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「希望の街からこんにちは」ビフォーコロナよりもっといい未来へ

こんにちは、フォレスト出版編集部の杉浦です。

緊急事態宣言が全国で解除となりましたが、海の向こうでは、まだまだロックダウン中の地域が存在します。ニューヨークも代表的なひとつでしょう。YouTubeをはじめとしたSNSでニューヨークの現在の姿がたくさん紹介されていますが、かつての賑わいは影をひそめ、ゴーストタウンと化しています。私は年初、今年はニューヨークに行ってみたいなと思っていました。というのも、昨年、ニューヨークを舞台にしたエッセイを担当したからです。

著者の香咲弥須子(かさきやすこ)さんは、ニューヨーク在住30年あまり。渡米前は、日本で、小説家、翻訳家、写真家として活躍され、ニューヨークに渡った後も、文筆業にいそしまれつつ、カウンセラーとして心の領域にも足を踏み込みます。今はカウンセラーとしての顔がクローズアップされることが多く、心の本をたくさん書かれている香咲さんですが、私が初めて読んだ香咲さんの本は、渡米前に日本で発表されていた小説でした。バイクをテーマにした青春小説を多数書かれていて、軽やかで瑞々しい筆致で、読んでいてとても気持ちがいいな、などと思っていたら、後日、香咲さんが、「書き溜めてきたエッセイがあるの」とおっしゃったのです。

読ませていただいた原稿は、ニューヨークの粋な人間模様やエピソードが、成熟した大人の女性の目を通して描かれていました。ニューヨークでの生活のなかで印象に残った出来事が、ニューヨークらしい味付けでお洒落に表現されながらも、奥行きがある世界観。日本酒でたとえるなら、米本来の芳醇な香りと味わいをより深く感じられるにごり酒でしょうか。(ニューヨークだと言っているのに、ワインじゃなくてすいません)

早く各地が以前の活気ある姿に戻ることを願って、数回にわたり、本書に収録されたエッセイを数編ご紹介します。一回目の今日は、傑作児童文学を残したニューヨークの作家、E.B. ホワイトの言葉から始まるイントロダクションです。


希望の町からこんにちは

「三つのニューヨークがある」と書いたのは、いくつも傑作児童文学を残したニューヨークの作家、E.B. ホワイトです。
 ニューヨークは三種類の人でできているというのです。 

 一つ目はニューヨークで生まれ育った人。
 二つ目はニューヨークの外に住んでニューヨークにお金を稼ぎに通勤している人。
 三つ目はニューヨークに夢を抱いて移り住んで来た人。
 そしてニューヨークのエネルギーは、三つ目の人たちによって生み出されている。

 たぶん、ニューヨークに限ったことではないのでしょう。世界中のどこでも、どの職場でも、どの業界でも、さらにはどの家族でも、それまでの習慣や常識を超えて、夢を抱いて行動する人がそのグループに新しい息吹を招き入れ、動かしていくものでしょう。
 今までの場所に希望がもたらされる時にこそ、そこに新しい時代、人生の次のステージ、再生、といったものが訪れるのではないでしょうか。
 それまでに出来上がっているパターンに染まっていきそうになると、「だってそういうものじゃない?」というような言葉が出てきます。「今までだってそうだったでしょう?」「人生とはそういうもの。仕方がない」などと続くかもしれません。
 その時に、
「でも、できるのじゃない?」
「変えられるのでは?」
 と考える人がいると、確固として不動なものと思い込んでいたものが新しいものに移り変わっていくのを、皆で目撃することができるようです。
 または、自分はこうしたい!という強い思いや、とにかく人生を変えたい!と腹の底からのエネルギーを動かして移ってくる人がいると、周りが巻き込まれて一緒に変わっていくようです。
 ニューヨークは、そのような人が世界で一番大勢集まっているところかもしれません。

 希望が結集しているのです。 

 毎日、街のどこかで、数々の希望が出会い、融合し、分離し、細胞分裂を繰り返しながらさらに大きな希望が生まれているような。
 ニューヨークはエネルギーの音がする、とよく言われますが、それは希望が成長していくエキサイティングなプロセスの音なのではないかと思うことがあります。
 わたしはニューヨークで、希望は、壊れながら進化していくものだということを知りました。
 1988年から暮らしているこの地で、希望とは、もっと大きな希望を持つためにあるものだと教わりました。 

 E.B. ホワイトが書いたニューヨークは、1949年のニューヨーク市のことです。もしかしたら、マンハッタン島に限ってのことだったかもしれません。
 でも今、ニューヨークは広がっています。ニューヨークの郊外やお隣の州と市内を行き来している大勢の人たちが、希望に満ちたニューヨーク・マインドを持っています。
 その広がりは、とどまるところを知らないようです。希望は世界中を駆け巡っているように感じます。日本もまた、そのリーダー・シップを担う仲間に入っているのを否定する人はいないでしょう。
 その発祥地、唯一の発祥地とまでは言わないまでも、確実に発祥の地の一つであるニューヨークから、ニューヨーク・マインドが弾ける音をお届けできたら。
 わたしたちが今、どこに向かって羽ばたこうとしているのか、ご一緒にビジョンを見られたら幸いです。


この本の舞台は、言うまでもなくコロナが発生する前の「ビフォーコロナ」のニューヨークです。コロナが収束して、まったく以前と同じに戻るかと言ったら、そうはならないはず。少なくとも、以前の世界で実は無理があったこと、なぜか強要されてたことなどが見直され、以前より良くなった世界に「戻る」のではないでしょうか。これから、ニューヨークをはじめ、私たちはそれぞれの場所で、どんな希望の音を奏でていくのでしょうか。

(Photo by Jonathan Riley on Unsplash)

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