
 土壌中の微生物を殺すこと。つまり農薬や除草剤を撒く、草を抜き続ける、化学肥料を撒くことは、微生物を殺すことに繫がります。微生物が減ってしまった農地では作物は育ちません。もともと、作物が育つための栄養は土のなかで微生物たちが作り出しています。その力を利用して作物を作ることの方が、よほど効率的だと僕は思うのです。

「自然と微生物」が野菜を育てる

 作物を育てているもの。それは土壌中の土壌生動物と微生物であると書きました。
 その微生物が生きていくためには有機物が必要です。有機物があると、土は軟らかくなっていきます。軟らかい土には空気や水も入り込み、生命が息づく環境が出来上がっていきます。
 微生物が作り上げた必須元素により、植物は成長していきますが、もちろんこれだけで植物が成長できているわけではありません。植物にもうひとつ必要なのが「光合成」です。そのことをもう少し詳しく書いておきましょう。
 植物は種が蒔かれると、種が持つ栄養分で根と芽を出します。まず根を伸ばし、次に芽を出すのですが、その時は土の栄養分は使っていません。極端な例として、種を湿った脱脂綿に包むだけでも発芽します。根や芽がある程度育つまでは、土の力を借りません。なぜなら、土のなかの栄養分を使うための根っこが伸びていないので使えないのです。
 では、どうやって成長していくのかというと、こういう仕組みです。まず種は根を伸ばし、土のなかの栄養分や水分を探そうとします。それまでは種自体が水分を吸い、種のなかの栄養分で頑張って成長します。芽も同じです。ですので、種は深く埋めすぎると、表に出るまでに力を使い果たして出てこられなくなります。深すぎると光を感じないのも理由です。
 さて、発芽して双葉なりが表に出ると、小さな葉を使って光合成を始めます。最初は種のなかにあった双葉の表面を使って光合成を行います。光合成に必要なのが、光と、水と、二酸化炭素です。それらは自然界が与えてくれます。場所さえ間違えなければ、人の手等一切借りないで、植物はそれらの自然の恵みを使って成長します。
 光合成は葉緑体が行います。葉が緑なのはこのためです。葉緑体は光合成を行うと、自ら炭水化物を生み出します。糖やアミノ酸やデンプンです。この炭水化物のままでは成長できませんので、この炭水化物を植物の茎にある師管を使って根っこに送り込みます。炭水化物は根っこに保管されます。
 次に、根っこがある程度伸びてくると、土壌中にいた微生物が根っこに寄り添いはじめます。これを一般的に菌根菌と呼びます。菌根菌は植物の根っこに棲んで土壌中にある窒素やミネラルを植物に与えるということを行います。これは驚きの仕事です。この菌根菌は1種類の植物にしか生息しないものと、色んな植物に生息する菌根菌とがいます。菌根菌は、植物の髭根(ひげね)の先で触手を伸ばし、見つけた栄養素、つまり元素を植物に橋渡しし、植物は光合成で生み出された炭水化物を菌根菌に与えて生き
ていきます。完全なる共生関係にあるのです。
 植物は菌根菌によって与えられた窒素、この時には硝酸態窒素という形になっていますが、その窒素と、光合成で生み出した炭水化物を使ってタンパク質を形成していきます。このタンパク質が細胞となり葉や茎を作り出すのです。
 これでわかるように、植物は人間の手等一切借りないでも成長していく力を持っています。借りているのは微生物の力です。自然の太陽や水や空気も使います。そしてもうひとつ、虫たちの力も借りるのです。この循環の仕組みを利用すれば、作物を無肥料で育てることができます。そのために最も大切なことは、土のなかの微生物を殺さないこと、増やさないまでも、現状をどのようにして維持させるかということを考えることです。

植物が成長する仕組み

※本稿は『野菜は小さい方を選びなさい』(岡本よりたか 著)より抜粋、一部編集を加えたものです

(Photo by Dan Gold on Unsplash)

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