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#320【ゲスト/海外版権】「日本のコンテンツを海外に売り込む」ビジネスの現場

このnoteは2022年2月1日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。


海外に売り込むためにやっていること

今井:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティーを務める今井佐和です。本日は編集部の森上さんとともにお伝えしていきます。森上さん、どうぞよろしくお願いいたします。
 
森上:よろしくお願いします。
 
今井:本日も素敵なスペシャルゲストをお招きしているんですよね。
 
森上:そうなんですよね。海外の出版社さんとの橋渡しをしていただけるという、エージェントさんです。うちでは主に翻訳権の輸出とか輸入とかでお世話になっていて、日本で最大手のエージェントさんで、今日ゲストに来ていただいた方は、その中でも、台湾とか中国とか韓国とか、その辺りのアジア圏への輸出でお世話になっている責任者の方でいらっしゃいます。国籍が中華圏の方なんですけども、日本語がすごく堪能で、輸出の際の商談で通訳もお願いしておりまして、本当にお世話になっている方です。
 
今井:ありがとうございます。ということで、本日のゲストは、株式会社タトル・モリエイジェンシー、営業部、国外ライセンス部門、部長代理の付誠睿(ふ・せいえい)さんです。付さん、本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 
付:よろしくお願いします。
 
今井:すごくお美しい方なんですけれども。さっそくですが、付さんから簡単な自己紹介をお願いできますでしょうか?
 
付:ありがとうございます。先ほど紹介していただきましたが、私は中国出身で、今はタトル・モリエイジェンシーに勤めています。弊社では、版権の輸入と輸出ビジネスを両方やっていまして、私が所属している部署は、主に日本の作品を海外に、特に東アジアに版権を輸出しています。よろしくお願いします。
 
今井:よろしくお願いいたします。本当に日本語が堪能でいらっしゃいますね。
 
付:そんなことないです(笑)。
 
今井:そんな付さんなんですけれども、フォレスト出版はいつ頃から具体的にどのようなかたちでお世話になっているのでしょうか?
 
森上:そうですね。じゃあ、これは私からお話します。海外版権業務って2つのパターンがありまして、1つは日本の書籍作品の翻訳出版権を売るパターンと、もう1つは海外の書籍の翻訳出版権を買うパターン、この2つの種類があるんですよね。で、前者の売るパターンの輸出先っていうのが中国とか台湾とか韓国で、主に東アジア圏になるんですけれども、そこで付さんには弊社の出版物に対して、アジア圏に翻訳出版権を売るというかたちでお世話になっています。買うパターンでも、タトルさんで、また別の担当者の方がいらっしゃって、そこでもお世話になっていて、本当にいろいろとお世話になっている会社さんであり、担当者さんでいらっしゃいます。
 
今井:ありがとうございます。
 
付:ありがとうございます。
 
今井:そうすると、フォレスト出版の本を特にアジア圏に売り出してくださっているのが、付さんのところということなんですね。
 
森上:その通りですね。はい。
 
今井:ちなみに、あまり版権を買うとか売るとか、イメージがつきにくいなあって思うんですけれども、具体的にはどのような進め方をされるんですか?
 
森上:そうですね。これもじゃあ、私から。2020年、2021年はコロナ禍でちょっとダメだったんですけど、コロナ前は毎年中国で8月に北京ブックフェアがあって、台湾で2月に台北ブックフェアがあって、韓国で5月に……、付さん、5月でしたよね? ソウルブックエアは。
 
付:5月、6月ぐらいですね。
 
森上:そうですよね。そこで大きいブックフェアがありまして、それぞれのブックフェアに出品する作品をうちは30点ほど、最新刊も含めてリスト化して、その資料を付さんにお渡しして、付さんにブックフェア会場で商談ミーティングをするために、アポイントを取っていただいているんですよ。その辺りのスケジュールとか、オファーとかをしていただいて、当日の商談では通訳として入っていただいて、商談を進めるという感じなんですよね。付さん、こんな感じで大丈夫ですか?
 
付:そうですね。やっぱり大きなイベントで、ブックフェアがあるんですけど、そのブックフェア以外でも、エージェンシー協会っていうのがあって、出版業界の方でも知っているようで、あんまり知らないっていう方も多いと思いますけど、言葉がわかるから、他の国の習慣がわかるから、印税管理ができるから、エージェンシーにお願いしますっていうイメージが強いと思います。ただ、実際に私たちが紹介をしているときには、作品はもちろんなんですけど、著者さんのこだわりだったりとか、権利者のこだわりだったりとか、出版社の担当者はどういう人なのかとか、責任者がどういう方なのか。重要な案件については、会社の文化はどうか、最近安定しているかどうか、販売能力があるかどうか、みたいな内容を含めて全部を考えて、適切なところに紹介をするといったことをやっております。
 
森上:いやー、そうなんですね。我々は商談上の場面しか見ていないですけど、それ以外でいろいろと裏で調整をしていただいているんですね。
 
付:そうなんです。例えば、著者様はそれぞれ違うじゃないですか。忙しいから、あまり迷惑をかけられないっていう方もいらっしゃいますし、そうすると出版社が思いっきりイベントができる、宣伝できる会社だと、あまり相性が合わなかったりすることもありますし、何でも協力するからどんどん言ってくださいという著者様もいらっしゃるんですけど、出版社が伝統的だったりすると、それも合わなかったりとか、状況を見て、作品ごとに1個1個、進行していくのが、とても大切なんですよ。
 
森上:なるほど。そうなんですね。佐和さん、実際の商談の場では付さんに中国語でペラペラとお話をしていただいているんですよ。僕なんかは何をお話されているかわからないんですけど。僕がわかってないところで、いろいろとそういったお話をしていただいているんだなってことがわかりました。それが商談の場所だけではないっていうことなんですね?
 
付:じゃないんですね。私は主に東アジア担当なんですけど、特に変化が激しいじゃないですか。日々変わっているんですよ。最近、新メディアも流行っていますし、販売方法もいろいろと変わってくるんですね。競争状況もすごく激しくて、その中で会社もぐるぐる変わるんですよ。例えば、実績で見ると、すごくベストセラーをたくさん出しているっていう、輝かしい実績があるんだけど、担当者が変わって、トップも変わったからあんまり信用できないよっていう情報も随時情報交換をして、新しい情報でいろんなことを進めなきゃいけないんですよ。
 
森上:なるほどね。
 
今井:なんだか結婚相談所の仲人さんみたいな。
 
付:そうそう。まさにそれですよ。
 
今井:男性の要望だったり性格だったり、女性側の要望だったり性格だったり、両方ともマッチして、成立するみたいな。
 
付:そうなんですよ。
 
森上:なるほど。そうか。じゃあ、毎回結婚のオファーをしているわけだ、こっちは。
 
付:そうなんです。
 
森上:そういうことなんですね(笑)。
 
付:でも、正直に申し上げますと私たちの部署だけでも1700件ぐらいの成約をしているんですよ。だから、作品一個一個を全部丁寧に掘り出してやるっていうのはなかなか難しいところがありまして、どうしても重要な作品に対しては、特に先生方が期待している作品に対しては、こちらも答えられるように情報収集して、一番適切なところを紹介したいと思っているんですよね。
 
森上:なるほどね。成約したものが1700件ですから、扱っているものはその10倍、20倍ですよね?
 
付:はい。非常に大変な仕事です。
 
森上:大変ですよね。内容を瞬時で判断してとか、そういうパターンもあるわけですよね?
 
付:そうです。ほとんど反射みたいな感じで対応はしています。
 
森上:台北と、北京とかで、特に付さんにはお世話になっているんですけど、日本語で相手に対して僕が何回か同じ本をアピールするでしょ。そうすると、もう3回目、4回目ぐらいからは、僕が何も説明しないでも、付さんがバーって説明してくれるの。
 
付:すみません(笑)。
 
森上:いやいや、ホントすごいのよ。
 
今井:宣伝してくださって。
 
森上:そう。もうこっちはラクしちゃってる。もう安心しきっています。
 
付:信頼してくださって、ありがとうございます。

国内最大手エージェント「タトル・モリエイジェンシー」の仕事

森上:タトルさんって、日本の出版社だとどのくらいの数を扱っているんですか?
 
付:データだと800ぐらいあるかもしれないですが、うちの部署が主に付き合っているところはたぶん200社ぐらいじゃないかなと思います。
 
森上:なるほどね。ジャンルも幅広いですか?
 
付:あらゆるジャンルはやっていますね。
 
森上:大変ですね。それこそ小説とか?
 
付:文芸だったりとか、ビジネス書だったりとか、実用書ももちろんなんですけど、児童書とか。あと一番困っているのは専門書なんですよ。私が外国人なので、専門用語がそもそもあんまりよくわからない部分があって。
 
今井:専門書は、日本人が日本語で読んでもよくわからない本ですからね。
 
付:なかなか大変です。
 
森上:それは大変だ。医学書とかですか?
 
付:医学書だったら、中国人なので、漢字で書いているので、だいたい意味がわかったりすることがあるんですけど、すごく困っているのがソフトウェア開発の作品。
 
今井:カタカナがいっぱい出てくる……。
 
付:そう。私は、中国では中国文化を卒業したので、そもそも文系なんですよ。理科系があまりよくわからなくて、ソフトウェアの開発だと、毎年更新したりするじゃないですか。そうすると、もう専門用語が本当にわからないんですよ。
 
森上:そうだろうな。これ、日本人だってわからないもんね。
 
今井:カタカナの羅列で、何が何やらみたいな。
 
付:すごくおもしろいのが、特に韓国はそういう系の作品を買ってくださっているところが多いんですけど、紹介しているときに来る人も専門家なんですよ。図を見せてあげて、カタカナを読めば、なんとなく韓国語もその読み方らしくて、幸い進行できました。
 
森上:なるほど。見えないご苦労がいろいろ出てくるな(笑)。そうなんだ。タトルさんが扱っているライセンスで、代表的な作品、リスナーの皆さんが知っているような本ってどんなものがありますか?
 
付:弊社も70年以上の歴史があって、扱っている作品がものすごく多いんですよ。例えば、『ダ・ヴィンチ・コード』(KADOKAWA)だったりとか、直近のことで言えば、『三体』(ハヤカワ文庫SF)は、よく売れている作品だと思います。あと、スタジオジブリの作品。中国の出版業界は何十年前からどうしてもやりたいと思っている夢があるんですね。でも、なかなか権利書が厳しくて、実現ができなくて、やっと2020年の年末に2冊目を刊行することができて。
 
森上:すごい! へえー。
 
付:それもさっき話をしていたとおり、本当にお見合いみたいな感じで、どれがいいのかとか、すべて細かいところを見て、やっと一緒に選んだんですね。幸い、コロナ禍でも1年間で55万部刷ったんですよ。
 
森上:55万部! すごい!
 
付:6刷まで増刷をして、権利者側に答えられる実績だと思うんです。
 
森上:いやー、すばらしいですね。今、ふっと思い出したんですけど、僕と付さんが絡んでいるもので言うと、本田健さんがアメリカで英語で出した本を、タトルさんを経由して日本語版をうちで出すっていう、『一瞬で人生を変える お金の秘密 happy money』(フォレスト出版)っていう本をやっていただいて。
 
付:ありますね。ありがとうございます。
 
森上:ありがとうございました。そういう逆輸入バージョンっていうのもあるんですか? 日本人が英語で出すっていう。あんまりないですか?
 
付:少ないですね。でも、あることはあります。
 
森上:そうなんですね。うちで言うと、そういう感じのものだったり、本当にいろいろなことをやっていただいているって感じですね。橋渡しを。結婚のマッチングを。
 
付:そうですね。書籍だけではなくて、映像化とか商品化とかもやっています。
 
森上:そうですよね。あとタトルさんって言うと、やっぱりムーミンのライセンスですよね。
 
付:そうです。弊社です。
 
森上:佐和ちゃん、ムーミンってすごく昔からあるじゃん。あれ、ずっとタトルさんがやっているの。
 
今井:そうなんですか!? 小さい頃からアニメでお世話になって、カラオケでもよく歌を歌っていた身近な。
 
森上:(笑)。今、zoomで収録をしているんですけど、ムーミンのぬいぐるみだ!
 
今井:かわいい。ぬいぐるみが出てきました、今。
 
付:はい(笑)。
 
森上:ムーミンの出版物以外のグッズとか、そういったライセンスも扱っている感じなんですか? 総合的に。
 
付:そうですね。こういう商品化もやっていますし、あと映像とか音楽権とか、すべての著作権に関してはうちがやっています。
 
森上:そういうことなんですね。だから我々が目にするムーミンはすべて、タトルさんが持ってきてくださった感じなんですね。
 
付:今はちょっと関連会社で、独立はしているんですけど。
 
森上:そうなんですね。ムーミンはそれこそ何年前ぐらいからですか? もう40~50年前?
 
付:私が来る前ですね(笑)。
 
森上:そうだ、そうだ(笑)。そうですね(笑)。あと、『はらぺこあおむし』っていう絵本も! 偕成社さんの。
 
付:それも古い作品ですね。
 
今井:ハーゲンダッツのおまけで、『はらぺこあおむし』のおまけがありまして、ちょうどおまけ目当てにハーゲンダッツを買ったばかりでした(笑)。
 
森上:そうなんですね(笑)。
 
今井:『はらぺこあおむし』も、そうなんですね!
 
森上:そうなんです、そうなんです。ちょっとお時間がそろそろ、かな?
 
今井:そうですね。いろいろと貴重なお話をお聞きできて、勉強になりました。タトル・モリエイジェンシーさんのリンクをこちらのチャプターに貼っておきますので、ぜひVoicyのリスナーの皆さんもチェックしてみていただけたらと思います。

ということで、まだお話をいろいろとおうかがいしたいところなんですけれども、お時間が来てしまいましたので、また明日お話をさらに掘り下げておうかがいしていきたいと思います。明日は付さんがタトルさんに入られた経緯ですとか、これからの中国や台湾などのアジア地域の出版がどうなっていくのかなど、気になる話題をどんどんお聞きしていきたいと思います。本日は付さん、森上さん、どうもありがとうございました。
 
付:ありがとうございました。
 
森上:ありがとうございました。
 
(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)


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